ももいろは すでに
室内に 溶け
腐れた二、三枚のひだが
私の手にはりついて ちぎれる
けれど、その がくは
最後まで花のかたちを 保とうとしている
おそらくは ....
地面すれすれまで押し潰されるバネ
チャンピオンのボディーブローをまともに受けて膝を曲げた挑戦者
獲物を見上げ
後ろ足に全体重をのせる猫
ベルリンの壁に隔てられた互いへの思い
....
薄暗き桃色の港は
始まりやらぬ無知なる港
今日に微笑む幼女のように
朝に涼しい風を聴く
天より柔らかく声が溢れ
テラスにて
紅茶の葉擦れに触覚する
なによりも繊細に
なによりもおとなし ....
こじらせて人生が終わった
夕暮れの空を見上げると
今日はお月さまがいない
と思ったら
真上やや後方から呼ばれた
「ココニイルヨ―」
ふりあおぐと三日月
こないだ見たときは
真っ黒な空の真ん中で
薄笑いの口みたい ....
雨の中カラスが世間話をしていた
黒い仲間は
雨にむかって顔をあげてとんでいる
そうだ
カラスは雨をこわがらない
どうしてわたしたちは
雨にうたれるとうつむくのだろう
どうして
....
あれも喰おう これも
と皿に盛り上げた品々
同じ料金ならば
というケチな根性
ではないのだけれど
食い始めて
ちらっと目に入る隣のテーブル
皿にはサイコロステーキが載っていた
....
俯き歩く僕の頬に
一筋のひかりが触れて
見上げれば雲間から
陽射しが溢れだす
そんな朝
本日は晴天なり
やがて雲を蹴散らし
大空いっぱいに
青を広げた空には
僕らの陰鬱な ....
スタートの合図も早々にライバルと逆方向に走り出した
あの黒い競走馬は今も人知れずどこかを走ってるらしい
騎手を乗せることもなく
誰かに期待されるでもなく
競馬場にに行くチャンスがあっ ....
砂漠
軽はずみで旅に出るなんて そんな僕を君は笑っただろ?
夢という鎧で武装して 年老いて時代遅れの心を隠した
弱音は外に出ないように 奴等はすぐに嗅ぎ付けてくるぞ
強気な言葉は他でもない ....
婚期の逃げ足に追いつけない
素足で地球を踏む
年賀状をもらったら
ほめことばにくるんだ
苦言が書かれていた
つまり
頑張りすぎる貴女
見ててしんどい
そういうことね
それで
新年の抱負ができた
別に頑張ってないから
....
真っ白いノートに
青いインクでスラッと書きたい
なぐさめかもしれない
ラブレターかもしれない
高らかな決意かもしれない
それとも
別れのコトバ?
ノートの表紙は
いろんな色で彩って ....
十六で嫁入りした祖母は
まだ娘だったから
近所の子供達と鞠を突いて遊んでいた
すると 嫁入りした女はもう
そんな遊びをしてはいけないと
誰かの叱る声が聴こえて来たという
春の夜 ....
時間はレンガとなり積み上げられてゆく
今夜はロボットたちと宴会しよう
私の手はロボットより冷たいから
本棚から現代詩を抜き取り
そこにレンガを入れる
ロボットたちにみせてあげる
ロ ....
腰が大きく曲がった
近所のおばあちゃんが通るたび
あの中には何が入っているの?
と、母に質問して
そんなこと聞いてはいけません
と、言われた
大人はいつだって
ほしい答えをくれやし ....
花柚子を貰った
実家のお向かいの家で
段ボール箱3箱も採れた内
実家でいただき、
そこから、
わたしも鍋いっぱい分けて貰った
柚子は好き
柚子胡椒も好き
柚 ....
石っころよ
名を持つ花たちよ
シャンデリアから60Wへそしていま
(メタファーたちの淋しさ)
カメラと書かずに写真機と書いて
あるいは歓迎される、そのこと/ものの意味
誰が選べたのか立 ....
それはまぎれもなく、悪夢であった。
置時計は3時を指していた。
接吻で女は孕んだ。接吻の相手は鏡に映った自
分自身だというのに。
本棚の中で一番高価な辞書で「妊娠」を調べる。
....
明けない夜に閉じ込められている
噛みきった舌が嘘をつく
●ring
青い花が好きだった赤い少女が白い文法の群生する野原を駆けていく夢を見たんだ、と、洩らした傍らの友人は墨のように真っ黒でなぜか直視できない、明け方の浜辺、打ちあげられた魚たちが至るとこ ....
樫の実ひろって、晒して食べた。
樫の実ドングリ、渋くて苦い
樫の実ドングリ、渋くて苦い
森の獣しか食べられない。
けれども、食べたい
食べなきゃ飢える
晒して晒して白くして
....
一つの詩が書かれる為に
ただ、そのためだけにこの世界はあった
病んだ男ーーーパスカルが
よろめいて食卓にもたれかかりながら
この宇宙を思考する時、その時だけ
....
西陽射す放課後の第二音楽室
古びたオルガンが
窓際に押しやられ
やがて来る
粗大ゴミの日を待つ
かつてはだれかしら触れていた鍵盤にも
今ではホコリがかぶり
ただポツンと置かれた佇 ....
波のゆくえが
気がかりならば
波の言葉に
添いましょう
正しさに
包まれようもないけれど
同じだけ
誤りようもないならば
それは
素敵な所作ですね
波の ....
しゃがみこみ 君は土に触れる
口にできなかった思いが
冷えて固まっている
ほこりを舞いあげながら
潮まじりの風が頬をたたく
道であったはずの地面が続いている
枯れたつる草をはぎとり ....
正座した太ももに
重たい石を置かれることと
電気を流されてビリビリすることを
一緒に味わった上
ひものようなもので
首を絞められて
時空を超えることを
五反田のSMクラブ「ブラックホール ....
逃げた婚期が加速している
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