明けない夜に閉じ込められている
噛みきった舌が嘘をつく
●ring
青い花が好きだった赤い少女が白い文法の群生する野原を駆けていく夢を見たんだ、と、洩らした傍らの友人は墨のように真っ黒でなぜか直視できない、明け方の浜辺、打ちあげられた魚たちが至るとこ ....
樫の実ひろって、晒して食べた。
樫の実ドングリ、渋くて苦い
樫の実ドングリ、渋くて苦い
森の獣しか食べられない。
けれども、食べたい
食べなきゃ飢える
晒して晒して白くして
....
一つの詩が書かれる為に
ただ、そのためだけにこの世界はあった
病んだ男ーーーパスカルが
よろめいて食卓にもたれかかりながら
この宇宙を思考する時、その時だけ
....
西陽射す放課後の第二音楽室
古びたオルガンが
窓際に押しやられ
やがて来る
粗大ゴミの日を待つ
かつてはだれかしら触れていた鍵盤にも
今ではホコリがかぶり
ただポツンと置かれた佇 ....
波のゆくえが
気がかりならば
波の言葉に
添いましょう
正しさに
包まれようもないけれど
同じだけ
誤りようもないならば
それは
素敵な所作ですね
波の ....
しゃがみこみ 君は土に触れる
口にできなかった思いが
冷えて固まっている
ほこりを舞いあげながら
潮まじりの風が頬をたたく
道であったはずの地面が続いている
枯れたつる草をはぎとり ....
正座した太ももに
重たい石を置かれることと
電気を流されてビリビリすることを
一緒に味わった上
ひものようなもので
首を絞められて
時空を超えることを
五反田のSMクラブ「ブラックホール ....
逃げた婚期が加速している
引き出しの奥に置かれた、消しゴムは
単なるゴムの塊です
空地の{ルビ叢=くさ}に埋もれた、車は
壊れた鉄の死骸です
消しゴムは白紙の文字を消しゆく{ルビ瞬間=とき}
車は道路を走る瞬 ....
いいたいことは
大体決まっているんだ
真昼間のフクロウが
寝言を言っていた
ジャングルジムのうえ
タバコを吹かす少年のなまえはない
あるのは
ほしぞらと月だけ
でもちっとも ....
飛行機雲の
幾筋か
集まるところ
空の奥
見上げると
吸い込まれそうな
光る青
流れる星の
一瞬間
消え入るところ
空の闇
立ちあがると
包まれるような ....
おおゆきが降った夜
雲の切れ間で
三日月につかまって
空中ブランコしてたのは
木の葉の舞う頃
行方不明になった黒ネコ
最初は新聞の折り込みチラシ
猫のアップの写真の下に
「飼い猫を ....
露草な心のまま こぶしを天に突き上げ
リズムを刻むたび 霧が 晴れてゆく
遥かな思い出は 縁側の飛行機模型
竹ひごをしならせて 夢は青空
若くて死ぬことも
老いて生きることも ....
今日は寄生虫館で
目的もなく死んだ思いで
落ちていく夕日も見ずに過ぎた 音楽を
肝臓として機能させずに 見つめていた
昔 聴いたことのある
自転車を見ていた時の音楽 オーパーツの雑誌の中 ....
言葉を編み
視線を編む
少しは暖かくなってくれたかな
ふぐちょうちんもシュウキンペも
銃殺刑になるぐらいなら
いっちょ、戦争でもしかけてやっか
って思ってること
いい加減バレバレなんだよ
でもよ、やめといた方がいいぜ
日本人の本性は意外と
....
ページをくる毎に
指先に宿る期待
ひとつ
またひとつと
言葉から漏れくる息遣いは
しなやかに強く
細部にまでわたる描写は
どこか温かい
あの物語を
まだ覚えてる
....
ちょっとした街の
ちょっとしたビルの壁に
「スーツはできる男の鎧」
冴えないコピーが貼りつく
ちょっと無理をすれば
ちょっと良さげなスーツが
手に入る歳になって
俺達はやっと気がつく ....
{引用=
*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目 ....
新たな年の目覚めと共に、大いなる父、
日輪は、貧しき山麓の村を照らす。
明けましておめでとう、という言の葉が
人々の白い息に紛れて、辺り一面散り散りに輝いている。
過ぎていっ ....
街灯の{ルビ鏤=ちりば}められた夜が 冷たい川を流れていく
対岸に立ちならぶ水玉模様の繁華街は深雪を浴び
緩慢な微睡みのなかに沈みつつある
彼女はかじかんだ躯をコートに ....
17歳のころ 遠い夏の日
世界はきらきらと輝いていて
呼吸をするたびに甘く苦しかった
私の辞書は日々更新され
新しい出会いを貪るように消費した
咀嚼も消化も追いつかなかった
時 ....
呆けた猫が毛づくろい忘れている
あの人のこと悪く言わないでおいてよかった
港街のとある酒場で出会った爺
コップ酒で赤ら顔、威勢は良くて饒舌で、昔語りを捲くしたて、嘘か誠か話の先で、次第に次第に静かに眠りこむ。
小柄な爺の世迷い言
小僧よく聞けこの俺は
十五の ....
手渡しされた新しい年は
少し
湿り気を帯びていて
私の砂時計は
サラサラと流れていかない
古い年に取り残されたものたちが
色を失い
塵、となって積もっては
風に吹かれて
冬空に溶 ....
ふと目が覚める未明
カーテン越しに
窓から漏れる寂光は
夜空に浮かぶ冷たい月のしわざ
孤独に身を任せる夜は
君がついた最初で最後の嘘を抱いてまどろむ
「いつかまた会える」
そ ....
苛性ソーダを鍋で煮る
知っておるやら何の日か
泡立つおはじき夢に見る
わしの願掛け{ルビ三隣亡=さんりんぼう}
睦月いち足すじゅうににち
黒丸しるす{ルビ天赦日=てんしゃび}は
ひがみ ....
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