いくつもの交差点を越えて
道はまだ続いている
緩やかに弧を描くカーブの先に
終わりはまだ見えない
進んで 止まって 曲がって 進んで
約束事を守って運転していても
右折してきた ....
細長い廊下の突当り
洗面台で顔を洗う
銀十字の蛇口をひねり
白いしぶきを手ですくい
顔にかける
清潔な白いタオルの
やわらかな糸で水をこすり取る
鏡の向こう
自分と目が合った
....
その
かんざしから
ふとももから
くしゅから
つけまから
れいざーびーむ
やえば
と
えくぼ
から
れいざーびーむ
うなじ
と
けんこ ....
電子レンジの中で何が起きているのか
ぼくはよく知らない
中に入れた物が熱くなって出てくる
そういうものだということの他は
操作方法だけ知っていれば困らない
ターンテーブル ....
深みどりの雷雲が
午後から夜へ沈みゆく
生乾きの蜜の壁
羽を持つ虫に埋もれながら
暗がりの履歴を見つめている
霧の頂点に落ちる光
窓の無い家に映る四角い明かり
壁 ....
誰もいない貧民窟に
火をつけてまわっている
腕に落ちる黒い滴
横顔を映して動かない
棄てられた木製の遊園地で
コースターだけが走りつづけている
午後の灰が
残 ....
死と
チェスをしていた
これが二度めの生だと
負けた後で気が付いた
九月十三日の朝
風のこどもたちは
キッチンの西窓の向こうで
すでに足踏みを繰り返していたとみえ
私が縦長の窓を押し開くと同時に
遠慮なんかこれっぽっちもしないで
じゃれあうように
とびこ ....
お義母さんから昨日メールがあった
ここ2・3日夏が惜しんで最期の力を振り絞っているから体調大丈夫とのこと
若くして最愛の伴侶を亡くしながら 女手一つであの人を
逞しくそして優しく育て上げ ....
雨上がりの木立の緑は歓喜に溢れている。
森の音楽隊が優しい音色を響かせる。
今はオルゴールの狂乱も記憶の彼方に薄れゆき、
深い瞑想の時に親しむ。ある厳かな雰囲気を持って。
等身大の天使 ....
宇宙を 黙読しつづけて
何万回死んだかしれない
こむすめコスメ ポーチから
四方八方に轟く その呻き
きょうは
おとなしい おくさま風
おとなしいおくさま
おとなし ....
眼鏡かけても君しか見えない
赤く染まっていく電信柱の向こうに
夕暮れが突っ立っている
突っ立っているその背中めがけて
君が思い切りボールを投げつける
力の限りの全力で
見渡す限りの赤空へ
思い切りボールを投げ ....
祭囃子が遠ざかる
ひとの気も知らないで
暗い夢をひとつひとつ、
棚の奥へ押しこめていくように
きみの顔が笑っていた
みじかい髪の毛がひとつひとつ、 ....
力を抜きたくない
力みたくない
走り挑みたい
赤裸々にモザイク細工施す 重ね塗り 厚みの飛び出る 絵
きっと自画像だと感じる 季節の寂しさの木葉の裏側の瞠目
高揚と背中合わす 己に革 ....
川のせせらぎに今ひとひらの葉が落ちた。
すべての音や空気や木々の彩りが秋に向かっている。
突然の驟雨でさえも、今はもう晩夏の趣は無く、
ただひたすらに秋の匂いがする。
日本の秋が今年も ....
キムとよく
この店に来たものさ
取り敢えず焼肉を頼んだよ
コリアンで賑やかな
この店の片隅で聴いていた
チョウ・ヨンピル
ノ・ムヒョンは今も崖の上
ハヤオ・ミヤザキは引退だ
時は流れた ....
合わせる歩幅がある
右に悲しみを越えた愛の持ち主
左に575777777の天才
そして向かいに顔文字のお面をつけた小僧
窮陰の毎度の集い 私は信号無視ギリギリで
編集長の愚痴を零しながらスタバに向かう
....
静かな失望が黒色の気泡を上空へと沈めるころ
空席に向かって話かけるひとがいる
ちいさな声で とぎれ とぎれ
隣の空席に一生懸命 生きるための説明をしている
いずこの街にも聞こえて ....
澱みの時を超えて、今再び大空を飛翔する。
冷ややかなあなたの眼差しを全身に浴びて、
それでも希望に満ちて、全ての生に感謝して。
鳥瞰する大地が平和で満たされる日を祈って。
行動する者は ....
地獄門の陰のこわれた海のかなたに入学式は立っている。
蝶たちはずいぶん長い間待たされ、いっそのこと青虫に戻ろうか、とキャベツを背負って思っている。
鳥山が立つ海の深層には大きな迷いが泳いでいる。
....
人の大事な気持ちは どこか大切な処で静かに呼吸をしている
多分 処理なんて出来ない しない
劣っているなんて 億劫だ
途上だから 親しみ歩み近づいてゆく
大事な気持ちは臆病に ....
「そら君」の 好きな 色は
空色なのか どうか 分からないけれど、
もし そうだとしたら
赤いザリガニは 映える色と なって
そら君の心に 留まるんだろう、
空色には 白い雲のほう ....
田んぼと田んぼにはさまれた道
農機具の後ろを走る高校生
同じはやさのふたり
会話などしていないだろうに
なぜか親子にも
祖父と孫にもみえてくる
並んで走る自転車の君は
どんな夢を ....
君に恋して僕はバカになりました
インスパイアを拾う頂く 奪う本能 アタシのもの
形成された思考回路に新たな道を工事している 音が煩い
タイヤが滑らかに唸る様に 道を削いでゆく 鍛冶職人の様に
未だ雷師の様な閃きはない 如是 ....
つくつく おほーつく
まずは食べるよ ぶた丼
おまけに食べる 貝柱
のとろこ さろまこ きたきつね
あばしり しゃりを通過して
ついにきました 温泉うとろ
地の果 ....
夏が庭先に
影を落とした
それを拾って
届けてやると
落としたんじゃなく
捨てたんです
そう言って夏は
....
在りし日の作家が住んでいた山荘に入り
籐椅子に腰を下ろした旅人は瞳を閉じる。
傍らの蓄音機から流れる古びたショパン
のバラードと窓外で奏でる晩夏の蝉のコ
ーラスの二重奏に耳を澄ま ....
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