◇小魚
雨の後は
小川の土手が増水し
小魚たちの遊戯場になっている
水圧に押されて
寝てしまった青草を
小魚がしきりにつついて
運び去ろうとする
一本の草とて
そうはさせ ....
おやすみなさい
わたしたち
しんだいしゃにのる
とおいどこかから
とおいどこかへ
たびだつため
ねむりのなか
たびがある
とまることなく
しんだいしゃはどこまでも ....
あの世に朝陽があるのならば
俺はそいつを見てみたい
例えこの眼を失っても
俺はそいつを見てみたい
俺はこの世には十分飽いた
もう何一つやりたくはない
人々の愚痴は聞き飽きたし
俺の口 ....
何もかもを失った
夕べの酒ほど旨いものはない
その日、月は煌々と輝き
僕の酒に反射する
何もかもを失った
夕べの酒ほど旨いものはない
サラリーマンが傍らを通り過ぎていく中で
僕は一人旨い ....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く
底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
堪えきれなくて
上の奥歯を三本抜いた
ピーひょろろ
小鳥の鳴き声になって
(あなた だあれ?
わき水を飲んだら
鼻からこぼれて
時計の針が鼓膜に穴を空けた
しばら ....
すきをひとさじほおばると
苦味が走るのはなぜ
甘い香りがするのに
君の言葉がいつか
カラダじゅうにまわって
まるで毒のように私を
狂わせてゆく
いけないと知ってて
道を間違えて ....
さよならと
手をふる時は
指と指の間を
すこし開けて
すきまを作る
かなしみが
そこから
上手に
逃げていくように
美しい水を
手にためる時は
指と指の間を
ぴたりと閉 ....
新聞を旅して
自分に出会う
出られない領域は
私の住まい
悲しみ
前向き
ドラマはあって
私の今をまた照らす
私の後ろで待ちかまえている
私の後ろでこちらを見ている
声をかけてくることもなく、
馴れ馴れしく触ることもなく、
私の後ろでこちらを見ている
わたしの後ろで座って見ている
....
賑やかな風景が今も見えてきそうだ
昭和のレジャーは大移動
小さなゲレンデ一つに
休みともなれば
がやがや人が集まり
きちんと並んで
リフトに揺られ
ゆっくり滑っていく
帰りの電車も ....
お寒うございます
お元気でしょうか
でもわたしはあなたより
もっと寒さを感じています
息もできません
私は鰓呼吸はできませんので
それと云うのも
あなたが私を冬の海に
....
斜陽のひと
小さな名前を繰り返す
夏の日が
あんなにも眩しい
真剣な寝顔へ
薬指の紅を
つうっと撫でる
暖かさは直ぐ其処
着地だけは任せて
まるで死刑台
嗚呼 やさしい日々よ
夢のように 幸せな毎日よ
どうか 崩れないまま
私も共に連れていっておくれよ
現の世に もはや何も望まぬ
身動きのとれぬ私のからだ
嗚呼 やさしい日々よ
....
たとえば塵のように
グラスの中で
わたしの怒りの澱が
舞っては沈む
気泡の中にそれぞれの
口に出しかけてやめた言葉を
閉じ込めているのが
足の速い風味に伝わる
ガラスのように澄 ....
人の芯ある言葉を聴く
心の軌跡を垣間見る
言葉を選んで口にする
思慮深さというヴェールで覆った素直さは
時に己の偽りを見抜き苦しめる
芯ある言葉は
その人自身の生きざまを
赤裸々 ....
君に捧げた花束が枯れた頃
約束した季節の巡りがやって来る頃
君の筆跡が薄れてくる頃
僕の影ばかりが遠くに伸びて
ぼんやりとした輪郭のままに生きてゆく
もう一度問い ....
ビーフシチューのネジが外れた
あっけなくばらばらになった
あんなに美味しかったのに
いろいろなパーツに分かれて
味もわからなくなってしまった
大切なものはいつか壊れる、なんて
....
数十キロの彼方から
この家の扉に向かって
一台の軽トラックが走ってくるのを
わたしの右の瞳が
静かに予感している
その車は
晴れた陽を窓に映 ....
ママの手は
てんごくのにおいがすると
五つの子が
うっとりとして
わたしの手を離さない
てんごくも
じごくも
絵本のなかに
出てきたね
てんごくに
匂いがあるなんて
知ら ....
手のひらに
つかむと
すこし音がしたが
死骸が
おそろしく
にぎったまま
眠ってしまった
おきると
部屋じゅうに
重たい光が
あふれている
桜の木は
こっそりとばんざいをしている
みなが不安がる空いっぱいに
枝を伸ばして
切り裂いて くうを
咲いてやる
桜はきっと
その命を燃やすのだろう
私はまたすきになる
桜の花を ....
ごく原始的な略奪にあっている
私たちの身体から今も 今も
奪われていくのは 熱
とても単純な それでいて残酷な
侵略者の名は 寒さ
巷にあふれる簒奪者におびえ
....
パスポートももたず
いこくへたびだっていく
それがわたりどりの
とっけんだ
かわらない
くらしのために
がんかにみえる
ひとのまちなどめもくれず
つぎのくら ....
切り立った崖の上で咲いている
スミレのために
俺は立ち上がった
国境で銃を構えて365日
誰も来ない
守るべきものは何一つなく
攻撃することばかり
はらわたの命令にしたがって
海だ ....
逆境のとき
いつも傍にいて
慰めてくれるのが
猫だ
名前すら付けて貰えない
猫だ
おい 猫よ
おまえは
すぐ忘れ去られるのに ....
もう充分だと言うのは
きっと身勝手なんでしょうね
でもその気持ちが消えないんです
良くないことだとは分かっていますが
やはりこうして日々を
何とかうっちゃっていると
いつも最初 ....
何か新しいことに向かうときは
できるだけ心を空っぽにして飛び込む
幼い頃
良くソフビの人形を
お風呂の底に沈めて
手をはなすと
勢いよく飛び出した
あの感覚
....
余りにも早くゴールに辿り着く者は
そう遠くまで行けないだろう
自ら目標を生み出し乗り越える事こそ
この長い人生にふさわしい
答えを出そうとして焦るよりは
まずは問題をじっ ....
わたしのからだは
とても正直なのです
わたしの頭。
低気圧が近付くと偏頭痛を起こして知らせてくれます
わたしの目。
寝不足だったり体調が悪いと二重になります
ちなみ ....
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