廊下に咲いた花を
摘んで歩いているうちに
迷ってしまった
春の陽が差し始めた病室に
戻りたかっただけなのに
白い売店や
柔らかな窓ガラスに触れて
いくつもの季節に
取り残されて ....
かつて幼い女の子の髪を結んだリボン
うすももいろでつるりとしたサテンの手触り
持ち主をなくして
しょげかえっているかといえば
案外そうでもなくて
虹へ続く路を
しゅるっしゅるるる
先頭で ....
あちこちでびん笛がはじまる
うち幾人かは胴をうまく叩いている 薄暮

目は子ども時分からよくない
たくさん撲たれてきたからさ
と、隣のじいさんが笑った

にごった水晶の弛みや
かわるが ....
どうして
こんなに平穏なのか
冥土へと導く と信じられたホトトギスも
いまは五月の鳥

森を抜け
砂の砦みたいな監的哨跡にのぼって
海のまえに出ると
もう詩に出会った気がした

壁 ....
これから星めぐりのしらべはもっとよくなることだろう、
   それよりもすばらしいのはわたしのなきがらが蟻にはこばれること

そこでながされる血は路ぼうのおくちをたびするだろう、
   はじめて ....
この峠の一部になれたら
きっと、深く眠れる
死んだことも忘れるくらい
安らかに

四季に逆らわず
空を巡る風

淀みに濁らず
海に還る水

峠の道を私は歩く
積んでは崩すを
 ....
身体のなかを季節が流れていくように
庭に春がおとずれようとしている
赤い花は生きたまま供物として捧げられ
緑の血液は地に滴り落ちている
土の中にも季節が流れている
人には見えないだけで
歓 ....
久しぶりに洗車する
マスカラが涙で落ちたような数本の薄汚れが
泡とともにコンクリートへ流れていった
この数日
見て見ぬふりをしていたものに決着をつけてほっとする
助手席に乗せた犬は真顔で少し ....
 擬態

わずかに残された木々のふゆの葉を北風がこきざみにゆらすとき
それは小鳥のはばたきになる

 家出

街角のメリーゴーランドは天使をのせてくるくるまわる
色とりどりに着飾った馬 ....
闇のなかへ祈りをポンと放り込む
どこか奥のほうでぱしゃん、と水の音がする

跳ね返ってくるかすかな水音が
応えなのだろう
それを紐解いたりはしないけど


冷える夜に丸くなって眠る
 ....
闇に沈んだ森に
すみきって硬質な音がひびいている
呼び出しのベル
からすの巣にかかげられた黒電話
ひなはとうに巣だっていって

せつな、
忘れていった羽毛がおどる
とても軽いから
命 ....
手のぬくもりで
小さな氷河期をあたためている
白くもやいだ氷は
たやすくは溶けない
魚は見えないけれど
まだ生まれていないだけ
詩をあたためている
詩に熱を奪われている
あぶくになった ....
凍ったフロントガラス
朝日が少しづつ彼らを懐柔すれば
やがてそこは完璧な薔薇園になる
回旋塔のはがれかかった塗装から
こぼれ落ちるドライフラワー
校舎の壁にはヒビの花が
鉄屑には錆の花が
 ....
イタコ、暖炉、雲の姿。ガスの目論んだ固体。
いたこ だんろ くものすがた がすのもくろんだこたい


重く語ってったか、蜘蛛を。
おもくかたってったか くもを


餅の命の要素。滅ぼそ ....
小さな小さなキミは
迷路遊びが好きだった
渦巻きの道を
ぐるぐる進む
勇敢な旅人
お気に入りの小さな雨靴で
ずんずん歩く
僻地で
草も花もない道だったけれど
ときおりバタークッキーの ....
やわらかい、
手でひきながら、
にぎわいへとみちびく、
そのひとみに、
よく跳びはねる、
活発な、
ちいさなウサギ、
が、二ひき棲みついて、
だから、きみはよくまばたきをする、
その ....
誰かに教わったわけでもなく
ひれもないのに
泳ぐ術を知っていた
不思議
暗闇の水は透明なはずなのに
烏賊墨いろ
触れる
包まれる
抱きしめられる
身ひとつだけの
図式
へその緒が ....
大寒の朝
フロントガラスにいくつもの
小さな雨粒たちが
縦に並んでいる
球体の接地面で
ふるふると
ふるえてる
ああ、ここにあったのだ
糸から外れても
ばらばらにならないで
ここに ....
朝、いつものようにキッチンに向かう
痛っ、イタタ
キッチンの入り口にぶら下がっているのれんに頭をぶつけた
昨日まで柔らかい麻布だったはずだったのれんが
硬い板状の物体と化していた

一体こ ....
小さな庭の忘れ柚子
採ってみれば中がブカブカしています
ちょっと前まであんなに固かったのにどうしたことでしょう
果汁を絞ってみたところで焼き魚の足しにはならないでしょうね
この数ヵ月ですっかり ....
ちいさな灯りを枕元に遺しておこう
キミが真っ暗闇でも
夢を掘り起こせるように

閉じられたまぶたの下で
かすかに動く気配みせる眼球

昼間の世界とは別に
もうひとつの世界があると知った ....
フルオブライフ、
透明度の高い日々だった
言い換えれば僕たちの
一つ一つ箱詰めにされた
コワーキングスペース


揺れること、かすかな
軸を保ちながら
君の硬い輪郭線で、描か ....
陽の光がまたたくせわしない時
誰もがどこかに向かって急いでいるが
なぜ急いでいるのか
その本質の答にたどりつく者はなく
ただそうであるからという
日常のために急いでいる
気の重くなるような ....
とめどなく溢れてくる言葉を
あなたは何と名付けて呼ぶのです
それだけが知りたくて
正気か狂気かなんてもうどうでもいい
爪の先ほどの愛と
夜更けに漏らすような知性
明けた空に見る力
押さえ ....
電子レンジを開ける
中には海がある
波間にレンジが漂っている
泳ぐことは苦手だけれど
意を決し飛び込む
君との二人分の
ご飯を温めたかった
何とかレンジに辿り着き
扉を開ける
 ....
亡くなった犬が鏡の中から
わたしを見ている
わたしの手のひらに隠している
おいしいものを知っているのだろうか

名前を呼ぶと返事のように尻尾を揺らす
黒い鼻はしっとりと濡れ
いかにも健康 ....
義母が黒豆を煮ている

石油ストーブの火を小さくして
その上に置いた大きな鍋から湯気と香りが立ち上っている
こういうのをコトコト煮るっていうんだろうな、と
一歳になったばかりの子を抱っこして ....
痛点を通過する
ブランコに揺られて
春を待つ間に
チェニジアの
ハイスクールも
時間が経った
珍しく向かい風の
匂いがする朝
皮膚病だらけの
野犬に看取られて
誰もが死ぬ、 ....
 もやぐ朝 

夜が朽ちて
朝が生まれる
霧に覆われた街は
港へと変わる
赤い太陽は
無音の出港の合図

けれど想い出は
いつでも切ない
胸に
錨をおろしたまま


 さ ....
ボーカルのテンコは機嫌が悪い。
向かい合わせの椅子に座った彼女はだんまりを決め込み、ウミネコみたいな目つきでひたすらもつ鍋を食っている。
今日のライブで声の調子が今ひとつだったこととか
取材にや ....
ただのみきやさんのおすすめリスト(14211)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
病院- たもつ自由詩624-3-2
聖列がゆく- そらの珊 ...自由詩10*24-2-21
夕春- soft_machine自由詩11*24-2-20
離島- 形代 律自由詩1024-2-18
再生_―空洞という名の根のしらべ―- 菊西 夕 ...自由詩3*24-2-18
峠道- まーつん自由詩3*24-2-18
うた- そらの珊 ...自由詩10*24-2-11
助手席に犬を乗せる- そらの珊 ...自由詩10*24-2-10
冬のストーブは熱い魂- そらの珊 ...自由詩8*24-2-4
まどろみ- 凍湖(と ...自由詩824-2-3
夜のこずえ- そらの珊 ...自由詩7*24-2-2
実験室- そらの珊 ...自由詩4*24-1-29
常設展- そらの珊 ...自由詩5*24-1-28
古代にいた子- 水宮うみ自由詩4*24-1-27
渦巻き迷路- そらの珊 ...自由詩9*24-1-26
まばたき- 本田憲嵩自由詩1224-1-24
対岸まで- そらの珊 ...自由詩12*24-1-22
邂逅- そらの珊 ...自由詩8*24-1-20
のれん- そらの珊 ...自由詩8*24-1-18
柚子湯- そらの珊 ...自由詩5*24-1-16
眠りに埋もれた夢のいくつか- そらの珊 ...自由詩6*24-1-15
フルオブライフ- ねことら自由詩324-1-14
- 岡部淳太 ...自由詩424-1-14
- 303.com自由詩524-1-10
漂流- たもつ自由詩524-1-9
鏡よ、鏡- そらの珊 ...自由詩15*24-1-2
大つごもり- そらの珊 ...自由詩5*23-12-31
反射- たもつ自由詩7*23-12-31
この世に錨をおろしたまま- そらの珊 ...自由詩16*23-12-29
いつか星になるまで- そらの珊 ...自由詩5*23-12-23

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474