「あの子が嫌い」
と
彼女が一言そういえば
パタパタパタパタ
音を立て
私のオセロは翻る。
黒なら白に
白なら黒に。
「あの子が嫌い」
と
彼女が一言そう言うたびに。
....
コスモスが道をふさぐ
迷っている私をみすかすように
濡れたコスモスが
ふれて冷たい
いかなくちゃ
そうおもうときほど
いかなくてすむ方法を
想ったりする
大人になるって
迷わ ....
弁護依頼
冒頭調停
資産精査
財産分与
親権争い
罵詈雑言
憎悪交錯
視線鋭利
責任主張
法廷闘争
損得勘定
喪失感覚
精神耐久
疲労困憊
結局敗北
それこそ
離婚 ....
生臭いゴミの匂いがした
いい匂いのふりをしていた
季節の夕暮れのひかりに
ぼくは金木犀じゃないかと見回した
歩きだせずにいた
ひかりは姿を
ゴミの匂いは形を
....
見上げた灰色の空に
風が答えるように 霧雨をよび込む
屋根岩二峰
小さな張り出しの下にたどり着いても
漂う水滴から 逃げる事はできない
吸う息も 吐く息も
踏みしめ ....
美術の造形で手の形のを作った。
更衣室で皆で
蹴って遊んでいた。
そうしたら私の蹴ったのが
友達の目の上に
当たってしまった。
縫ったそうです。
傷は一生残っている
とても大切 ....
朝起きたら
おもいのほか寒かったのです
肩がひんやりします
すっかり秋ですね
早起きしても
ひぐらしの声はどこにもありません
朝起きたら
寝違えていたのです
眠りながら何かを間違う ....
9月からアメリカの小学校に入学した娘
2日目の朝吐き、早くも欠席
3日目お腹が痛いと昼前に早退
4日目から毎朝目が覚めると学校に行きたくないと、泣くようになった
「なんで行きたくないの?」 ....
それぞれの許されない世界は
こまるかもしれない
パートのないオーケストラは
ハーモニーを奏でない
ぼくは遇いたくない人間にはあいたくないと
思っている動物
話したくないのはぼく ....
太陽がラッパを吹いても
月がバイオリンを弾いても
最後は祈ることしか頭にない
最後は祈ることしか頭にない
私の湖に小舟がやって来て
そっと浮かばせてあげるこの腕は
いつでも身軽であ ....
人を
ただしい場面で
ただしい順序で
ただしい角度に
揺すると
泣く
そのただしさを
習得することを
愛とか技とか
呼ぶ人びとを
軽蔑し
憎んでいるわたしも
ただしい角 ....
誰にも届かない言葉を綴ろう
僕は 夜の井戸に吊るされた{ルビ剣=つるぎ}
永遠の愛を探し求める 一匹の蛾
その羽は古い靴下のように 穴だらけで
沈むことのない夕陽の その逆光に透けて
....
自分のすべき事が
見つかった。
できるかできないか
分らないが私のできる事。
私にしかできない事
反対も多いと思う。
でも私は負けない。
皆と戦う。
勉強は人間関係を
悪くす ....
発酵と腐敗は兄弟で
人間生活に有用なものは発酵
有害な場合を腐敗というらしい
母の遺産のふるーい缶詰がある日でてきた
台所のすみで静かに時を過ごして
僕と対面したわけだ
すでに缶は ....
花は成長すると
笑う
花びらをいっぱい広げて
笑う
人はそれをみて
きれいだなぁーと
笑う
落ち込んでいる人
泣いてる人
苦しんでる人
大切な人と歩く人
寂しそうに歩 ....
三角子猫二人乗りの皮肉
貴男の発車音
―ピストルが泣いている―
撃て私を
空海の喉に溺れ死ぬのは
束の間
真夏の灯火
それは初恋
....
勝者のいないレース走らされている
コロナの中に滾る体液
君はきっとその中にいる
死角に穿たれる水路
敷き詰められた鳩の死骸
変容する五月の広場
全てから離れるように
....
秋が始まる頃
ようやく
旅人が帰ってきた
ちょいと
長い散歩だったかな
と
悪びれもなく
おかえりというのも
待ち焦がれていたようで
まったくもって
しゃくなので
おみや ....
たりたりたりと
私の何か少し足りていない
ミリデシリットル分の
たりたりたりが
足早に私のうしろをついてきて
影に交じりながら
陽をよけて
たりたりたりと
....
湖底から水面を見上げて
湖の周囲には深い森が広がっている
白いシーツを乱すように
水面に陽光が跳ねる
森の上にだけ天気雨が降っている
それは恋人の涙のようにすこし塩辛い
恋人の涙は小鼻の脇 ....
夏に焼かれた街を労わる雨音
一粒一粒、世界に触れ、砕け
私の胸を静けさに連れていく
夜、ひとり聞き入るこの音に
なにもかも許された気がする
小さな小さな茨の冠を、そっと頭上に載せてあげる
わたしの小さな王女さま。
剣も盾も兵隊もいないけれど、
黒く切り取られた空が
のっぺりと広間をみたしている
{ルビ万軍 ....
ありあわせのもので生きてゆく
冷蔵庫のなかにはあるいはいえのなかには
備蓄したもののない
こってりとした愛とか
ささくれだった笑いとか
スパイスをきかしたつもりの人造サラダ
気 ....
ぞろぞろと
つながって
生まれくる
かまきりの赤ちゃん
泡を固めたような
麩菓子に似た卵から
孵化してしまったら
もう戻れない
生まれた瞬間から
君たちは みなしご
風 ....
可愛かった君が
台風になったと聞いて
かなしかった
あんなに可愛かった君が
なに食わぬ顔で
意味や 時間を
張り飛ばしていく
むかし
一緒にうたっていた歌を
はぐれた風に ....
西瓜の種をどこに飛ばそうが、自由だった。
あの頃は、どうでもよいことなど一つもなかった。
電信柱が眩しく そそり立っていた。
*
下水処理場を通り過 ....
クロワッサンを
ココアにつけて
体も心も温まる。
眠くなり寝床へ
人を大切に思い
人に気を遣って
人の話を聞いて
人の為にいのる
何もできない僕
情けをかける君
心 ....
おそらく
それが見ず知らずの善良な動物の皮であった
という
ひどく生々しい事実にもたれながら
わたしが
しらずしらずのうちに
この足で踏みつけてきた
ものを想います
どうして
こ ....
なんにもないから
じゃがいもを剥いて茹でる
そしてつぶしマヨネーズと七味
とろけるチーズも入れて
まぜてこねたら小さくなった
おたまのうらを覗いてもなんにもついていません ....
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