赤いマジックで
なまえを書く
書いても書いても
なまえは「名前」にならない
それどころか
書くほどにぶれて
水面をおよぐ魚の尾になって
ぴしゃり
血をはねる
はねら ....
小鳥がついばんだ林檎だけ
落ちずに残ったとき
決してこの世は綺麗なものだけで
満たされてはいない
線路の左側を歩いていくと
虹に辿り着くと幼い頃叔父が言った
母について記すとき ....
空をゆく鳥が止まっているのじゃないかって
思う時
あるよね
そんな言葉で恋が始まることもある
わたしたちが本当に見ていたのは
鳥でも
雲でも
小刀のような銀の波濤でも
ウインドサー ....
生まれてくることを
たくさんの罪行を
積み重ねていくことを
風の広がりそのものである
行政官にゆるされたときから
私も同じ分だけ他人の罪行を
ゆるすよう定められていた
私は未 ....
許しは請わない
愛してないわけではなかった
だけど
許しを請うても許されない
愛がいつも
お前たちを包んだわけではなかった
届かない荷があって
時の河を越えていく
お前たち ....
街の血をすって雲がひかっていた
電話をしても
電車にのっても
まるいものを意味もわからず探していた
からだのちからを抜け
悔しくても
みじめでも
焼け石に ....
海底に網を下ろして
引っ張りあげながら
己の魂をコントロールする。
海が顔を変える。
荒くなる水面。
*
あなたのなかで
裸になりたい。
リズムになって
....
夕方の地下鉄
小学生を連れた母親
吊り革にぶら下がろうとする悪がき
それを止める自称かぁさん
ボリュームのつまみの無い小悪魔どもは
あっちへ行ったりこっちへ行ったり
結局、母親もスマホ ....
戸棚の奥からでてきた何のものだかわからない古いリモコン
我が家ではときどきあるのだこういうことが
ためしにあちこち押してみる
わずかな振動が空気を震わせて
とつぜん世界が半壊
するわ ....
こころに海が在る
潮騒もときどききこえてくるし
いつかのくちづけも
深いうみの香りだった
瞳にうつる雲をとらえようとしても
いつのまにかかぜに溶けてしまうから
つねに移ろうもの ....
教師がチョークで引く線
黒板に集まる視線
サラサラとペンがノートを走る音
皆何をそんな必死に
黒板に書かれた文字なんてすぐ消える
脳裏によぎるのはどんな砂嵐にも消され ....
世界中の海から集められた
追いきれない広さと迫りきれない深さ
あるいは群れをなす魚の一匹が発した
どこまでも届く一瞬の輝き
そういうものが
個人のはるか遠くまで開け放たれた
借 ....
今日も雨 灰色に染まった湿気に
沈んでいく ヒザを抱えた狭い宇宙が
傘を広げて 縮んでいく 心地よい闇に向かって
落ちていく 余計な雑音の聞こえない場所へ
窓の外 紫陽花の下に 捨 ....
マーブルチョコ2粒小保方さんの夢レシピ
とうに手放したものを
いつでも
たぐりよせられると
隠し持っていた
古びた
麻紐
年月に擦り切れては
いない
乱れる思いに
捩れてもいない
さっぱりと乾いた紐の先には
....
ここは都会の海の底
コーヒーを待ちながら眺める窓の外
都会の空から夜が消えても
海の底には闇が淀んで
淀んだ淵の岩間から覗けば
摩天楼のような海藻が
ゆらゆら揺らぎ
海の底に ....
ぶちのめしていい権利は ATMでおろせると
近くの女が言いました
働けないなら罵声に耐えろと
女に頭の上がらない男が母子に言いました
お金が稼げないやつに
意見を言う資格はないのだ ....
ヤクルトを飲んだあと
必ず底に残るものが
輪となり現れる
どういうわけか
そんなつまらぬものが目につき
飲み干してやろうと
舌の上で
容器をさかさまにして
振ってみたりする
ほん ....
私は今日川縁を走った
一時間も走ったのは学生の頃以来だったが
走っていると色々なランナーとすれ違う
その体に 色々な人生を抱え
私も走った
短い時間を縫って
対決を見守る少女たちや
....
夏が透ける雨の隙間
渇いた紫陽花が
雨を、乞う
ひとり、は飛べる。
ひとり、は鳥だから。
ふたり、は飛べない。
雨のなかに手を伸ばすと雨姫の声が聴こえる、
きゃっきゃと笑いながら、
誰かをダンスに誘っている。
眠ったままのこどもが浮 ....
パンジー
ビオラを上手く咲かせるコツは
なんといっても
花がら摘みを
怠らないこと
種を作ると
花は終わる
種に養分をとられるから
咲き終わり
萎んだ花を
直ちに摘んで ....
熱帯夜に
惑わされて腐乱した睡眠から
止め処なく垂れ流れるゲルは
黒い卵を内包していた
寝息が言葉に染まって
過去の幻像を描くとき
醗酵したゲルは悪臭を放って
野を枯らし 街 ....
腫れた足で
あなたは泥をふむ
愛するように静かに 憎むように永く
やがて わたしは 夜を吸うだろう
あなたの持つ幾つものふくらみに
こっそりと歯をたてて
....
きのうとあすが
なわとびをする
たった一つの錠剤が
スプーンでかきまぜた珈琲になって
前頭葉を支配する
誰も気づかない
この脳が砂を掴んで
やわらかなくにを潰そうと
黄 ....
高層ビルの屋上
この世とあの世の境目に放り出した片足
目を閉じ 胸に手を当てて 聞く最後の独奏
目を開けると美しく没する夕日
カサカサと音がして視線を下に逸らすと
この ....
不都合な夏の陽に
白い肌は 非情にも灼かれ
沈黙を借りて 何か云おうとしている
あえかな蕾 文明の摘んだ失語症
こんな不条理があっていいのだろうか
うれしさの対概念としての ありった ....
補色の皮膚にくるまれた
みずみずしい
くれない色の球体、に
浮遊する
ありふれた夕暮れ
しゃりしゃり、と
浸食される空から
ふきだす
涙形の星が、
しゃぶり尽くされて
裏葉緑青 ....
震え続けるコンパス指針
粉々に壊され砂塵となったあの頃の自信
ああ ここはきっと例の樹海
ルービックキューブのようにバラバラにされた東西南北
あの頃の想いはもう迷宮入り
何度 ....
あの頃の街は灰色に閉じ込められて
誰もが外に出なかった
紅いダリアが咲いているというのに
入道雲が空を鳴らしていたあの日
浴衣姿で空に消えて往った
ぼくは哀しみを理解できず
た ....
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