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神さまの足に蹴っ飛ばされて
コロコロと顔色を変えるような
サイコロ人間になるよりは
ポーカーフェイスな魚になって
ぴちぴち生きていきたい
どこからともなく聞こえてくるのは
つぶやく ....
台風が来る
南の海の匂いと一緒に
置いてきた心を運んでくる
まっすぐに僕を目がけて
近づく力のかたまりに
胸の奥が震える
雲を巻き込む大きな螺旋が
心臓の鼓動と響き合う
どきど ....
わずかばかりの乗客を乗せた
昼下がりの鈍行列車の
窓を少しだけ開いてみると
六月の薫風がそっと忍びこんできて
僕の睫毛を醒ますのだった
この車両は最後尾なので
終着駅に到着する
....
いつもの店のいつもの席で
ちょうどよく酔ったその後で
独活の酢味噌和えという旬のものを
うすうす噛んで
うすうす僕は
ひっそりとニンゲンをやめるのだった
右の席からは仕事の話
左 ....
江ノ電鎌倉高校前駅と
腰越駅とのその間で
窓という窓が突然
ぱっと明るい海となり
ゆるいカーブの水平線に
乗客はみな取り囲まれてしまうのだった
すばやく走る波の線
空の始まるとこ ....
髪についた雪を払って
傘も持たずに街を歩けば
見慣れた景色は別世界
眩しいほどの銀世界
ふかぶかと残したはずの足跡も
振り返ればもう微か
念のため確かめてみたけど
両足ともにちゃ ....
掃除を終えた綺麗な部屋に
いっぱいの日差しが入ってくる
本棚の背表紙もそろえたし
机にだって塵ひとつない
今のこの部屋には
神さまだって住めるけれど
そうするわけにもいかないし
背もたれ ....
ある冬晴れの日のその空と
同じ色の表紙をした
日記を買った
他に種類はたくさんあったのだが
それはひときわ僕の目を惹いて
一度手に取り
一度戻して
もう一度手に取り買ったのだった
....
どこかでたしかに会ったことある人に
挨拶してはみたものの
結局あれは誰だったのか
日が暮れるまで思い出せなかった
減るものじゃないけれど
宙に消えた「こんにちは」が
なんだか寂しい ....
水たまりに浮かべた
葉っぱの
軽さ
しゃぼん玉を泳がせる
そよ風の
軽さ
羽毛の軽さ
まつ毛の軽さ
この世でいちばん軽いものはなに?
飛んでいく風船
手放し ....
夕方 ボート池のほとりで
すずらんが 風に撫でられていた
父さんにほめられた子どもみたいに
よしよしされて 満足げに揺れていた
空気は甘く 池はしずかだ
ああこれでいいんだ ....
小さな家のベランダに
くつしたが干してある
大きなくつしたはお父さん
中くらいのはお母さん
ちっちゃいのは赤ちゃん
足の家族
川の字に並んで
風に吹かれてる