黒く透明な魔物にとりつかれた指は、
もう止まらない、
もうもどらない、
指が進む先は、
まっすぐ なようでかなり
曲がりくねっている。
指には耳がある。
かなりたくさんの耳だ。
無数の ....
ことばを欲しがる指先が、
熱を帯ながら、
水面をぴしゃりはねる。
指先の熱が水を伝って、
水面に映りこむ私の唇に話しかける。
熱は針のように鋭い薔薇の棘になって、
私の唇を抉じ開け、
舌 ....
そういえば野葡萄の森には
女学生たちの笑い声が響いていた
ルージュをいまだ知らないいとけなさが
あまりにも無防備にうららかに
秋の終わりを彩っていた過日
#
電気代・ガス代に ....
忙中閑あり
終末は妻とアイナメを釣りに
銚子へ行こう
ほんとは電車を乗り継いで
銚子電鉄に乗りたいところだが
荷物がかさばるので
車で行くしかない
その昔、
一年間を独りで暮らした ....
書きたくないねえ
なんだか 自分の死を待つようで
あんたが死んだ後の片付けだと
どうすりゃいいか分からんってか
死んでから見張っていられるでもなし
とやかく言うたかて
訃報を出すと ....
東海は 渥美半島の 砂山から
真昼の渚に 乱舞する
海鳥たちを ながめるとき
太平洋を覆いつくす
「悠久」のふた文字が
こころにしみて
....
愛 と云うとき
世界がこんなにも憎しみに曇るなら
重い靴をはいて
そしてもう二度と 愛さない
それは ゆるやかなひとつの堕落
最後の刻を待てずに
底なしの憎しみの拳をふりあげたあなた
....
沸騰する憂鬱を、
跳ね返すことばが、
さかなになって脳裏を横切っていく。
それを掴もうと、
手を握ったり開いたりしてみても、
私は海底に沈む難破船になって
視線を落とす。
*
....
あなたの面影は
白い石鹸の匂いと
サイダーの匂いがした
おかあさん
何処に往ったのですか
ぼくはいま
武蔵野の林を歩いています
あなたを探しながら
足跡は何処にもみえな ....
私を抱いて クレチマス
くるくる・くるる 描く唄
鉄塔の下 踊り出す
ひらひら・ひらら 風も揺れ
見上げる度に 笑います
見上げる旅に 出掛けます
*
妖艶な迄に ....
梅雨明けの少し前、雨粒が入る家と入らない家の違いが分からなくて、屋根をじっと見ていたら失明した。雷の音だけが聞こえて、白かった。
人間が(つまりあなたのことが)見えなくなってしまったから百日紅の ....
風が文句を言う。だから僕は頷く。若しくは日常語だけを話し、沈黙を忘れる。太陽は感情を曲げないで一直線に走る。だから僕は座る。若しくは歩みを止めて、目的地を捨てる。雨は時刻を知らせる。一秒毎に100粒の ....
落ちては掃く
落ち葉の
落としては掃く
落ち葉の
だれでもない
わたし
日暮れの
空の
落とされては掃く
落ち葉の
だれでもない
わたし
だれかが
どこかで
....
この街は寒いのに 雨を雪に変えない
小さい傘を君にさして僕は濡れてしまう
クリスマスツリーの点灯は君との別れの時間
またねと改札を抜けていく 一度も振り返らずに
雲の上には眩しいほどの ....
それは突然に来る 音がする
ヒタヒタと迫りくる
晴天が急に曇り、突然降る
人は剥き出しだ 傘もささずに
12月の初めの風 南に向かって
匂う道 曲がる季節
今日の天気 晴れのち ....
遠くで鴉が騒いでいる
近くでキジバトがうなっている
そして 里山の林には
小雀たちが戯れている
深閑を讃美するかのように
カラオケのさざなみをたてて
....
私が昔
吐いて捨てた言葉に
躓いて転ぶ今の私を
腐った道が笑っている
はじめから途方に暮れていて
今では
どう感じれば良いのかもわからないのだ
できの悪い推理小説のプロット
夢の死に絶えたファンタージェン
造物主のいない創世記
すべての夢がわずかな因果の隙間に託されるなら
いつもつまずいている僕はニッチな日雇い漂流生活者
....
ちからなく たちつくす
たちつくすと きになる
きになると えだわかれ
えだには はが のぞむ
はっぱは かぜをうける
いきたいのか ちぎれても
いきたくないのか くちても
ねが ....
狐につままれておもえらく
十中八九発作なのだが 今すぐ要所に駆け込めば
まだしもマシに収まるのだが 今ちょっと手が離せなくて
したい事溜まってる気がしてたのだが よく見ると業者に借りたでっち ....
覚えている 山の色、海の匂い
夕焼けの中、一緒に遊ぶ隣の家のお兄ちゃん
記憶は遥か遠く、遥か遠くに居て 瞬間に迫りくる
過去は止まり、描写は言葉を忘却している
感情の色を失くし、刻む脳裏の ....
ちいさい秋見つけた
帰り道
ちいさい秋実をつけた
輝いている
ちいさい秋差をつけた
キミとボク
ちいさい秋目をつけた
羨ましい
ちいさい秋火をつけた
悔しさに
....
大きくはない講堂で
詩人の声がしている
詩人の声は講堂よりも小さく
低いところを這うように響くから言葉のつぶは分からない
絨毯だけが分かっている
水を吸い込む時のように、そこだけが深い赤 ....
ヤモリの張り付いた電信柱が
オレンジ色の灯りをともし
夜の歌を静かに歌っている
夜の秒針を刻んでゆく
ぼくは落ち着けないでいた
あの中華そば屋までの果てしない
道のりは
とても遠くて ....
夕暮れがやって来る頃決まって私の腕に止まる君
ねぐらへ帰る途中なのだろう
一羽であることもあるし
友達を連れてにぎやかにさえずることもある
いやもしかしたらきょうだいだったのかもしれない
あ ....
また道路に死体がありました
カラスが群がっていました
車たちは知らん顔で通り過ぎるのです
また道路に死体がありました
いつ死んだのかもわかりません
私はみなかった
なんの死体なのか ....
五円玉と五十円玉
出来のいい兄弟みたいに
二つ揃って穴のある
可愛らしい小銭の
五円玉と五十円玉
どっちが兄ちゃんだろうね
そりゃぁ、五十円玉が兄様だろね
五十円玉一つでいい ....
死にたいという衝動が一日中私につきまとう
死が人々の中でたらい回しにあっているのか
私が死の中でたらい回しにあっているのか
でも、死にたいと思うたび、私は私に立ち止まる
死を望むに ....
夕陽は波の音を残して
海と空の混沌に溶けていく
松の梢から昼の光が消えると
ぼくの中で映像がうずきはじめる
時を忘れて遊んでいたぼくらに
夕餉を告げる母の声がとどくとき
一日 ....
東海は 知多半島の 里山に
野の鳥かげがうすれるなか
昼夜の区別もとぼしくなって
背の伸びきった「時」はただよい
間の伸びきった「空」が拡がっている
....
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