余った春巻を
翌日甘辛い出汁で
サッと煮て
溶き玉子でとじて
熱々ご飯にのせて
最後に
三つ葉かなんかを
散らせば
これが
世界が終わるんじゃないかと
思うぐらい
美味でさ
重いつるはしが見つからず
エロスの更地は 深いくさびが
突き刺さっている
手軽な鋤の刃は錆びて欠け落ち
リアリティの休耕田は 汚れた小石が
もぐりこ ....
雪道を歩く
子どもの頃は
どんな雪道もすたすた歩けた
ふわふわの新雪が積もった道は
心躍らせ 雪を蹴散らし
わさわさ歩いた
湿った雪が積もった時は
足跡をくっきり残して歩いた
....
冬の落ち葉は屋根ですね
虫は春の夢をみる
柱も窓もないけれど
いのちが育つ
そのために
必要なものはそろってる
無用なものは何もない
あなたに家があるように
わたしに家があるように ....
娘と一緒にドラッグストアーに行って
「好きなものをひとつだけ買ってあげるよ」
と言ったら
「ホチキスが欲しい」と言う
「ホチキスならうちに二つもあるでしょ。
塗り絵の本とか色マジックのセ ....
少女。
それは木漏れ日の中で
つぶやく独白、
少年。
それは崖の上に立って
口づさむ旋律、
細い指と指を
触角のように絡めあって
紡いでゆく生糸
まるくやわらかな
....
金魚 金魚
可愛い 金魚
ビー玉たくさんお城のように
ご褒美貰っておおはしゃぎ
金魚 金魚
可愛い 金魚
お手々もあんよもなくてね
お口つかって生きてるの
ほらね ほらね お上手お ....
わたし
その器から
人間があふれ出す
あとになっては
思い出せもしないことで
ふいに気持ちが弾け
嗚咽する夜がある
灰色の日常に染められ
瞳も心も淀んだ ....
りんごをむいた
よっつに切った
ひとつは おとうさん
ひとつは おかあさん
ひとつは おとうと
ひとつは わたし
ペットのハムスターは
りんごの皮をむしゃむしゃ
だいじに
....
{画像=130123163933.jpg}
とっても小さな赤裸
ちいさくおおきい命だよ
十日で立派に毛も生えた
おめめはまだまだ閉じたまま
けれどもきちんと判るのだ
....
この世界は
俺向きじゃない
ルールが飲み込めない
悲しくない時に泣いたり
嬉しくない時に笑ったり
そうして俺たちは関係を築いていく
当たり障りのない関係を
赤ん坊だけが自分に正直 ....
僕はたくさんの「なぜ」を
君の底に 沈めてきた
たくさんのことばが
僕から出て行ったきり
くらげのように
永いあいだ 漂っていた
海よ
君は思い出の中に
僕を沈めて
遠く 光 ....
ひとりごとをいう
ひとりごとは
大きな声ではいえない
口元でこっそりいう
だれかにきかれてはいけない
だれにもみられてはいけない
そんな時に限って
空はみているし
猫だって ....
冬の朝
道路に てぶくろが落ちている
手の形に作られた
左右対称のかたわれ
いつからここに取り残されていたのか
拾ってみれば
柔らかく凍えていた
{引用=ナイタアカオニ
アレハ
....
ああ、これは病気でござりましょうか
寒いばかりの夜な夜な、炊くアルミ鍋は
今日も明日も貧しい菜を煮るだけでして
月がでようが、隠れようが
見ているものひとりいないときたら
....
夕闇迫る三差路で
迎えが来ぬかと立ち尽くす
逢えぬあなたに逢いたくて
黒髪闇に溶かします
紅い時が往き過ぎて
....
トルコキキョウ スカートを裾をひらゆらひらゆら させている
貴女と呼ぶべきかしら 幼い妖精の衛星が見える
貴女と呼ぶには 重力をあまり感じていない様
トルコキキョウ 月曜日に透き通る喉を 瓶 ....
雲が僕を抱きしめてきた
その胸元には雨の匂いがして
雷を飼ったその腹が ゴロゴロと唸りを上げていた
{ルビ霙=みぞれ}が僕に口づけをしてきた
全身に冷たい唇を這わせて
シャツの下までびし ....
考えると死にたくなる
足りない淡白な脳の色 心も曇りに道ずれ
考えに呑み込まれると死にたくなる
心技体の面積に氷河期の凍てが張る ひびは入らない
せめて心だけは切り裂いて 留まらせてや ....
喪服はだけている月明かり
【すりおろした林檎】
ねこをかんぶくろにいれて ポンと蹴っていいような
汗と毒と 荒い呼吸の みすぼらしい私が すっかり蒸発しました
ぬけがらの私の みぞおちを
糖蜜が ....
みいちゃんは
働きながら
ずっと両親と同居して
後半二十年は介護して
ようやく見送りました
パラサイトシングルとか
親離れできないとか
みいちゃんのことを
呼ぶ人もいたようです
....
舞台中央に椅子がひとつある
男がひとりすわっている
男は語りはじめる
おまえさん牛は好きか
そう、おまえだ
牛は好きかと聞いているんだ
牛はすばらしいぞ
何しろ奴ら
....
僕たちは夜を旅する
孤独にむかって囁き続けるナイトバードなんだ
代償なんてありはしない
ささくれを癒す為に空を飛んできた
まぬけなオウムの類だが
ちっともいいことなんてないって言いな ....
近しい人の幸せな報告に
心が温まる
なにやら淋しくなる
羨ましく思う
心から祈る
突き合わせた笑顔で作られるこの熱気には
様々な想いが渦巻いて
纏わり付い ....
{引用=進歩は昔話を撲滅する}
あんたの事は食わしちゃる
あたしが部屋で何しとるかは
詮索せんといて
覗きでもしたら出て行くきね
女房のオツーはそう言って襖を閉め
日がな何事か ....
ほめられたくって
書いたってしかたない
ほんとは少しは
ほめられもしたいけど
自分はこんなふうだった
そう 残したい
長く生きるかもしれないし
そうじゃないかもしれない
....
綿の飛び出た座椅子には
歯抜けの鼠がねむっている
尻尾もない、毛もない鼠が。
やがて
見つめているうちピクリと動いた
そしてその日
僕は、なにもできなかった
ある日、{ルビ自我=イド}の底に溜まった汚泥を掻きだしていた。
その泥を天日に干して固めたレンガをぶつけあう祭りがあると聞いた。
延々と風景のガンマ値が上がり続けて
まっ白になってな ....
深海に生きる魚族のように自ら燃えなければ何処にも光はない
大島渚自筆の会葬者たちへのメッセージがこれだ
中学生のころビートたけしが出ているということであの映画を観に行った
当時の映画 ....
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