冬の蛹が、
春になると、
蝶になって夏に舞う。
心のなかは、
なにもなくなって
風が吹き抜ける。
それでも白いワンピースは
新たなる期待を孕む
生まれては ....
時代遅れの男ブーム
ヒヤシンス
強力に上目使いで
我を見つめる花
急速冷凍と氷畑
どちらが早いか
徒競走しよう
水溜りに埋もれた嘘を
ゆっくりと取り出す刹那
亀の形に成るでしょう
....
頭に計算機を詰め込んで
公園でチャンバラごっこをする
ヒーローたちは
世界を救うはずもなく
砂の城を蹴り崩した跡に
旗を突き立て
誇らしげに胸を張る
「ひとりはみんなの為に、みんなは ....
一面の雪の朝
私は
兄とかまくらを作る
田んぼ中の
雪を集めて
できました
私たちの秘密基地
しゃがんで入れば十分余裕
通学路からも
はっきり見える
不格好な雪の家
それ ....
ごはんできたよ と 声をかけても
テレビから離れられないでいる
夜の器に盛られた農場は テーブルの上で
少しずつ ふけていく
ブロッコリーの木に
間違えてよじ登った子豚は
降ろ ....
ところで君がいなくなった後の
この世界についての話をしておこう
君がいった後
ぼくらはあのマンションを引き払って
少し不便だが
旧華族の邸を改装した
郊外の物件を購入し
そこへ移 ....
時々思い出す
二段ベッドの下のうすい隙間に
うつ伏せになって潜りこんでいたこと
とても気持ちが落ち着きほっとする
目を細めると
奥の奥へその先があるような
私はぺらんぺらんになって
....
若者が過去を振り返るのは
夢を実現するため
老人が過去を振り返るのは
夢を楽しむため
でも
若かった過去へは行けません
***
別れるまで一度も名を呼ばれなかったからっ ....
かわいい字で書かれた不幸の手紙に怯えている
光のあたらない
すみっこにこそ
きらりと光るものが
ひそんでいる
目立たなくても
すみっこの力を
侮っ ....
ふしあわせは
雨のように降ってくる
不穏な空から予定通りに
稲妻をともなって突然に
傘も持たずに
ぼんやり歩いている時に限って
ふしあわせ予報ははずれて
私の思考と良心はずぶ濡れ ....
それは 在り難いことだ
現役の引退と同時に
人間関係がデリケートに蒸発する
事は
それは 在り得ないことだ
卒寿の独り暮らしと並行に
四次 ....
外葉をめくったら
白い小さな亀がい
て、脱皮直後の未
防備ゆえのその純
真な甲羅にしばし
じいっと魅入る、
命あるものはみな
平等にそんな生ま
れたてがあった。
....
それは今川焼や大判焼と呼ばれるもの
その店というか屋台のような小屋
初老のおじさんとおばさんが
たこ焼きとたいこまんじゅうを売っている
一個八〇円するけれど
いつも五〇円になったり
....
今日も街を行き交うひとびとの影を踏んで歩く
一瞬にして微塵に還るもの
止めどなく細く長く伸びるもの
軽く薄く風に舞うもの
ときどきそれさえも無い人に出会うが
それも街の雑踏の風景の一 ....
大人は大事な言葉を、
二言、三言、捨てる覚悟で
生きていかなければならない
電車のアナウンスは謝りすぎている気がする、
今日は気になって、
雨が降っていて
好きだとか大事にするとか守るとか ....
ねこ はしる
港の魚をかっさらい
いちもくさんに
かけぬける
ねこ はしる
ねこ はしる
あの娘のおしりを追いかけて
わきめもふらず
かけていく
ねこ はしる
ねこ はしる ....
背中トントン 頭なで
まどろみ とける 春の雪
小さな布団 あたたかく
君の寝息が子守歌
それからオトン 眠ります
二人の歌う子守歌
過去への扉を閉めて 歩み去った
思い出を 燃やしている その日までの
カレンダアに 印を付けるように
胸をつつく 夢の欠片を夜の河原に捨てる
葉を落とした 桜の小枝が 空に描く
....
スルーしたいラブレターに返信用切手
君が左腕を僕に差し出す。
痒いの、掻いて
君は右手が使えない
痒いのだが右手で掻けない
僕は指を立て君の左腕を掻く
とっても白い左腕を指で掻く
掻いている間中
....
さざ波のような四年間が
女の心をくすぐり始める
いかにも、春の風の様に
泣いてもいい
涙さえあれば存分に泣け
抱かずにいた証が欲しい
あなたから、あなたから
さようならは言わない、な ....
おびただしい雫という雫が
都市と都市の間で あらゆる物と物の間で
たがいに伴を呼ぶ
満月のような視座で みえないその糸に命を与えようとしている男のポエジは
蜘蛛の意図のよう
雫と雫がつながり ....
おでこに記念切手貼って口頭で伝えている
私はちょっと出られないな
きっと
出られない
今さら
とってつけたように
気づく今までは
出られるって信じてたのか
出ようとしつづけることに
意義がある
なんて思っていたか
....
曲芸師は球形の虚無で玉乗りをする
奇術師はハットから鳩形の虚無を取りだす
雨の日に、僕は雨粒の音を数えている。僕が数えられるよりももっと速く雨粒は降ってくるし、遠くの雨粒の音はよく聞こえない。それでも僕は雨粒の音を数えている。自分の感性の平原、その静寂に一番響く ....
もうこんな季節だねと
誰かが言っているうちに
時は絶えまなく流れているから
いつも気づく頃には
紅葉は枯れ
雪は解け
桜は散り
蝉は死んでいる
この瞬間は
すぐ枯れて解け散り ....
平和3
手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない
人は闘争に美を見つける
....
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