国宝館に展示された
古の絵巻に描かれた
松林の青空を
千鳥の群が
羽ばたいていった
国宝館の外に出て、仰いだ
古の都の青い空にも
千鳥の群の
後ろ姿は消えていった
....
朝焼けに染まる海
昼の青空の日に{ルビ煌=きらめ}く海
夜も更けた月の光を映す海
時に凪いだ{ルビ小波=さざなみ}は
時に唸る大波は
絶え間ない交響曲を奏でる
小さい ....
夜明けを別天地で迎えた
操気質なカモメの
オールドファッションドーナツ中毒の
症状を緩和するために、
蜂蜜酒を使った
サラマンダー式瞑想術の
やり方の書いてある
シルクのドレスを探し ....
言葉巧みに語れなければ
分かったことにはなりませんか。
上手に形にできなければ
想ったことにはなりませんか。
確かに知識は大切です。
豊富に越したことはありません。
伝えたい想いに ....
自暴自棄の時期尚早
思いの丈も寸足らず
吐き出す想いに嘘こそないが
仕上がる言葉は模倣品
ちっとも真に迫りやしねえ
見えない敵なら適当に
偶像見立てて妬みましょ
蹴落としタンゴに卑下 ....
そうして僕は
君の肢体に
必要以上の嘘を吐く
生きている
死んでいる
育っていく
腐っていく
うねうねと
まっすぐに
はじらいもなく
慈悲もなく
まるで天女の装いで
....
「柿の実を全部採ったら だめなんよ」
そう言って
祖母は
せっかく実った柿の実を
いくつか
まばらに残しておくのが常でした
ひとつは
お腹をすかせた小鳥のために
ひとつは
木登り ....
線路の上を
ただひたすらに走る毎日は
それが
仕事とはいえ
時につまらないものに
見えてきます
そんな時でした
あなたに出会ったのは
午前八時三十五分
あなたは向こうから
....
左うでをかばって働くから右うでのほうが汚れていたいつも
「どっちみちかなしいよ」
どっちみちかなしいのだ
泣くほうも泣かされるほうも
でもどこかでだれかが
重さをはかって得を ....
部屋で寝転がり
凹凸のある真白い壁紙をじぃっと眺めていたら
いてもたってもいられなくなり
クレヨン屋さんに走る
奥行きの広い店内には何百色ものクレヨンが
一色ずつ一本ずつ
天井まで透明 ....
ノアが神様に言われて地上の全ての生き物を
つがいで舟に乗せ
新天地を目指し幾日もかけて
新しく住む地を探していた時に
初めて地を見付け
それを知らせたのが
鳩だったのだよ
お父さんは ....
海よ
お前が産まれたのは
イブの日なんだよ
お腹を痛めた母さんは
たった一人病院で
お前を産んだんだよ
父さんは
知らせを聞いて
すぐタクシーで病院に
向かったのだけれど
間に ....
誕生日の夜、いなくなりたいと言った
それは嘘だと知っている
....
殻を破った指先が
外気に触れて凍りつく
口を広げる卵の亀裂の間から
盛大な湯気が上がる
でてきた
でてきた
やあ 冬景色にようこそ
素っ裸の体に鳥肌を立てて
君は生まれたての大 ....
死期に近づく夜がある、のさばって、蔓のように
暗闇に絡まるわが身を夢想しながら
古い漆喰の壁がこぼれる音を耳にするような夜が
チェコスロバキアで小型旅客機が墜落して日本人旅行 ....
八方塞がりとは
こんな気持ちをいうのだろうか
こころの深い奥で
前に進もうとしても進めない
強い何かで ....
海まで自転車を傾けながら走る
耳のわるいおじいちゃんが耕している田んぼを通る
民家の建ち並ぶ屋根のうえには雲が光と競争している
太陽がぎらぎらと当たって汚い川が美しく見える
静 ....
書類を見ていると 何か
忘れものをしているような気になってくる
言葉の海に眠る時間
私の思い出さない何かを
確実に彼らは知っているのだ
紙の上に印字されたメタ・メッセージが
私をひきつ ....
前世はおむつでした
その前は
朝顔を咲かせた藍染の浴衣でした
かすかに覚えているのです
あなたと
一緒に
縁側で線香花火をしましたね
華々しく燃えたあと
ぽたりと火種は落ちて
こ ....
熟練工は風雨から保護するため 心に幻想という漆喰を塗ってくれました
漆喰は乾燥した日が続くとひび割れをおこします そのまま放置すると建物が崩壊してしまいます
冬場は特に危険です 気を付けましょ ....
{画像=120115084740.jpg}
なにかを磨こうとして
氷柱になった
なにかを磨こうとして
尖った剣になった
強く生きていくには
どれだけ磨けばいいのだろう
強く ....
冬の桟橋
わたしは車の中で
あなたの後姿を見ていた
象のような冷たいハンドルに
両手を置いて
わたしはあなたを見ていた
ワイパーが
幾度となくわたしに
顔を近づけて
こすれるゴム ....
母さん
随分あんたと
話してないな
いつも 棘を踏むような気分にさせられるから
母さん
今日も元気に働いてるかい
俺のいない町で 遠い空の下で
自由を楽しんでるかい 暴君だった親父か ....
貴方の下に
飛んでゆく翼を
私に下さい。
貴方の足を洗い
貴方の下で使わして下さい。
私は貴方の下部です。
貴方は私の主人です。
何でも言う事に耳を傾けます。
私に命をお与え下 ....
今日の昼ごはんに
ピザを焼いた
冷蔵庫の片隅で
あやうく忘れられそうになっていた
正月から持ち越しのハムを
細かく切って載せてみる
魚焼きグリルを予熱する
五分ののちに
三日前 ....
さしすせそ
が
歯に沁みる朝
凍ったままの思考を
ポケットに突っ込んで
背中を丸めて歩き出す
たちつてと
が
舌で弾けない昼
すっからかんの頭に
ラーメンをすすり込 ....
そう、
昨日は
冷たい雨がふったけれど
今日は穏やかな太陽が出て
きみの背中を温めている
そこにだけ、ぼくは手を載せている
取るに足らない日曜日の
....
やあ
何も愛してないぜ
俺は今 何も愛していない 何も
鎖にぶら下がった流しの栓みたいに 底なしの穴の上で 所在無げ
黒いゴムの顎先から 滴が垂れる ゆっくりと
涙型に結ばれた水滴が ス ....
浜辺にて、両手で掬った
無数の砂に
たったふたつの光った粒は
あなたと私
無限に広がる宇宙の闇に
ぽつん、と浮かんだ地球の中で
たまたま出逢った
あなたと私
た ....
なかなかはいはいが進まずに
布団に顔を埋めた{ルビ周=しゅう}を
仰向けにしてやったら
全身を{ルビ真赤=まっか}にしてうああ、と泣いた
周は、悔しがっているのだ。
夢中で声援 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476