未だ幼木の胡桃の木の後ろには籾乾燥施設があって
霧はそれらを囲むように包んでいる
疲労という疲労は
体のあちこちに固形物のようにしこりとなってとどまり続け
筋肉や腱を蝕んでいるような気がす ....
(妻を忘れるため、父は随分前に出かけた、)
水分をかんじなくなったという母は、
乾燥を終えて、洗濯機から飛び出すとうめいな犬たちを、
外へ放ちつづけている、
犬たちは、夜中に作られて、朝に ....
朝から雨
雨はすき間だらけ
貴女へと降りそそぐ雨
雨傘の下の
雨漏り
或る足音を乱す雨
アルコールを和らげ
甘く染まり
悪童に遊ばれる雨
雨に出会うと ....
good day
明るい雨がさらってゆく
うしろむきの心
光をこぼしあう緑の葉はさざめき
笑う
傘なんかいらないじゃん、と
梅雨明けはまだ先
飛行機がゆく音は
雷鳴 ....
図書館へ続く石の階段
日陰には
きのうの命がただよっている
雨ののち
ひごとに深くする手鞠花の青
カタツムリは絶滅したんだろうか
遠い子守唄
世界に向けて閉じられた手提げの中はやすらかに ....
大きく裂けた口のある白い顔で笑い
煌びやかな衣を纏った記号が宙を行き交う
吊るされた語彙は真夜中の死体のように重く
暗い羅列が濁点だらけの股間にあった
大好きなキミの瞳を輝かせたいから、
....
いまひとつ燭光が足らんのじゃないか
どれくらいと返事の代わりに訊かれ
冷めた皮膚が
透ける
はらり
吹き消してもっと
ください言ってトランク潰し倒れ臥し
吸いつくす限り
風に焼けた ....
この世にやってきて
三ヶ月ほど経った赤ちゃん
乳しか飲んでいないのに
ぷくぷくと太った哺乳類
腕に輪ゴムをはめたようなくびれが出来ている
そこに分け入ると
赤ちゃんはわたぼこりを隠していた ....
何故でしょうね
掌の上で独楽が、止まっているように回って
視線をさらいますけど、波のめくれや
バケツの蟹の回転はどことなく
記憶に繋がっているように眺めています
流しの栓を抜 ....
本を読んでいるうちに
気づいたらたばこを吸っていた
ひょいとスマホを持って
アルペジオのひとつに溶けて
忘れていたのだ
心臓が打ちあきない今のこと
サイレンの音が
い ....
つぎから
つぎに
つめを下にした
指が
降ってくる
ただしいことの
降灰
ただしくない欲は
ロケット花火
高層12000階のすみかに
移り住んでしまって
もどるには
地 ....
食べたもので人の身体は出来ています。
そんなことはいちいち考えずに
その日の風まかせで
献立を決めてきた
心は何で出来ているんだろう
手元が狂うのは永遠の一瞬
包丁の刃で切り落とし ....
夜の耳工場で働く小人は
めっきり上がらない時給に
ぼやきながらも
今夜も対の耳を作っています
夜は短いようで長く
或いはまた短く
それは人生もおんなじだね
耳を買いに来る人は
そん ....
森を下る
雨粒は
木々の隙から落ち
葉を伝い
流れ集い
地をじっと濁す
私は抗いたい
貪り尽くしたい
見上げても
どうともならない
午後五時に
叛心は
裂かれた潮の ....
蛇が布団の上で死んでいる。いつから死んでいたのか知らない。腐ってはいないが干からび始めている。とても大きな蝿が一匹ぶんぶんと飛んでいる。開け放しの窓から風が激しくて臭いを感じることができない。反故紙が ....
ぎゅっとにぎった手のひらに伝わる金属の鎖の冷たさ
そっけない硬い木の座面
離してはだめだよ と降ってくる、声
靴底で蹴るとざらっとして土埃
膝で漕ぐたびに
行ったり来たり
ふりこはゆっくり ....
音楽を捨てていた汚い目の猫がよみがえった
なにもない道をゆく
土を被った愚かな感熱紙をぐしゃりと踏みつけ
袋にぎしぎしと詰まった賢い椿のにおいを無視し
ようやく彼は美術館についた
風景の ....
花のことばを受けとった
これで こころは繋がるだろうか
明るいからひらいたよ 暗くなってとじた
思えば散ってしまうから
窓のこちらに棲んでいる
冴えた夢 透けはじめる頃
言いかさねるお ....
ああ 三年ぶりの頭の爽快
傘を差さない彼女の夢のみが僕を捕らえるけれど
穴のない血管と青空と
正しい脈拍があるからぼくは大丈夫
ぼくは精神科病棟を横切って
新しい神保町へ
勢いあまっ ....
生身のひとが
都市に残っている噂とは逆に
鉄路を踏んでゆくと
霊とすれ違った
稀にたたずむ
かつてのひとの家宅は
いま わたしの背丈を遥かに超える蔓草が
幾世紀の愛憎を晴らすように
....
もうすぐ花火がはじまるぞ、と
キミが誘うから
ボクは藻の家から出た
どんよりした空を見上げる
まもなく雨粒が落ちてきて
はじけて円を描いて消えた
ひとつ、ふたつ、みっつ、
数えられたのは ....
水いっぱいはった洗面器に
色とりどりのおはじきを沈める
ぽちゃり 違う
ぽちゃり もっとやわらかく
水は硝子がらしくゆがんだ環
山の懐にしまわれている
囚われたつばさの自在を浮かべる
....
ゆるゆるとながれている
今もながれつづけている時間を
ふいにとめた とある春の庭がふたつ
となりあっている
ひとつは住人によってよく手入れされていて
赤いチューリップが笑い
黄色のパンジー ....
竹箒の音に注意せよ
すこし背骨の曲がった女子高生に注意せよ
幻と語らう男の笑い声に注意せよ
木漏れ日のような鉄の反射に注意せよ
返事をしないあなたの母に注意せよ
積み上がった本の数に注意 ....
意味を忌みimitation
忌々しい今のimagination
今際の際まで
極まるまで
燦くまで
Reaction。
{引用=
まず、やらかしたことをはなす。それでいいだろうといい、窓の外の空き箱をみていた。何処かの国ではトムソンガゼルが興味を惹かれて突ついているのだろうか。
....
あの壁と、この壁は違った
透明な呪詛だと思えば、
(知らない舌)
やがて、幾度となく数える
花のありかのことを
遠く、広い、呼吸は
(さみしいだろう)
背景に描かれたものたち ....
叫びのない窓が額装されるまでに
まずは県民会館で
エッチングとして公表された
田舎者たちにかこまれ、
曝された色彩が
夜ごとかれらのなかで這入って
やがて追放された
....
テーブルの上で
蜜柑が燃えている
そのふところにたたえた水を少しずつ手放しながら
冷たく燃えている
つやつやとした
ともしび
坊やが食べこぼした
アルファベットびすけっとのかけらたち ....
市場で首を平らにひきのばした
音がみだれあう青
鳥を目で追いながら
自分も 空がとべる
もう 浮かびあがると
信じられなくなった日のこと
何となく思いだしている
からのポケットで ....
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