白樺の林を抜けるととても小さな家がある。
初めて出会った僕らはそこで小さな約束をした。
暖かくなったらまた会おう。
毎年初夏になったらまた会おう。
三度目の初夏僕は彼女にプロ ....
なんて晴れてるんだろ今日
なんで忘れてんだろ約束
灯台目指して歩くはずだったのに
こんなとこで死にかけてるなんて
太陽よりもっと赤いものは
たぶんトマトだ
月をみながらつぶやく
....
私は誰に会いに行くのだろう
誰もいない夜
街を知らない月のように
雪の冷たさの青の空
桜のつぼみに咲くなとわめいてる
私を殺していたあのころ
なんで
好きな人は働かなかった 家事もしなかった 絵だけ描いてた
絵は息をのむようなやさしさだったのに
....
ひなげし 石ころ 傷んだ人参
これがちかごろのわたしだ
とにかくこのゆがんだ町から出るには
靴をはかなければならない
戻ろうとふりむけば世界じゅうの鈴がなるし、
出したはずの手紙で抽斗が ....
久しく遠ざけていた言葉
自分と他者を比べてしまった時
根底を揺さぶられ
成す術もなく
流れるがままの涙に身を委ね
平常に成るのを待つしかない
素晴らしいものに出会ってしまった
....
復活した生命の息吹
秘密の花園で花を摘む乙女たち
老人は詩人を気取って歌を詠み
女は恋に焦がれて気がふれる
青に透ける瑞々しい世界
春とは若さの象徴だ
まるで天国の門前で
佇 ....
針穴に糸が通った遠い日から
ずいぶんいろんなものを縫ってきた
時には
縫われることを嫌って
ぴちぴち跳ねて
てんでに海へかえってしまう布もいたけれど
人の営みのかたわらに
一枚のぞう ....
生まれてきてからこれまでの
血の成長を袋に詰める
明日には収集車が焼却場に運んでいく
つい最近知り合ったばかりの
知遇を本棚にきれいに並べる
いつの間にか本棚はいっぱいになった
拠 ....
瞬きしない癇癪持ちの貴女が遅れて笑ららう
瞬きしない癇癪持ちの貴女が遅れて笑ららう
瞬きしない癇癪持ちの貴女が白く透き通る卵を一粒一粒数えて笑うように洗ららう
氷山の如く切り立つブラウス ....
東の果てから顔を出す太陽があなたの眼の色と同じでよかった
まるくて熟れたあんずの実をとなりに並べたら、あなたとあたしは似たもの同士
果汁の一滴も、種まで残さず食べ尽くしてくれませんか
大丈夫です ....
旅がもし日常の中に潜んでいるとすれば
僕達は何処にもとびたてない愚かな鳥にすぎないのかもしれない
月の満ち欠けにいのちをふきこむものが風だとしたらならば
僕達の望楼は遥かな砂漠の果て ....
潮風を浴びている
白い丘
黒い岩肌、
なめらかな、
すべるように飛ぶ鳥の
くすんだ青の骨
、風に中指をのばす
調律師はもうなにも
弾かなくても、それが見えた
やさしい音楽 ....
波によって作られた影のようなものだけがそこに
子供の手を引いた人 そして
オークションで落札したコートを
私は着て歩く 他の誰に見せるというわけでもなく
老人の目をして 行く宛をなく ....
崖を巡る
白い岩の径
ふたつの海の
ひとつは黙っている
水の底には花が見える
崖上からは羽に見える
降り来るものには
まばたきに見える
欠けた色の響きの ....
[line]
彼女が不可思議な行動を見せるようになったのは僕たちが同棲をはじめてから数ヶ月ほど経ったころだった。ある朝、肌を逆撫でるような寒気に目を覚ますと、あけっぴろげにされた窓からあざやかに ....
失敗の多い人生を
こんなもんじゃないって
生きたこともある
コップは溢れそう
こんなもんじゃないって
もう一度思えるか
街道のハナミズキ
朝の青黒い風に揺 ....
ふりをしていた
やさしいふり
あたたかいふり
幸せなふり
がんばってるふり
愛してるふり
それから
もう
私の隣に誰がいても
動かされることは
たぶん
ない
....
時が静かに化粧をして私に迫ってくる。
時の誘惑は川沿いに咲く桜のように美しい。
誘惑を美しいと捉える心は不純であろうか。
年を追う毎に時の魅惑に囚われてゆく。
一瞬で燃え盛る ....
頭の内側から幾つもの瞳が僕の心を覗こうとしている。
激しい頭痛は時の行方を激しく見つめている。
これは夢であろうか。
僕には火炙りにされた女の姿が見える。
今ここに生きる事に ....
真昼に地を這いまわるいくつもの影を私は踏めずにいた。
流れゆく時までも私のせいで歪めてしまうかもしれない。
私の病はすんでのところで踏みとどまっている。
消えない記憶は墓場まで持って ....
ゴミ捨て場に群がるカラス
性質の悪い笑みを浮かべる人間よりは 美しい
羽根が 七色に染まる度 描く曲線は
一度 空へと舞いあがり
再び 地上に 降り注ぐ
天使の梯子のよう
細や ....
春の、ほどけた日溜まりのなかで
そよそよと吹く風の流れを、産毛に感じ
周りから、朝露で蒸れた草木の香りが漂う
ゆらゆらと、揺れる、かげろう
その、見えないところ
沢山の透けて、輪郭の ....
世の中の気に入ったものすべてを集めることはできないが
ときおり巡り合う素敵な情景や言葉を僕の何処かにスケッチしておこう
ときにはロボットが生産ラインで溶接した鉄板でできたちいさな車で風 ....
よるになると
ぴい、と音が鳴る
この部屋のどこからか
耳を澄ませる
出どころを
さがしあてようと
眼をつむり
耳だけになってみる
飼ったはずはない
けれどそれは
とりのこえに似てい ....
冬のあいだは閉じていた即売所に
春の野菜が並ぶのをみにいった
空に白い梅の花が
燃え上がるように咲いている
ハンチング帽をかぶった老人が杖をつきながら
老犬とゆったりと歩いていた
....
歌う汽笛は下手くそだった
生命波打つ、きみどり色の絨毯の上を航海する船
柔らかな日差しが撫でるように氷を溶かすから、行き先はどこまでも広がる
細かく枝分かれした新芽、太く根を張って、遠くを見通す ....
郷愁を呑む
換気扇は回り カタカタと音を立てる
朝 起きがけの夢の跡とコーヒーの味は苦い
悪友の葬儀は明日への吉兆
出かけるのは僕
喉元を腫らして タテガミのように波打つ髪 ....
表にも裏にも
鏡のついた手鏡を
ふたつの指で廻しながら
光ははじまりと終わりを行き来している
横の波が
縦に重なり窓を覆う
外の冬を隠すように
布の鳥の羽音が積も ....
夜は絶え間なくやって来るこころの襞に
おとことおんなは何時もばらばらで
それは覚束ない幼児のあゆみのようで
ときに滑稽を誘うものかもしれない
きのうの残骸からきょうが算出されるわけでも ....
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