夏
母が自分の年と変わらない少女の顔をし
祖母と写真を撮ってくれと言った
今も見直すその写真に二人の入れない絆や愛情
を見る
その何とも言えない暖かさが何だか悲しい
何だか苦しい寂 ....
ババアばかりのメイド喫茶で2階級特進
素敵な比喩が思いついたと
受話器にむかってささやこう
部屋を出る
大義名分ができた
僕たちは不自由な生き物
理由がないと
自由に街を歩けない
街は雨
雲からワインが ....
気がつくと
外は明るくて
蝉が鳴いている
窓を開けると
空は白く
蝉の鳴き声は透き通っていた
外は明るく 太陽が見えない
鳴き声は聞こえ 蝉が見えない
感じているの ....
とおく とおく
はじまりのそらのふちに
宇宙船が
ひとつ
畳張りの
宇宙船の大広間に
ちゃぶ台が
ひとつ
とん、と
置かれた湯のみには
栄養補助用流動食B1-023(覚えて ....
おかあさん覚えていますか
私が生まれた夏の夕暮れ
たった一枚残る写真に
疲れ果てやつれた様子の
寝巻の母に見守られ
同じように疲れた顔の
小さな赤ちゃん
夏のお産は大変だったことでし ....
街角で珈琲お嗜みのご婦人は
泥を飲んでる人生の行き詰まり
愛を飲むもの涙も飲んで
嘘をつくもの笑いを飲み込む
紳士は何を飲み込むために酒を飲んでることだろう
....
どんなに優秀なものも
優秀ではないものも
燃されてしまえば
灰になる
どんなに貴重なものも
貴重ではないものも
燃されてしまえば
灰になる
風に従順な踊り子となって
....
絶えず鳴り響く夜を脱いで赤い死神
壊れた肩で投げた愛そのまんま
夜の{ルビ静寂=しじま}が
私を思考の世界へ誘う
仄暗い豆球がシーツの海を照らして
波打ち際には夜光虫のように
ラメ入りマニキュアが光るから
私の思考回路は小舟に乗って
大海原へと漕ぎ ....
秋も冬も春も
歩いたね
五月も梅雨も
歩いたね
生き物たちが
呆気にとられて
悲しみに暮れている
ひとが生まれるということは
たぶん津波にのまれるこ ....
1
前へ逆らってくるものに濁った静寂を飲ませよう。人間は平等な墓石の上で草になるのを待っているから。広がって他を照らそうとするものをそれ以上の絶対的な光で鎮めよう。あらゆる広がりは人 ....
夜の帳に溶け込んだ心情が 淡く病む。
シタールの音色が鋭く僕の喉を刺す。
震える手で連ねる恋文は
異国の呪文のように匂い立つ。
ああ、夭折した画家達よ。
あなた方の創造した世界はなん ....
カラフルな欲望の中から一番鮮やかに見えるものを捨てる。
トーンの重い音楽の銃口をこめかみに当て 弾く。
頭は真っ白になり、口から真っ赤な泡を吐く。
一瞬軽くなった体は宙に浮き、その後いびつな形の ....
見せびらかす愛なんて くそっくらえ
語る愛なんて 持ち合わしちゃいねー
でも感じあう愛なら、あるぜ
{画像=140720232423.jpg}
言葉に傾き
ほら歩く姿に
傾きがありませんか?
真っ直ぐ歩いて来た
自分はそう思って来た
でもある時
人に言われたんだ
....
その手の中に花を握って死体
産声のなかで
ひとりの娘が母に変わる日は
生命にまつわる大切な記念日
わたしのためには
何にも起きたりしない平凡な日でも
見知らぬ誰かには
たったひとつの日
雑踏のなかの
あり ....
シャツの色をわすれた
自転車を仲よくならべた
川沿いの道にいつもあった
だれのものとも知れないさびしさ
三日月にすこし濡れた
きみの膝こぞうをそっ ....
飲み干したコーラの瓶に
ロケット花火を立てて火をつける
爆発したらどうしよう
私は怖かったけれど
夏のあんちゃんは張り切っていて
怖いとは言い出せず
耳をふさいだ
そのいくつかは
湿気 ....
都市の迷路に波打っている緑の原点たち
原点たちはどんな香りをも演繹せず
冴え渡ったおしゃべりの隙間に破裂して飛び散っている
おしゃべりは思想という場違いな花を排水溝に流し続け
ビル ....
許せ ただ一途に夢見た道を進んだ幼き我よ
笑え 自ら選んだ世界に敗北したか弱き我を
眠れ もはや立ち直る気配もない我が心よ
陽が昇ろうと
風が吹こうと
暗く静かな
隠れ家にて
光 ....
きみの手を想う
華奢でちょっと小さめだった
骨折して松山の病院へいっしょに行ったときも
きみの身体の一部が壊れたことに
かなしみを覚えていた
きみの替わりに朝
新聞配達をやった
....
7月
銀と銅が錆び付いた海
夜の埠頭は鉛の影をちらつかし、張りつめられた石板に重奏が刻まれる
圧力で押しつぶした風/
/蒸れを嫌う羽虫
ヘッドライトの灯りが波を照らす/閉じた垂直窓
....
望遠レンズから素足のダイヤモンド
純粋遊離線の導くままに
此の世の座標上から二人して逃亡しよう
巨きな万華鏡の中にしつらえられた
夏迷宮へと入り込んで
光る樹々と湖や
虹色の長い夕映えや
大粒の星座の中で
思うさま誰から ....
今時手紙だなんて
何の意味があるのか
下書きまでして
何の意味があるのか
800円もするのに二通しか入っていないレター・セットに
何の意味があるのか
細くて伸びやかな青いインク ....
何度、心から良い人になろうとしたか
ちゃんと話を聞こうとしたか解らないのに
カスだからかな スカスカに ぬけてしまう
重い漬物石のような思い おなさいころからの
もっとも親しい人たちから ....
夜の公園に
惹きつけられるように入る
煌々と光る場違いな電灯
木々の手前にあるブランコを見つけた
オーケストラが始まる前の
各自がバラバラの音を出すチューニング
管弦のラや
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476