赤いボールペンばかりインクがなくなっていく
これでもう4回目の買い物
忘れない様に赤のインクを握りしめてレジへ
研修中のお嬢さんは
奇妙な顔をして作業をこなす
3つパックのプリンと無糖の ....
ある晴れた日に
平野にあなたが帰ってくる
自転車を避けながら
国道の渋滞にめまいを覚えながら
膚がかさかさになる家に
丘からそれを見つめている
思わずふたりは
....
零れそうな雫に
思わず伸ばした手を引けず
しとり、と潤った手の平が
少しくすぐったい
いずれ
ひたひたと満ちる朝に
夢の始まりと終わりが
分からなくなる
君の夢の終わりが
僕の夢 ....
夜が割れ
なまあたたかい風が降り
明日の朝を見せ
ふたたび閉じる
標は暗く
音は見え 川は見えず
小さな鉄の声が灯り
水に映る夜を扇ぐ
三角の紙の群れの ....
うれしいよぅで
あわれのよぅな
卒寿を過ぎた おひとりさまは
手足を動かす 園児のよぅに
(わが子か 孫にも
等しい年代の
....
整いすぎた言の葉に揺れる心は幼くて
何を何の為に信じるのかすら分からなくなる。
今日の夕暮れは冗長だ。
そのうち私は僕になる。
さなぎが蝶になる季節。
過去の不幸を乗り越 ....
シンクの窓から
光が生まれている
質量はないが
手触りは淫靡だ
わたしたちは渇きやすいから
眠りの岸辺に
傷だらけの素肌をさらす
思い出せない言葉に囲まれ
猫の亡霊を見た──まひ ....
四月の水
五月の水
油 月の輪
空を刺す虹
指先のひと粒
星おおう粒
氷と枝 雪と枝
はざま はざま
空のぼる空
あなたは手
あなたは砂
あなたは ....
きのうの猫のぬくもりや
おとついの雨のつめたさや
ずっと前
ぼくができたてだったころ
たくさんの小さな人が
かわるがわる座ってゆく
にぎやかさや
お腹の大きな女の人のついた
深 ....
一列のチューリップは
とりどりの春の音符である
そのメロディーと
昏い心臓を嵌めて歩いている私のリズムとは
どうしても
とめどなくすれ違ってしまうのである
それはひとつの水だった
ある日流れるようにわたしに注ぎ込んだ
それはひとつの風だった
吹き過ぎてなお心を揺さぶるのは
少女は春の花を摘む
長い髪を肩に垂らし何にも乱されることもなく
....
りんごの木の枝に
とまっているのは
葉っぱかそれとも
飛ぶ小鳥
りんごの木の枝に
とまっているように見えるのは
冬の間に吹雪にまかれ
梢近くの枝に刺された
ぼろぼろ ....
羽ばたいていく緑の葉たち
大きな坂の源にはくちなしの花
過ぎ去った漂泊の日々は今もよみがえり
労働の岩肌を静かに洗っている
欲するものはほんとうに欲されているのか
判らずとも雲は精密 ....
飼い犬は
トイレを躾されても
散歩先では自由だ
飼い犬は
公園のトイレが混むのを見て
人間はなんて不自由なんだと
思っている
人間は
言動を躾されても
インターネットは
ト ....
つばめがくるから猫もくる
ひながかえればへびもくる
うまれて
くわれて
私はただそこにいる
さくらがさいてよろこんで
花がちって人は去る
おなじ木をみる私だけ
毎日そこを通る
....
かばんの中に入っているのは
読みかけの文庫本
かばんの中に入っているのは
猫の形のボールペン
かばんの中に入っているのは
誰かにもらったネックレス
かばんの中に入っているのは
誰かにもら ....
冷凍フライドポテトを油で揚げる
わぁお店のみたい
美味しいね
なんだかとても評判がいい
ちょっと複雑
前にもこんなことがあったっけ
いつもは手作りするマーボー豆腐だけど
レトルトマーボー ....
夜の街の海
壊れた灯り
階段は風
波の底の星
剥がしても剥がしてもきりが無く
いつか置き去りにされる光
野になるがいい
たなびくものすべて
ひとつの息の ....
音を立てながらわたくしたちは
知らない間にわたくしたちの
擦れるせいで消耗していく
隣のあなたの
腕や
足や
首や
呼吸に
錆びれた血が混じり
滲んでいるのは
此処のわたく ....
そらの匂いが
あじさいの花に
かぞえきれないかげを穿つとき、
虹の残り香が めをさます。
こどもじみた言いわけみたいに
するり、と
きえてしまった
あるはずだったものたち。
( ....
あなたはわたしのなかにいる
あなたの肌にはその日になると
青や緑の痣が浮かぶのだと
教えてくれた
うごかない左腕で
必死に笑ってた
じっと見つめるとちからのぬけた顔になった
それ ....
あなたはちっともうたわなくなった
かわりにわたしはピアノをひくよ
それにあなたは笑わなくなった
かわりにわたしはテレビをつけた
あなたはぜんぜん眠らなくなって
かわりにわたしがみる夢 ....
ミサイルの憂鬱
移民も受け入れていないくせにトランプを口撃
どこか遠い憂鬱
焼けただれて
ぶっ壊されて
殺されまくって
きみが親切なこころ発揮できないようにされて
....
遠くから足跡が聞こえる
闇の中で独りでいる時、
その足跡の音は社会の目線に聞こえる
街の空気は有料だ
生きる為には対価を払わなければならない
自然に生きる態度は身勝手な若気の草木に似てい ....
錆ついて 細く小さく 縮こまった
わが古家を 見くだすような
裏の隣りは
新築された豪邸が
....
行き先のないお前の虚像
とどまることを知らない水
不器用に溢れるのを忘れて
拒絶された命の河に埋もれる
沈んだ肌を撫で
冷たい手を取り出す
無数のお前が揺らめき
苦しみと愛しさを唱う ....
オレンジ色の世界が僕に優しい。
季節の抜け殻が道路脇に溜まっている。
それは次の季節に託した遺言のようで。
澱んだ色に鮮烈なオレンジが溶けてゆく。
僕には悲しみを持つ権利もな ....
竹の子の皮には
小さな産毛が生えていて
まるで針のよう
はがすごとにちくちくする
皮の巻き方は
妊婦の腹帯のように
みっしりと折り重なっていて
はがされたとたんに
くるりと丸くなる
....
飲み込んだ言葉が
胸にわだかまりの
どろりとした沼を作る
沼の中で
人に見捨てられ大きくなった亀が
悠々と泳いでいる
よく見ると
子どもを食ってふくれた金魚の尾が
ひらりひらり
....
父、母からの生に自立して
もう己自身がひとつの風土だ
と書いた北の国の詩人がいた
東京育ちのわたしにとって
風土とはどのような意味をもつのだろう
解体され ....
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