記憶はなにを食べて生きながらえているのだろう
指先から冷えていくのを彼女はまだ気づいていない
埃を吸ったあとの掃除機をそっと抱きしめる
モーターの余熱が伝わって やっと明日につながる ....
寒中恋酒女
壊中金銭薄
身中満妄念
偲遠過去多々罪障
望月落涙虚
残少人生希清廉
要身辺整理整頓
遥山冠雪語狭小我
宇宙大深志更遠
自由何処在 ....
フレドリック・ブラウンの死にいたる火星人の扉という創元社の文庫本
推理小説だが
彼には火星人ゴーホームという超絶な作品もある
火星年代記というレイ・ブラッドベリの名作
火星の赤い砂はア ....
積み木の赤い部品が
緑のうえにそっと載る
駆け抜ける電車の影が
血の気のない床を砕いて
それから
途絶えて消える
轍のひとつも残さず
....
眉一つ動かさず殺す女神が飼っていた
眇の金魚がいる。
水銀めいて光を反射する鉢を住処に
血の河を泳ぎまわる金魚を飼っている
銀の炎ちらつかす死神めいた女
まっ黒い眼をした ....
おまえはだれだと
蟻が訊く
秋枯れの
木の根をしいんと横切り
くたびれた靴の色より
鮮やかなぼくの影
それで結局一番取扱に困るのは自分自身であって
説明書が書けない せいぜい 長さと重さぐらいだ
従って「取扱説明書」は比喩でもなんでもない 真実だ
ぼくは電化製品だ コンセントとプラグは父母だ 修 ....
一人静かに座っている
ばあやの横にすずめが一羽
ばあやは米を振りまいて
にこにこにこにこ動かない
ちゅんちゅん鳴くは我が子とて
お日様だけが動いてる
すずめよすずめ
ば ....
わたしはうまれるまえの
かたまりの内側に潜んでいた
ある日溶岩とともに かたまりが溶けて
わたしが流れ出た
海が生まれた
空には赤い夜の太陽が
花開きながら飛び散っていた
....
この部屋は四角い
建物も四角い
紙は四角く切り取られ
電車は四角く走っている
土地は四角く区切られて
名前は四角く囲われる
レンジは四角く温めて
テレビで四角くものを見る
君は ....
ねぐせはなおさない
あんまりなおさない
はねっかえりの天然パーマ
したいようにさせておけ
校庭に 生徒を整列させるように
頭皮に 髪を整列させるなんて
そんなのナンセンス
ナ ....
喪服を着た父が 部屋の隅にいる
悲しいほど
とても暗い場所に
かなり寝たので 夢だったのか ひどく汗ばんでいる
耳をふとんにあてると 父が階段を上ってくる気配がした
....
朝から僧侶が
歳末助け合い とかかれた登り旗を掲げて歩いていた
助け合え
助け合え と歩いていた
その脇で
道をはく老人がいた
うつむいて
ほうきを使う老人の
背に太陽が反射し ....
アン・ドゥ・トロワ アン・ドゥ・トロワ
壊れたトウシューズをどこかに置き忘れた少女がひとり、漆黒の夢の中
そしてその静寂がわたしにまとわりつく
檻の中にいる時より
人の中にいる時の方が
君はずっと孤独だ
誰かと語り合っている時より
一人で黙っている時の方が
君はずっと雄弁だ
誰かに褒められている時より
誰かに見捨 ....
白くて少しざらっとした
鉱石のような植物
そんな草原で
石の人は
静かに一歩一歩
歩いている
目的は有れど
既にその石よりも
風化し忘れてしまいそう
傍らには
背中から ....
駅でたくさんの人が下りたあとの座席に
包みが置かれている
忘れ物だ
ぼくはあわてて取って
フォームを歩いて
事務室にいって
遺失物の届出をしようとしたのだが
形のあるものでないと受け取れ ....
かけおりてくる兵隊がいる
指揮だけがあって四季のない顔のない
丘のうえから
いっせいに声があがる
雲がわく
あがる声には
責任がないから自主性がない
....
本当の自由を求めて空を見る
名も知らぬ黒い鳥が
隊列を組んで空を渡っていった
翼があるから自由でいいねと
そんなふうにつぶやくのは
自分の翼で空を翔んだことがない人間が想うこと
あ ....
{画像=121201015630.jpg}
ゆるりゆるゆる ひらきます
さむさのゆえの ゆるやかさ
ゆびさえふれず ながめます
ゆうやけいろを すこしだけ
もらいこくなる ....
見上げる星よ、きみであれ
痛ましいほどに
疑いようもなく
きみであれ
忘れてくれるな、
燃え盛る目を
忘れてくれるな、
恥じ入る肩を
かろうじて ....
ものを捨てる
なにかを捨てることに
ときにためらい うしろめたさを
感じながら
一方では恣意的な解釈を
遠いツンドラの泥土のし ....
正しさってなんだろう
正方形の角が 誰かの頬に食い込むとき
その痛みが 真四角の正しさを証しするのだろうか
正しさってなんだろう
まっすぐな線をまっすぐに歩くことが
そんなに尊い ....
ほぼ全裸の国技
老人ホームは
駅のホームみたいに
最終列車を見送る時がある
いろんなひとの
いろんな最後を
見送る時がある
いっぽ前まで
せいかつをしていて
静かに静かに
旅立つ時まで
....
グラスのふち いちばん
ぎりぎりのところに
つかまって
あなたが落ちれば
わたしも落ちる
わたしが落ちれば
あなたも
でもべつべつの
ところに
こぼれおちたさきで
明日 ....
紅いやら
黄色いやら
騒いでるんじゃない
山の中に勝手に入ってきて
ジロジロみて
写真撮って
弁当食い散らかして
ゴミだけ残して帰る
観光客たち
俺は
おまえらに怒って
....
{引用= (stones)
喜びは
あなたの膝に
置かれた石
(eyes)
漆黒の髪と
睦み合う指の
眩暈をもよおす
数 ....
うしろからきこえる声
噛み切れば
冷たい雪を
ひとつひとつ積むだろう
棺の
かわいた脈動
その影を
一本の湿地の思想に
束ねている
あなたの
まぶしい眼光 ....
ぱし
ぺし
ぴちゃ
筆の先にたっぷりと
絵の素をつけて
カンバスに投げつける
あか
あお
き
だったもの
色を混ぜれば混ぜるほど
0に ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476