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淋しい金魚は
ひらひら、きれい
冷たい水の
いちばん冷たいところを
その身に負った
見事な絵の具で
ぬくめて渡る

淋しい金魚は
なんにも言わない
わたしにわかる言葉など
ひとつ ....
いくつになっても
おとぎ話から離れられなくて
きっと
そこに善し悪しは無いのだろうけれど
少しばかり塩辛くて
気づけば周りは海だった
かつて
思い思いの夢たちを見送って
この身 ....
波打ち際のおまえの姿を
なんと形容すれば良いだろう

哀れな末路
閉じた夢
干からびた声
孤独の極み

寄せる波に素足を任せると
わが身の所在なさが
あらわれてゆく

 ....
いつからだろう
大きな自分にあこがれている

いつまでだろう
小さな自分にすくわれる自分を
受け入れずにいる

燦々と
太陽のような眼差しと
ぬかりなく
闇夜のような眼差し ....
空を、ください

だれにも消せない
どこにも消えない
あの空を、

わたしだけの物には成り得なくても
わたしだけの物と覚えておけそうな
あの空を、


許さないでください ....
ひょい、と
おまえを肩に乗せると
よりいっそう
にぎやかな
居間になる

わたしには
さほど高くない
いつも通りの目線だが
おまえにとっては
宇宙ほどの
高みであるのかも ....
きれいな言葉を汲みたいのなら
ゆかりの川へ赴きましょう

手折った枝に
わが身を載せて
澄ましてみるが良いでしょう

そっと
寄り添うひかりの粒を
かぞえてみるが良いでしょう ....
身重の母さんをつれて
この道を通ったんだ

秋の彩りが見たくてね
秋の美食に酔いたくてね

俺の
そういう独り善がりは
あの日もいまも変わらない

ただひとつ違うのは
お ....
怪獣がすきだった

一生懸命に敗北へと向かう
その信念がすきだった

破壊される街も
逃げ惑う住民も
どうせフィクションだから
心配には及ばない

それなのに
怪獣の優勢が劣 ....
風を頼りに生きている
それは
揺るがず、歪まず、
だれから教えられることもなく
透明な命令として
継がれゆく

風を頼りに生きている
風がそれを望まなくても
わたしたちは
 ....
迷宮で廻すルーレットには
なんの不可抗力もない

風に繰られる日誌のような
待ち人しらずがそこにある

許可もなく
陰影もなく
皆無もなく
わずかばかりの定義だけを添えて ....
誰でも座ってかまわない席だから
誰でも座ってかまわない席ばかりだから
わたしは却って窮屈になる

わたしの決断はすべて
わたしの責任のもと、許される
ご自由にお座りください、という言葉 ....
鏡のうちにはあなたが映る
本当のあなたと
本当ではないあなたと
そのどちらにも当てはまるあなたと
どちらにも当てはまらないあなたが
映る

鏡のうちには時間が映る
過去と未来と現在 ....
わたしのなかには
百獣が在る

ねむれる獣とあらぶる獣
したがう獣といたわる獣

あなたのなかにも
百獣が在る

おびえる獣とひきいる獣
あてなき獣とみすかす獣

どこから ....
なにか
あたらしい生命を宿したように
ある種の覚悟を
はらんだようにもみえる
鮮やかな紅の群れ

陽をあびて
風にながれて
堅くも軟らかな血脈として
秋を運んでいる


そ ....
雨上がり、

濡れた小草は
雑多な列をなすけれど

それは
だれにも叱られない


わたしは
頭を垂れて

叱られない秩序たちを
踏みつけぬよう
気を配る


雨 ....
座礁する音を
わたしはしらない

その
しらずにいる日々が
肯定されうるものか否か
はかり得るすべがない
わたしには


座礁する音を
わたしはしらずにいたい

その ....
太陽の手に編まれゆく

野山も風も
岩肌も

一気に編まれる日があれば
やすみやすみ
覚えたての音階のように
編まれる日もある

太陽の手に編まれゆく

波間もひかりも
 ....
縦横無尽の蜘蛛の巣に
きらり、とひかる
ひと粒の


水に囲われ
ささやかに揺れている
ひとしずくの
時刻

断片的な
その美しさのかたわらに
白く包まれた命がある
 ....
たちのぼる
言葉と夜の境界へ
金魚がゆらり、にげてゆく

すべからく
広がりはじめる黒の祭に
あらがう手立ては
浅瀬にある

鮮やかで
にぎやかな
喪失のなかに
ある
 ....
ほんの
小指のつめほどの
ささやかな背に
滑らかに乗る
勤労の
まる

悠長に
せわしげに
その身に負わされた太陽の名を
あちらこちらへ
振りまいて
唐突に
発つ

 ....
読みかけの本を開くと
こぬか雨の匂いが
した

ひさかたぶりの文字たちは
指さきにそっと、重たい


夏の終わりはいつも、そう

ひっそりと濡れて
いる


空高く ....
割り切れたなら
気持ちがすっきり

それは事実


だけど
割り切れないことは
気持ちを強くしてくれる

それも事実



割る側を責めたり
許したり

割ら ....
もう二度と
会うことのないであろうひとを
思い出させるように、蝉時雨

誰、と決めず指定せず
つぎつぎと浮かんでは消えてゆく
顔と名前と時と場所

じっくりと、はっきりと
立ち止 ....
嘘をつくのなら
貝殻がごとく



言葉にしても
言葉にしなくても
おなじ結果なら

貝殻がごとく



傷つくことには、もう慣れた

冷たいことにも、もう慣れた
 ....
愛を語るにふさわしい
距離がある

夢を語るにふさわしい
距離がある

それゆえ
あなたとわたしには肉体があって
ときどき、響き合う

過去も未来も現在も
その伝播のなか ....
銀河のほとりには
ため息たちが花開いて

湖面は
ゆらめく



つかの間の風のなかに
つかの間の風のそとに
言葉の実る予感、が
色づいて

瞳の奥を波が走る

 ....
はるか
昔を向いているひとの
すべてが灯りと
なりますよう、
祈るわたしは
濁れるわたし
ひとごとみたいに
まったく淡い
時刻表

五本の指があるわりには
そこに受け取ら ....
どんなに優秀なものも
優秀ではないものも
燃されてしまえば
灰になる

どんなに貴重なものも
貴重ではないものも
燃されてしまえば
灰になる

風に従順な踊り子となって
 ....
産声のなかで
ひとりの娘が母に変わる日は
生命にまつわる大切な記念日
わたしのためには
何にも起きたりしない平凡な日でも
見知らぬ誰かには
たったひとつの日

雑踏のなかの
あり ....
ただのみきやさんの千波 一也さんおすすめリスト(96)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
淋しい金魚- 千波 一 ...自由詩420-8-16
情けない舟- 千波 一 ...自由詩316-12-27
流木- 千波 一 ...自由詩516-6-18
うりふたつ- 千波 一 ...自由詩316-6-17
空をください- 千波 一 ...自由詩716-6-6
肩車- 千波 一 ...自由詩1115-11-29
分流のうた- 千波 一 ...自由詩315-10-1
結実- 千波 一 ...自由詩615-9-21
怪獣がすきだった- 千波 一 ...自由詩1315-9-20
風を頼りに- 千波 一 ...自由詩615-9-18
迷宮ルーレット- 千波 一 ...自由詩415-9-17
空席- 千波 一 ...自由詩415-2-7
万能ではない鏡- 千波 一 ...自由詩314-11-29
百獣- 千波 一 ...自由詩414-11-28
紅葉群- 千波 一 ...自由詩614-10-12
整然- 千波 一 ...自由詩514-10-1
座礁する音- 千波 一 ...自由詩314-9-30
紡ぎうた- 千波 一 ...自由詩614-9-29
縮図- 千波 一 ...自由詩514-9-25
金魚- 千波 一 ...自由詩814-9-17
てんとう虫- 千波 一 ...自由詩1314-9-16
贅沢- 千波 一 ...自由詩714-9-7
わり算- 千波 一 ...自由詩7+14-9-2
蝉時雨- 千波 一 ...自由詩514-8-30
貝殻が嘘- 千波 一 ...自由詩514-8-19
あいだ- 千波 一 ...自由詩714-8-15
奏でるよりも聞き惚れて- 千波 一 ...自由詩914-8-1
水の駅- 千波 一 ...自由詩614-7-26
灰色ダンス- 千波 一 ...自由詩414-7-21
たったひとつ- 千波 一 ...自由詩914-7-20

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