汚いことから 目をつぶれば
長生きできると 世間が言う
汚いことに 目をつぶれば
死んでしまうと 風は言う
万年床、密封された部屋で
背中は地心のマグマに 燃やされながら
....
投票が終わって家に帰った
家に帰って
冷めた朝の味噌汁に火をつけた
火のついたように連呼される
統一地方選挙の候補者の名がもう聞こえなくなったので
冷たくなった朝の味噌汁に火をつけた
....
夜に思い出すことを
朝起きると忘れている
白い紙の上でダンスをする二人
余白は広がり続ける
指差す方へ
頭を向けて僕らは回転していく
ステップに次ぐステップ
夢の ....
下総台地の片隅で
遠く筑波の山なみを窺う
古来東国の歌垣は
いま離陸する輸送機の
後方彼方に鎮座する山
男体山に女体山
周辺に遮る山もなく
関東平野の中央に
香取の海を睥睨して
ほん ....
マカロニの穴に苦手な野菜詰められている
横たわるものと
立ちつくすもののあいだの霧
とどまるもの
落ちるもの
波のない海に
輪をつくるもの
空を追うつぼみ
変わりゆくものから痛みは去らない
口の内にあ ....
時が経っても たぶんきみはきみのままで
あたしは ラッシュの人波に流されて溺れて
年老いた患者の愚痴を聞きながら
磨り減って 川下の石みたいに 丸くなる
そうして彩色されていく
....
花見の客もいなくなった公園に
八重桜が ぽつり
月夜に ぽつり
夏のもやだ
出会った夜
思い出のよう
長い髪にも
月を探すよ
一夜かぎり
夢がさめても
昔の華やかな
カーニバル
夏のもやだ
出会っ ....
ベランダにテルテル坊主だった物体
教室では
四十名近い生徒が
ひしめきあっている
各々が心の中に
深海魚を飼っている
十数年教壇に立っていて
唯一発見したことだ
このせまい教室の中で
信じられない形の魚が
一つとして ....
春の日差しに誘われて
暗い地中から顔を出す
暖かいな、気持ちいいな
少し遠くへ行こうかな
花よ、君は美しい
鳥よ、僕を食べないで
風よ、君は自由だね
月よ、陽よ、照らしておくれ
....
八重よ、八重、
お前はどこからやってきた?
海の向こうの和の国の
家族がお前も恋しいか?
八重よ、八重、
お前はいつからそこにいる?
出逢った時からお互いに
白髪も相当溜めてきた
....
こわい話を聞く
お姉ちゃんの手を握る
水浸しの夜のような話に
手のなかのお姉ちゃんが
喉を鳴らす。
姉がいなくなった日
そんな話があった
僕は何事かを書きたくなる
良い物語は一 ....
白い午後の中で
心臓は
碧い虚脱の器である
ふいに
その中から
チューリップがのびて
あまりにも真赤な花を咲かす
雨上がり
子どもたちが庭に出る
水溜まりから
ヒカリガソラへ
地面を踏む
薄くて固い地面の底に
ヒカリノトイキ
広がる濡れた
白鷺が半弓のように佇み
カズエちゃん
....
ご乗車ありがとうございます
この列車は、終点自殺峡温泉まで
各駅に停車します
この列車からは様々な絶望が展望できます
欲望が大きいほど大きな絶望です
変形がひどいほどいびつな絶望です
次は ....
八宝菜の具を数えている
へんな語呂合わせでケータイ番号を教えてきた
ビルが朝陽にかじられて
吐き出された陽光は窓をすり抜け
昨夜の恥部を暴き出す
人々は慌ててカーテンを閉じ
ベッドを隠し
朝を始める
わたしと来たら
病室のカーテンを開け放ち
....
君の残り香 追いかけて
さまよう鼻に とまどいを覚え
君の足音 追いかけて
さまよう耳に ねぎらいを与え
君の視線 追いかけて
さまよう瞳に 嫉妬をなぞらえ
君の言 ....
表通りに街灯は点る。
閉め切られたシャッターの並びの中に誰かの忘れた人形が笑う。
心の休息は遥か彼方に横たわっている。
詩を歌えなくなった者は思い出の中に消えてゆく。
垂れた ....
桜にたとえ葉が乗っても
それを気にせず宴会に精を出す
乾杯の音頭を取りごきげんに飲み干す
自然の季節は過ぎれども
人間が良しとするならば
そこには満開の桜があるのだ
風に耐え切れず ....
最後の列車が出て行くと
ホームの照明は全て落ちる
やがて通りの建造物は
砂のように崩れ落ち
後には
魚の骨が突き立っている
古びた予言で言われたとおり
忘れ去られる花言葉
無表情な三日 ....
ときどき、神さまについて
考えてみることがある
私は無宗教だが
神さまを侮ったりはしない
イメージは漠然として
先祖の霊だったり
大自然の力だったり
稲荷大社の狐だったり
見え ....
金属探知機が首を傾げている
靴を履いて出掛けるたびに 冷蔵庫が肥っていく
月を眺めて暮らしていると 冷蔵庫が痩せていく
月が見ている私の距離は 靴で行けない夜の国
そこは 冷蔵庫のいらない世界
そこは 腐らな ....
君が詩を書いていると知って
私も詩を書いてみたけれど
書けば書くほど
言葉を見つければ見つけるほど
君のためにできることが
ひとつもないと知りました。
何のために書いているのでしょう
難 ....
青葉に光る水滴
そっと覗くと水滴の中に青空と赤い薔薇が見える
丸々と太った蜜蜂
小さい虎のパンツの細い蜂
バラの花に羽音のハミングが響く
赤・白・黄色
虫たちを誘う花の装い
甘い香りが漂 ....
夕焼け小焼けは ビルの先
から降りて来ない都会
谷間でうごめく人々は
電飾を着飾っていて
日暮れがない
○○山の△△寺(でら)はビルに飲み込まれ
夕暮れの梵鐘は口を閉じて
頭の中で鳴 ....
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