そしてゆっくりと
身体から夏が剥がれ落ち
空虚するための九月がやってくる
白を纏う
夏のように
眩しさを反射するための白ではなく
とり残されるための 白
とり残されて
空虚する ....
薄曇りの空を浴び
錆びたトタンが発色する
剥げかけた というよりも
薄い金属の表面を
浸食している赤ペンキ
腐蝕しながら
守るべきものを阻害していく
かつては輝きそのものであり
....
みどりいろした
星をなぞる指先が
燃える
やわらかい
歯をたてては
めいめいにいのって
慈しむ紺色、宙をけって
絡まるいばらが
すきとおる喉元で
ひろいあげた木の葉の
ささやかな屈 ....
一直線に伸びた微粒子の放出
光りは彼方へと繋がり
藍色の権力は力強さと共に形を残す
過ぎ去る景色
そこには風がなく
過ぎ去る感情
そこには母の優しさが無い
やがて果実は実を開く
....
光りが照らされる白い葉に
運命の蒼い一筋の水が滴る
鼓動は動きを忘却し
風が南に向かって吹き始める
私は沈む
私は沈みゆく
底に溜まった感情は
肉を膠着させ
出口を求めて彷徨う
....
まわり続けていれば
倒れずに
ほそい息を繋ぎ
うたうことさえできそうで
こころなくして
忙しくまわり続けていられさえすれば
支えてくれた背骨の芯も
とうに抜け落ち
まぼろしだけだと ....
牢であり城である街を浪が洗い
壁から瀧があふれている
奴隷の子と皇女は手を結び
錆びた真昼の水たまりを踏む
呼吸が
忙しく他者を連れ去る
水の底の 舌のようなもの
....
ゆめはつるつるとつめたくて
わたしには夢だとわかる
何度めかの夢で
そのうち終わるのだということも
あるくわたしが
真っ直ぐ行くとしろいさるすべり
もしも曲がれば あかいさるすべり ....
ガラスのように光るその蛇は
青草の影を躰に映し
すべらかに移動していた
怖くはなかった
わたしを無視して
まっすぐ母屋に向かっていくので
なんとか向きを変えさせようと
木の枝で
行く手 ....
二時です
虹です
やぁこんにちは!
夢の中で
トイレを流す音を
聞いたけれど
雨が降ったんだね
五時です
誤字です
まだ眠いでしょう?
日が落ちる頃に
書いたノートは ....
夏の日差しが音を立てて崩れてゆく。
音楽は鳴り続けていた。
誰かの後ろに隠れているのは誰?
曇天は私の心模様に似ている。
誰かの奏でる音楽に耳を澄ませていた。
時折見せる ....
幸せになって
たいせつなお友だち
惜しみなくきれいなおいしい
飴をくちづけたい
そんなものまだ
わたしのなかに壊れきらず
のこっているならば
幸せとはなんだろうね
つらつらして ....
夜は窓を踏み
窓は夜に座す
がたがたと
風のふりをする亡者
記憶は波の上に居る
はばたきとくちづけをまちがえる
羽のような蜘蛛の巣があり
風を抄い 揺れつづけ ....
遠く轟くのは雷鳴
それとも記憶の彼方の爆音
或いは過ぎ行く夏の
名残の花火
下駄を穿いていた
裸足のくるぶしを
風がくすぐり
バッタが跳ねる草の道
また明日遊ぼうねと言 ....
珈琲の渦の奥に一つ
小惑星が沈んでいます
あれは浮かんでいるのです(彼方側では)
音は滴り落ちるので
雨さえ頭上へと上がってゆきます
すべての事象があべこべなのです(此方側では) ....
暗示を拾いに
街へ出る
更新されてる
かけらを探す
見えないほころび
次元のすきま
世界の正体を
見極めたくて
街の中で
見つけたしるし
隠れた意味は
よみ取りがたく ....
黒焦げのアカツメクサを労うように
レースフラワーが風に揺れ
夏が終わると歌っている
排気ガスまみれの分離帯にも
芽吹いた種は繁らせた
波打つ夏の色
色褪せた空のキャンバスに
ぽたりと ....
{引用=夜明けのこない夜はないさ
あなたがぽつりいう}
懐かしい歌が
あの頃の私を連れてきた
そして今の私が唄うのを
遠い窓枠にもたれて
聞くともなく聞いている
夜のはてない深さと距 ....
てんてきのひとの下を肢体が運ばれる
てのひらに濾過された空ばかり残る
てんてきのひとの上で黙るのは蛍光灯
だけではないという、ひとは
そっと告げた
やはらかに遺されて読めもしないことばは ....
君みたいな人間はクズだよ
テーブルに残された一枚の書き置き
肺が嘆くまで息をこらえて
金魚すくいみたいなプラットフォーム
はしゃぐ若者と自分の靴を比較する
「俺の笑い方、マニュアルに載るらし ....
大時計の針の上で寝そべる
空の瑠璃色を映す
湖の波紋が 夜の膜のように拡がってゆく
その浅い水の褥のうえには
夏に日焼けした物憂げな表情が
よりいっそうに青く映り込んでいる
その細ながい胴 ....
ひかりの
衣擦れをまとう街の
瞼にぶらさがり
あそぶ足音をひろう
みずたまりで
しらんでは気化する羽根
はかなさを
みせびらかした彩りを
うとんでも
纏うばかりには剥いで
ちら ....
朝はきて指にささくれ
やわらかい油を塗って雲は湯立ち
居残りの夜を掃き出して
開ける窓の軋む音
夏に 朝に 街じゅうの轍に
わかる 私は
くっきりと弱い
風を横切り
聞こえる唄
暑くも 寒くも
ひとつの唄
やがて雨になる眠り
薄く重く揺れる原
灯る花は揺れることなく
ただ上方を照らしている
空の力や理が
....
意識と無意識との狭間で郭公が啼いている。
青い円柱に気配を感じると、不思議なサークルだ。
闇は薄くなり、密かに青みを帯びて、やがて黄色く変化する。
私が彷徨っているのは今此処である。 ....
茶色い瞳のその奥に青い瞳が眠っている。
揺り籠から墓場まで、漂い人は驢馬に跨り町を出て、
二度と同じ場所に帰る事は無い。
天上へと続く道も途中で途切れている。
ならば進もう、 ....
海を見ていた。
あなたと私の隔たりをどうしたら埋められるのか考えていた。
夢にあなたが現れてその時は号泣していたのに
朝目が覚めてみると枕はほんの少し滲みているばかり。
海は ....
みつばちのささやかな羽音に
ひかりが絡まる
かけてはうだる夏のあかるみに
みせびらかした琥珀色
やわらかな土を踏みならし
踊ったあしもとに
すこやかな針をさしとおしては
はれあが ....
私の瞼に咲く花は
いつも明るく黒い色をしている
明るい黒い色は
ナイフで切り刻まれた
唇の笑顔になって
翼のようにひろがっている
空を見上げては
飛びたがっている
私の明るく黒い花は
....
抱きしめたもの
全部ひっくるめて
冷蔵便で送るよ
たとえば
大田・桜公園
{引用=擦り傷だらけの 谷やんの
分厚い両手が 切るネジは
ミクロの世界で 刻まれて
....
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