雨上がり、路面電車が
湿りの中で発光したまま
緩やかなカーブを破壊していく
何の変哲もない病室に
復員したばかりの真昼と青空
そこでは誰もが幸せそうに
夕食に出た鰊料理の話をしてい ....
ホタルが光ることをあきらめたかつての葦原には
鋭い葉先をもつ堅草がおい茂っている
もうだれも ことばを信じなくなった
かつてオレは水になることができたし
泥鰌になることもできた
雲にも ....
雨の気配を感じて手のひらを空へ差し出す

つるりとして
なだらかな
わたしの丘に
今日の雨粒が流れたら
くぼ地の枯れた水路が
一瞬よみがえる
かつて
そこへ流して遊んだ
笹の葉や
 ....
 真夜中に点灯した冷蔵庫の奥であらゆる向きに齧られたチー
 ズケーキが発見された\反射的にわたしもかじりつき\素早
 く体温を加え咀嚼を開始\ねっとりうっとり\うまれるチー
 ズケーキのかがやき ....
曲げた躰をハートの形に触れ合わせ
あおく短い空を翅ごとに掴む
 (静かに震えながら)
何を見ている
何を感じた
 (水と血が滲じむと)

小川に沿って気流が乱れ
深い茂みが盛り上がる度 ....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節

室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる

乾いているようにみえても
繊維 ....
虹を作る
その生き物の背中には羽があって
だけどそれは
空を飛ぶためのものじゃないらしい
六月の晴れ間を見つけると
庭にぴょこんととびだして
霧を吹きかけて虹を作る
小さな生き物は
小 ....
 見えない陣が静かに張られ
 消せない悔いを学ばされる
 通学の青にも馴れた頃

 無菌にされてゆく教室で
 午後の解答欄をはみだした
 もっとひろい紙の方へ
 未来をつかうことば達を黙 ....

性格とは
予言された死
に対しての

としての顔

繰り返すのは
絶対に失敗しない
温度のない太陽の下での
軽業



甘い憧れ、アメリカの音楽に
地球の始まりの ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している

海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
青りんごは自ら枝を手放して
地に落下した
それは手のひらにすっぽり包まれるほど小さく
人が食べ頃だと思うには到底未成熟だった

わたしにもっといい耳があれば
落ちた理由が聴こえたかもしれな ....
胸間からとおくとおく、袍の指先まで
崩れかけた山肌をなぞっているのでしょう
その眦など、乾いては渇いては
照り返したその頬の、なんともはや
かがりくるう、つむじあたりに、かえして
つぶらのか ....
 撹拌された
 街の音や願いが
 クラシック風の音形をなぞる

 やわらかな丘の群で拾われる古代
 おしゃべりな小鳥
 衰弱しかないその聲に
 仮託された笑みは
 発点してしまえばいい ....
 グミ

どうぞ、と差し出された袋のなかには
色とりどりのグミ
お祭りみたいにひしめき合ってる

青いのをひとつ
取り出して
口に入れる前に電球にかざす

ママが言った
海の色を ....
ホームセンターで
小さな紙袋に入った花の種を買い
土を入れたふかふかのプランターにまいた
ねずみ色の日々の傍らに
きれいな花を咲かせたかったのかもしれない

庭のひなたに置いたプランターに ....
もうどこへも逃げてゆけない言葉たちが
{ルビ凝=こご}る五月闇
夏の色が濃くなるごとに重くなってゆく空

その空の重みに耐えかねて
虚ろになる意識
否 虚ろを装う意識

綴るご ....
 ひとりで
 星を見る

 水を湛えた
 ナウマン象の足あとに
 両ひざを抱え
 転がした
 身体を透り抜けながら

 ひとりで見る
 星のひかりよ

 むき出しの
 大理石 ....
今年もうぐいすが鳴いた
うぐいすが
うぐいすであることを誇るような
透明の声は
命の分身
離れてしまえば
もう本体に戻ることはない
永遠に

たとえば
意に沿わない風にも
うぐい ....
窓を開けると五月の風と一緒に
校長先生が入ってきた
自分で握ったんだよ、と
おにぎりを食べてみせ
そのまま駅のプラットホームに並んだ
太陽の高さや空気の感じなどで
今日が午後であることはわ ....
新じゃがいもをたくさんもらったので
ご近所さんにお裾分けした
お返しに、と
果物をいただく

蜜柑のようでちょっと違う
きめ細かいすべっとした黄色い皮は薄く
手でむけそうだ
現れた果実 ....
感情を一瞬も与えなく
隙間に開かれて

水と繊維から結晶した
軽快な断ち味を口々に
台布から取り払う

無意味でいるのが好きだから
ふたり沈む 湖
郊外の拡がり

それでも
退 ....
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
 とても大きな
 わたしを引き寄せる力

胸が苦しくなっても求めた
果物の芯と愉しみを並べ
羽翼のむくろで憐れみを繋ぐ
意思が現す 作りものとして
中身を 刻み続けた

 次第に吸い ....
 登場人物たちに
 声援をおくる
 勝って欲しい 成就して欲しい
 今度こそ報われる 諦めることなく

 選手や 片恋
 老いたぬいぐるみ
 鼻に生じる脳みそ
 夢として描かれた
  ....
「今日の貨物も 重そうだな」
「ああ 空の雲も 重そうだな」

凍り付く森の枝先 すり抜けて 
貨物列車がゆく
港の駅まで たんたたんと

コンテナの奥はガラスの水槽です 
銀の平原を ....
 さくらが流れていると
 ぼんやり彼を感じてしまうのは
 何故だろう なんて
 共にして
 また横に
 不意に春のふくらみを介して

 濃いかすみが
 音をあたためる傍らで
 陶然と ....
夜の闇が怖いから電気は消さないでくれと君は言う

ソメイヨシノが咲いても散るのを知ってるから悲しいとも言う

飛行機に乗るなんてとんでもないとも言う

くたびれたぬいぐるみを永遠に捨てられ ....
 いきつがない


こうすれば曲がる、こうすれば建つ
こうることで進む。これで大丈夫

これも見たことがない種子が
もうひとつぶ欲しいだなんて
昨日に憧れるなんて昨日に嫉妬する ....
あんまり桜がきれいだから
少し寄り道していこうか
寄り道はいくつになっても
心が踊る

野焼きを済ませたばかりの土手は
あっけらかんとした楽しい黒焦げ
ショートカットにしたばかりのうなじ ....
 透けるにほどない
 まあたらしい光

 君は旧い水道橋で 淡く色を重ねた
 針は移す影に 勢いよく溶け出す
 多くは柔くよく凍え
 縫われながら解かれるだろう
 疑いながら けれど喜べ ....
ただのみきやさんのおすすめリスト(14211)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
撃鉄- たもつ自由詩523-7-16
葦原にて- 室町自由詩8*23-7-15
手のひらの丘- そらの珊 ...自由詩19*23-7-12
チーズケーキとリルケ- soft_machine自由詩11*23-7-8
蜻蛉- soft_machine自由詩523-7-4
梅雨の通夜- そらの珊 ...自由詩11*23-6-30
小さな生き物- そらの珊 ...自由詩9*23-6-28
テスト期間- soft_machine自由詩423-6-22
- 由比良 ...自由詩123-6-19
ヒメジョオンの巷- そらの珊 ...自由詩13*23-6-19
梅雨に捧げる供物として- そらの珊 ...自由詩5*23-6-14
半可通の蛭- あらい自由詩223-6-13
やわらかい丘- soft_machine自由詩423-6-10
群青- そらの珊 ...自由詩12*23-6-9
アカザ- そらの珊 ...自由詩5*23-6-7
五月闇- 塔野夏子自由詩7*23-6-1
星のひかり- soft_machine自由詩323-5-28
うぐいす- そらの珊 ...自由詩8*23-5-24
失投- たもつ自由詩423-5-23
到来物- そらの珊 ...自由詩9*23-5-23
みずうみ- soft_machine自由詩223-5-19
まばたき- そらの珊 ...自由詩16*23-5-8
悪でいい、囁き- soft_machine自由詩223-5-7
声援- soft_machine自由詩223-4-24
水_槽_列_車- 松岡宮自由詩14*23-4-12
檸檬- soft_machine自由詩5*23-4-9
真昼の月を見つけたら- そらの珊 ...自由詩11*23-4-7
いきつがない- soft_machine自由詩2*23-4-5
春の雪- そらの珊 ...自由詩8*23-4-5
ソフィア- soft_machine自由詩323-3-30

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