背中の氷の洪水だ
皮脂の膜べたつく額
ふくらむ浮き輪
くらげの子
頭上で銀の楠玉が
言葉少なく明滅し
波打ち際の猫のべろ
巨大なふぐがつかまって
海中の階段が
何重に ....
雨上がり 狭い公衆トイレを出て
銀光りするジャングルジムを抜け
噴水が青空を蹴り返す広場に至る
水の町の夕暮れ
細い水路に図書館は沈み
長い船が坂の途中に停泊する
熱さ除けの茅のす ....
月のない夜 銀河からの光に
山の端の木枝は 浮かび上がる 黒々と
花は眠っている 午後の明るい顔のままで
川音は 青くさざめいて 流れる
あてにはならない 行く末へ
いくつもの悔 ....
母ちゃんが、洗濯物の皺をのばして
竿に衣服を干している。
実家を離れて久しい
娘についての深い悩みを
ひと時、忘れて。
日にましろく照らされた
タオルを
丹念に、のばして。
....
夏の果に無限の薔薇を置いてきた
浴槽に溢れるほど
張ったぬるま湯に
沈み込むその時に
ずっと居なかった
母親を思うのです
たった五年にも満たない
その女です
母では無くて女の記憶が強く
父親の記憶も薄いが
少な ....
{引用=───さをさすみなもに
あをきうを}
そうやって押入れの奥に挟まっていた紙を展げてみれば
かつては地図だったらしいだだっ広い切れ端の
ふちは褐色にすりきれ折り目に穴があ ....
「在宅のみとり講習会」という見出しが眼にはいった時
「のみとり?」と思ってしまった
ペットの蚤でも発生しているんだろうか・・と
普通に思ってしまった
記事をよく読むと
「在宅のみとりに必要な ....
あのね あのね
夜の交差点
五月蝿くて
時を止めたの
タイツを脱いで
アスファルトと接する足が
痛くて ゾクゾクするの
高級車に引っ掻き傷をつけて
十字の交差点で
見 ....
千羽鶴を折るという友につきあって
折り紙を手にしてみた
信じてなんかいないけど
お祈りをしている気分だ
願い事はかなわない
そう信じる方が
ちょっと生きやすいとおもう
でも
....
穴を測る
縦の長さと横の幅と
私がよじ登ってきた深さを
塞ぐのに必要な
土の量を知るために
そして
もし塞げないならば
この穴を渡す橋を
かけるために
土に手を置いて
穴を ....
くろく濡れそぼる屋根屋根に
遠くから投げつけられた
弱い夕やけが跳ね返り
つかの間の晴れ間
雲の一部を茜に彩り
降りてくる薄墨のカーテンに
泣きぬれた瞳のような
ほほえみを彷徨わせ
滲 ....
物音に ビクリとする癖と
心臓が バクンとする音が
交互に揺れる 真夜中に
どうか 迷わずに 生きろと
背を 押されているようだと
安心できるような
不安も有るけれど
安 ....
黄泉の国へ亡命
協議の末に混浴温泉で茹でた卵
秋の夜長
逃げては追いかけ、追いかけては逃げ、
今宵もひとり鬼ごっこ
ぎゅっと握った二十円
お小遣い帳にお菓子と
日曜日の午後の事です
小高い古墳群頂上から
平野を走る鉄道の線路
市道沿いの駄菓子屋へ
優しいおじいちゃんと
少し怖いばあちゃんが
樽に入っ ....
待ちに待った夜が来て
冷たい風が触れ回る
枯葉を転がし踊り出す
{ルビカリアッハ・ベーラ=冬女王}の布告だよぅ
ゥゥゥウウー カラカラカラ…
南の御座には{ルビケリドウェン=冥府魔女}
出 ....
人間が好き人間が嫌いもう若くない
{引用=―ルシーの物語を読んだ時、私は十四歳だった。物語のルシーは死んでしまったので、私はルシーの続きを生きなくてはならなかった。―}
*
僕たちは何度もすれちがい
そして ....
氷砂糖に雨が降る
静かに静かに雨が降る
溶けることに救いを求め
消えることに躊躇する
氷砂糖に雨が降る
静かに静かに雨が降る
甘い夢が濃くなって
白い結晶が視界を ....
瞳の奥の天使
闇を手繰り寄せて紐解く
脱獄囚の烙印
死刑囚の歴史観
寄せ集めの笑顔で凌ぐ
論理のない戦い
爪を折られた指で
崖を登る
登攀者の緩み
大地という母の目論み
....
やまびこが返ってくるまで叫ぶつもり
夾竹桃 馬酔木 ダチュラ
それぞれ煎じてアルカロイド毒を
成分からして苦いものだ
1?も飲んでみ給え
すなわちめまいや嘔吐悪心
意識は混濁し幻覚幻聴
「ああ、死ぬんだな」と感じる
精神は ....
暮らしとは
あさ 水を手にとる温度
きしむバスを降り
しんじつみのない歩幅に合わせる
三拍子
あまりにもたくさん
尽きてまた始まる靴音のなかに
ようや ....
積まれた雑誌のうえに
毒茸がひとつ置かれていたはずだが
きょうは、かげもかたちもない
隠したのが彼女だということはわかるが
肝心の方法がわからないから憤懣やるかたな ....
ITTANMOMEN (一反木綿)
薄っぺらな奴だと蔑まれても
捉えどころがないと疎まれても
何処吹く風を自在に乗りこなして
へらへらと今をすり抜けてやる
旗のように風をくら ....
雨上がりのテラスで飲むレモネードが喉に優しい。
ぼんやりと周りを囲む白樺の林にはうっすらと霧が出て、
まるで夢の中に現れたクロード・モネの傑作みたいだ。
静かな幸せが辺りを包んでいる。
....
傍らにつづくきみの面影に
いつか忘れようとした秋のいのちを
頑なに重ねることを覚えた日もあった
掬いあげた水溜まりの渇きに
助けられずにないた小鳥のさえずりを
音符に変えることも ....
ピッチャーが2人に見える鞄からアブサン
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