鰹と昆布出汁のお味噌汁には
豆腐とあさつきを浮かべただけ
甘めの卵焼きをクルクルと
上手に巻いている菜箸兄弟
グリルの中では塩鮭の皮が
薄く煙と音を立てている
起こしにやってく ....
あそこの靴屋は
きれいなかたちのかなしみを売っている
こどもに蹴られて傷んでいた
ひろいあげて
ショーウィンドウにふたつ
つみかさねた
朱欒の実
黄昏どきは
半透明の落葉とおん ....
街は誰もいなくなった
黒く消えた雨の中で見る 街の中
僕はいつも現れた
僕は どこにいるのか 何もわからない
滴のどこに僕がいる
空を 広く見上げるカラスは 水色だ
地面の中 ....
埃の舞うホームに定期券ひとつポケットにいれて
私はいつもの電車を待っている
人の波は駅のホームに溢れては
電車に吸い込まれ、またホームへと溢れ出る
そうして流されては繰り返されていく
誰 ....
慌てふためく前に準備しな
そんな声に うながされて
希釈された安全な毒を
香水変わりに体に浴びせ
PUMAの靴を履けば 準備万端
あてのない お出かけさ
どこに行くのかって?
今更… ....
雨に道がひかっている
この街のそこかしこにぼくらがいる
傘をささずにぽつぽつとやられている
そこかしこにぼくらがいる
街路樹が霧を呼吸している
さわやかな別れに涼しく ....
滑り込みセーフ! って言っちゃうあなたって 幸せ
だってね 明らかにアウトだもの
ほら 入口からセーフのアチラが観えない?
「ふーん」
(ふーん )は負 ....
「今日アッキー帰って来るって知ってた?」
「知らない」
わたしからメールをしてみると
近所のマックから
パパにメールをいれたよう
「突然で用意していないだろうから ....
薄紫色の大気はひんやりと冴え渡ってそこにあった
南天の赤がこじんまりと眼の端に映るそんな朝だ
生きることはそうわるくもないさときどき意味のとり方を間違えるだけなんだ
そうみんな生のかけらを交 ....
想像してみて。
この柔らかな死体が
何を思って生きていたかを
たとえば
生きている理由とか
翼の意味を考えただろうか
空を飛ぶ機能が失われたそれは
時折はばたく真似事をするだけの
使い ....
話して怒られ話さず怒られ
南から風
そのあと
風が空を押し上げて
秋の空が高くなる
その高い空の下
山は赤く
地は黄金(こがね)
輝く色のグラデぇーション
実りの時を触 ....
131029
破綻を恐れず
どんどこ行こう
ぽかんと開いたクレーター
ビスケットのカケラ
利口なトマトに
間抜けな空が
冬が近いと
笑ってる
にこ ....
カップ麺が好きです
お湯をかけて待ってる時間も楽しい
自分にとってカップ麺はご馳走なんだ
カップ麺が好きだというと
貧乏くさい 手抜き 身体に悪いと
知ったかぶった顔で注意されます
....
ガラスが砕ける数分前、
東京タワーが尖端から地面に引きずられて
蟻地獄にのまれていった
その蟻地獄の底に見たものは真っ赤な夕焼け
見いつけたと不忍池の蓮が听った
時計は童話のなかでは ....
僕は何もない
手離すこの手の 金は
ものの手に入れられない
すでに この手が 手放したもの
君は多くが寂しさ
着飾った 目は 流行の
君の夢を見る
細かな言葉を用いて 目は
....
まだ 秋に吠えているの?
もう 母になるのだから 色白に染めた肌を粉雪の背景に凭れ
ゆっくり歩んで生きなさい
胸の張りが急速に母になってゆく まだサクランボ坊主なのに
体がのそのそしか ....
水色のピアノを
あなたは弾いていた
獰猛なまでに素早く指をすべらせ けれども
唇の端にはささやかな笑みをあつめて
手に負えない{ルビ巨=おお}きさと
理不尽な ....
台風到来で押し出されたらしい雨が
ずっこけるように斜めに降り出してきた
台風が近づくにつれ雨に重みがまじると
ずるいことに引力以上の力で今度は垂直に吹き付けてくるじゃないか
我 ....
昨日、
私がよんだ詩は
孤独についてかかれていた
言葉のひとつひとつが粉々に砕け散り
闇の渦に吸い込まれ乱反射していた
それは
孤独であり希望であった
ある光であった
今日、
私 ....
【乾期】
鉢植えが日ごとうらぶれていく
朝顔はもう咲かないだろう
ふたたび未来をつなげる種だけを残して
それでいいじゃないかと
乾いていく
ほんの少し私も そこで
足踏みしている
....
「朝」という字の月の彎曲に
僕は腰掛けている
朝になれば月は消えて
その先のことはわからない
味ノ無イ、がむヲ噛ンデルヨーナ、人生ナノ
ランドセルをしょった姪っ子が口を尖らす
学習院型 ....
ひとかき
ひとけり
その分だけ進む
ひとかき
ひとけり
私の力の分だけ進む
ひとかき
ひとけり
私が今出せる力の分だけ進む
それ以上でも
それ以下でもなく
しなやかで ....
ブームが去ったあとにハマっている
太陽から少し離れただけで肌寒い
少し
少しってなんだろう
肌寒さはこんなに身にしみるのに
外灯が先週よりも
せんさいで優しかった
恋人たちも先週より
せつ ....
信じなくていい
涙で帳のおりた夜
そんな夜は、信じなくていい
ある夏の暮れ、一匹の虫が空を見ていました。それは万華鏡をかざし見たような小さな空でした。その空から、突然雪でも雨でもないものが降ってきたのです。それは風船でした。24色の大小様々な丸い風船はクレヨンが ....
幸せ
という言葉がついたものを買いたくなる
そんな時刻夕暮れ
ひとりはほんとにさむい
ネット上の文字が友達
だなんて言わない言えない
でもいいじゃない電車の
窓にうつるひとにつぶ ....
煮豆を口に運んでいるあなたは
だれかの真似をしているふうなのだけれど
わからないし どうでもいい
椀に添えられた手は
貧乏臭くひび割れているし
化粧気のない頬 ....
定価千八百円のはずの詩集が
アマゾンで一円で売られていた
0円では商品として流通されないだろうから
一円にしたまでのことなのか
紙代にも
印刷代にも
ならないはずの
アルミ二ュウ ....
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