緑色の雨が降りしきる
世界が寝静まる夜更け
聞こえない雨音の
ひどく透明な反響
苔はひたひたと眠る
緑色の雨に抱かれて
眠れない誰かさんの代わりに
私はハーブティーを淹れ
....
落ちてくる雪にパンチしながら歩いている
はじまりのまりを蹴りました。誰も傷つかないよう、わたしがきみをよびよせるたび、わたしは嘘つきになって、きみがきみのいるところだけが透明になってゆく。テトラポッドは波しぶきをくい止めて。非常口のひか ....
遅番の勤務が終わると、すっかり夜の真ん中だ
人も車も絶えた県道
遠くまで並んだ青信号
夜取り残した原色の電光看板
この店の窓はいつも結露でいっぱいだ
入り口を入って、半島型のカウンターを ....
ふるさとの町から井戸水をくむ音がなくなって久しい
町にはじめから祭りなどなかったのだ
特に冬には。駅前の小路にも?
ふるさとの町から冬支度がなくなって久しい
町にはは ....
灯りを浮かべ
さざ波を光らせて
夜の底を流れていく
川の色は
本当は血の色かもしれない
あるいはヒトの
暮らしと汚れを溶かし
泥色に濁っているかもしれない
晴れた朝には
青空を映 ....
書き写したいことが
夜の中核を担っているときは
和紙に目をつぶり
水でうっすらとなぞってみる
見開いた視野の右隅に波紋
その理由を生きることに託した
一途に一途にと朝は求めるけ ....
すべてが寝静まり
寝返りと寝言の中で
やかんを磨く
あしたはどんな一日に
なるだろう
油で汚れ焼けた ....
牛乳ベースのスープにレチェが入った鍋に
菜箸でつまんだカモノハシを一切れずつ入れる
黒いショールを纏い
髪をぞんざいにまとめたデニムのパンツに皮のブーツの女が
カモノハシに続いて鍋の ....
ずっと使っている石油ストーブの上で
やかんがかたかたなっている
この私にもそれがきこえるのは
家の中が静かだから
きっと家族みんな
この音きいてるんだろうな
みんなそれぞれをむいている ....
大きい耳が話を聴いていない
千年先まで眠らせて
化石になったら好きになれるよ
プラスチックとインターネット
雪のむこうにある街の
電信柱とファミリーマート
化石だったら大事にできる
古めかしければ信じていられ ....
黒い羽が
夕刻をはたいた
振り向くことなく
飛び去った
傷は付かなかった
あたたかさは奪われなかった
家に至る
二本の径
選ぶまでもない戸惑いのなか ....
雨を迎えると豊かになる
けれど まだ足りないんだ 晴れには導かれやすい単純さは
ただの人間
私は腹を立てていた些細漣連なる鉛の莫迦波
深呼吸を施せば澄む問題にもならない
....
ああ、今宵は
下弦の月の舟に乗り
黒い夜空に漕ぎ出そう
眼下に見えるは
{ルビ玩具=おもちゃ}のよう
昼の{ルビ日中=ひなか}の
よしなしごとは
ちっぽけな屋根の下に
まるめて
仕舞 ....
たとえば今日を定休日とする
たとえば雨と雪のあわいで
だれにもならない日と決める
それを
許せる自分になってみる
易しそうで
なぜかとても難しい
イワアノキユトメア
な ....
お布団の中、あと一分、、三分、、、
起きた後の喧騒と引き替えにしたってかまいやしない
冬のまどろみは 快楽だ
シャツ一枚を
買ったレジで 今日
包み紙で包んでくれた
静かな 手のことを
思い出している
机の上の 折りたたまれた
シャツの前で私は
その薄手の紙にそっと触れてみた
オークシ ....
{引用=
朝には明星
鼻先をかすめる風は
五つの星と三日月の旗を
掲げた彼の地で生まれ
古の道筋に誘う
一滴の恵みも無い砂漠の
明け方何処ともなく現れた
灼熱の大地をやさしく包む
虹 ....
星なんか
見えない夜もある
それでも夜空を見上げて
一番輝く星を探しているんだ
その星が
ずっと照らしてくれると信じて
星なんか
見えない夜がある
暗い夜道で
仔猫の鳴き ....
水玉に揺れる竜
つなぐ とぎれという輪
くべている手は 土からでた空の指
火は向こうへ かけられる扉
流は竜
木の気流
立つは麒麟
合羽の袖口にも 頬にも手にも
蝶にも
....
二つの影は風となり、二人を囲んで舞い踊り、
肌の匂いや、軽やかなステップで
踏み拉かれた花々から立ち昇る香りと混ざり合って、僕は、
虹が崩れる音を、初めて聞きました。
生い茂る木々は一様に ....
移りゆく事象に
普遍性を見出そうと
あなたは時を凍らせた
記憶という名の冷却剤で
汗ばむ肌に下着を貼り付け
冷えた板張りの床の上
道に迷った子供となって
膝を抱えて座 ....
畑の隅に雨水を溜めている
ラムネ色した
プラスチック製の風呂桶
畑では老いた夫婦が
腰をかがめて手入れをしている
昔はその
小さなラムネ色の風呂桶に
家族で皆身体を丸めて
入ってい ....
ここは本当に悲しい海だ
と皆は言います
また
ここは本当に素敵な海だ
と言う人もいます
地平線はずうっと向こうにあって
太陽を避けるものは何もなくて
朝焼け、夕焼けの景色は天 ....
立ち昇らせなければいけないんだよ 僕の世界を
主に届くためには
そらの果ての向こうの裏側までも
あなたの空想など とうに破らなければ
決して完成させてはいけないんだ
....
リアリティはじっとしてはいられない女の子ね、持ち前の想像力で逃避も克服、溶ける魚(註1)の顔をして超現実、デバイスの仮想現実、拡張現実ソースたっぷりで入り乱れるの、あえて言葉で表すとして
人は個 ....
雲ひとつない高笑い
真っ青な永久歯で
空は
高層ビルに喰らいついている
控えめな思い出し笑い
押しつけがましくない暖気で
光は
目抜き通りを撫でている
束の間の微笑み返し
....
夜の街路で、街灯もない道を私はさまよっていた。正義はいつでも鋼鉄でできている。それは鋼鉄の壁かもしれないし、鋼鉄の刃かもしれない。私は自らの著作の記述で異教徒を激怒させ、異教徒に追われてい ....
無免許のレースクィーンに乗られる
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