わたしたち、ちいさな山のちいさなおうちで、朝食のお皿を並べて二枚、三枚、並べているうちに足りなくなって、並べても並べても足りなくなって、テーブル継ぎ足しても足りなくて壁つきやぶって外に伸ばして、それで ....
痰に執着が絡んで上手く吐き出せない
過去に想いを馳せて 石橋を叩いて 渡らない
どの様な姿が陽に当たって影は無念だったのか
それとも地平線まで心は太平であったのか
おぼろげな足取 ....
そのときわたしは息をとめていたし
世界はないも同然だった
前でも後ろでもおなじことだ
どっちにしろ転ぶのだ
夢のような一瞬ののち
美しいさびしさとひきかえにして
やはり雨は
雨を招んでしまった
風の無能
鏡の前の
左脚の羽化
鳥が降り
見えなくなる
くりかえし降り
陰を ふくらませる
鏡の前で倍になり
曇 ....
雨がぽつぽつ
アスファルトには
できたばかりの真っ白な線
跡がつくかな
けこけこ
けこけこ
私の足音
蛙の鳴き声みたいだ
楽しいな靴のうらっかわ
けこけこ
けこけこ
あじさいがし ....
雨が降ってきた
それに加えて午後からは
槍まで降ってきた
雨が降ろうが
槍が降ろうが
必ず行くよ
と言っていた友人は
終に来ることはなかった
窓を開けると
代わり ....
幾重もの自己が折り重なる
形のない「私」の輪郭から
おろす瞼と塞いだ耳の感覚
閉ざされた世界で生まれる
殻が丁寧に剥がされてゆく
張った膜の内側で目覚めた
足りない酸素と視界の中で
....
写真になった父が 昔よりよく喋るようになった
弘法大師ゆかりの寺で ボロボロのジャンバーに
白髪を風に舞わせながら 少し笑ってピースなんかして
誰もいなくなる家を前に大丈夫、だというふうに ....
禁色を懐に纏い透明なさらさらとした波打ち際
便りも海風の知らせもない 天に祈る日々に満ち潮が止まり
息が出来ない
慕い人は振り向かずに 船を陸に進ませた
瞳が朱に滲む
一太 ....
ぶらんこの夕べはいつもさみしくて百を数えておしまいとする
日陰にはどくだみの花みっしりとわたしは毒を愛しています
砂山に取り残されたスコップは誰かの置いた傘の中にて
夏になるほんの少 ....
パパあれみて
ジャンボがあるいているよ
ねえねえ みてみて
けむりがおててつないででているよ
ようやくことばが使えるようになった息子ははしゃぐ
何時か
ジャンボが滑走路に ....
人のいないオフィスで
ただ一人沢山の暗号を受け取っている
私は組織からはぐれたかのように一人働いているが
その実は組織をつなぐ要となるために
組織により深く入り込んで一人になったの ....
革命家の雄たけびが群衆を動かし世を変革させるように
音楽家が奏でる音で聴衆を静まらせ割れんばかりの拍手をさらうように
宗教家が祈りと自他不二の行動で圧倒的弱者に笑顔を与えるように
芸術家の魂が創 ....
夜中に文字の束を積み上げていて
他の人が作った僕の知らない世界がそこにある
はずの本や紙を
積み上げていて
僕の目が時間を掛けて
解いていく
何ヶ月も掛けて
そこに
どれだ ....
わたしが
ものを思うあいだ
水はあふれ続けて
世界をしめらせていた
花は咲き揃っていた
腐りそうに甘い日陰で
決断も
選択も
もう必要じゃなかった
キミの笑顔が見れた日は、
見上げた空が曇っていても、降り注ぐ無数の滴が
宝石のように弾けるのを見て
街全体が、打楽器のようにリズムを奏で
耳を澄ませば、そこにもJAZZが流れて ....
雪降る夜を
ひとりぼっちで 歩いていると
白い狼が やって来て
きみの心を
咥えていって しまうでしょう
雪降る夜には
ひとりぼっちで 歩いていては いけません
雪降る夜には
....
四方に充満した水の粒子が
わたしの髪の毛を
ちぢれさせてゆく
梅雨に不機嫌になるのは
そんな他愛のない理由だった
透明な傘を持ち
すれ違う人が
生真面目な歩幅で
人を殺す理由
人 ....
私たち親子の手を見比べると
娘の手は白くて 細くて
張りがあって美しい
私の手は皮膚が薄くなって
血管が浮いて見える
やはり手には年齢がでるね
真面目なだけが取り柄で
洒落っ ....
驟雨に体毛を湿らせた質朴な黒い犬
保健所の網や容赦ない投石に怯え
疑念や懇願や脅えが入り交じった上目づかいの目
その犬は私だ
バーでフローズンダイキリを注文する
大海に小舟で漕ぎだそ ....
値札ついたままのぬいぐるみと話している
砂漠の真ん中で
洗濯機が回っている
インド綿のシャツを着た官吏が
時々中を覗きにやって来る
飛行機が上空を通過する
やり場のないコウモリ傘や
目新しい嘘を乗せて
真夏日 ....
目的があるときは
痛いところがあっても
気力をだして頑張るのに
余裕ができると
痛いところを探し始める
今日は腕が痛い
腰が痛い
布団の中で
朝すでに頭が痛い
どこか他に痛いとこ ....
踏まれた影は
足裏を剥がれ
午後の陽なたに取り残された
じりじり
地面に焼きついて
暗室に水を滴らせ
白く感光する
幼年の記憶
影を踏んだ子は
逃げていく
どこまで ....
夜
良い夢を見ようと
集中していたら眠れなくなった
仕方がないので
起きようとしたが
眼が裏返っていて
何も世間が見えない
暗転した中、手探りで
部屋の灯りのスィッチを ....
家を背負っているのではない
としても
先祖代々の戒名が殻に閉じ込められ
捨てることなど出来無い重み
ああ
家を捨てたナメクジよ
お前は…
傘もかわかない間に
また 雨がふる
あなたの瞳に 雨がふる
秋の公園に朝がきて
木漏れに異常なほど光さす
鈍い振り子の風が落ち葉を巻き上げる
はじめてきづいたのだけど
公園にはたくさんの人がいる
手をつないで目を細めている
でもなぜ?
巨木たちは ....
神宮前の小橋で懐かしのフォークソング唄う人
懐かしの?
わたしは懐かしのを知らない
知らない懐かしを知ったふりして心縮めていたの
右肩横をかすめて通りすぎた黒服男はも ....
水の昏さを溜めてゆく瞳に
追憶のかたちとして映る睡蓮
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