僕のなかの思想が燃える
公園の中を風が吹きすさぶ
穹窿に祈りが刻印される
僕は何者かを求め靴を捨てる
沈黙が時間に色づけする
植物は焦がれている
肺の中を一本の電車が通過する
銀色の ....
ちりめんじゃこを
食いながら
一匹一匹に
詫びを入れる
こんなにも
ひろびろと
あおい風のなかで
ぼくらは
鳥になれない
だから
雲よ
ぼくらは
こうして寝ころんで
風をつるのだ
頂にさく
空のしずくのように
お腹から卵を一つ取り出して 私は一つの「し」をつくる
月に向かって 卵を放り投げておくと
月は空で泪目になるころ 「し」をこぼす
私は卵を産むために 屋根裏部屋で猫とじゃれ合い
卵を夜 ....
傘の存在しない国の雨の髪
かつて 私は素を求め手を 合わせ
智慧と祈りの谷間で不完全さの完璧を認めてもらう為
老婆の姿に斥力に撥ねる 若気と蒼穹を追いかける青の一筋を
巧みに連ね 貫いた
....
遠い旅先の、見知らぬ街で
風に震える…痩せっぽちで
牙を向く、狼の哀しみ
暗雲に覆われた空を仰いでは
見知らぬ人々の靴音、行き交う
孤独な雑踏の
只中で
今日も独り、立ち尽くす
....
わたしの苦しみは
わたしの苦しみ
あなたには体験できない
あなたの苦しみは
あなたの苦しみ
わたしには体験できない
この世界の美しさは
この世界という美しさ
わたし達は体験でき ....
「暑いよ、暑いよぅ」
振り向けば
声の主はキャベツらしかった
東八通りでおれは
扉が透けた
コインロッカーのようなものに
入れられたキャベツに
助けを求められていた
これが新型 良 ....
蒼くて暗い水槽で
浮かぶ海月のそのさまは
まるでたましいのようなこと
ふうわりとぷかぷかと
あてどもなくぶらぶらと
行きつく先もわ ....
理由のいらない椅子が並ぶ
未明に墜落した紙飛行機の残骸と
食べかけのルーマニア菓子
砂浜の砂の数は
既に数え尽くしてしまった
栞の代わりに挟んだ魚が
静かに発酵して
すべての ....
【幸福な魚】
福はあなたのまわりに 居ますか?
幸福のフクですよ。何言ってるのですか?
福は生き物に決まっているじゃあありませんか
なになに幸福が生き物だとしたら
め ....
冷蔵庫のコンデンサと
コンプレッサとが
ご機嫌いかが と適時にささやく
そして そのたびに
卒寿のおひとりさまは
ぴくっとして 暮しの流れに竿をさす
過ぎた四次元の追憶を迫 ....
僕の頭を開けてごらん
中にも僕がいるでしょう
そいつはしかし偽物だ
さあもうひとつ開けてごらん
そこにも僕がいるでしょう
そいつもしかし本物じゃない
どいつもこいつも容れものなんだ
開け ....
人間としての純粋さは
美しすぎる少年のように夭折した
私はそれを補うものとして
社会という書物を解読する意欲に満ちて
純粋なサラリーマンになった
だが純粋なサラリーマンはあっけな ....
朝夕と寒さの残る白樺湖のほとりの美術館で娘と戯れる。
初めて間近に見る大きな影絵は色鮮やかに娘の眼前に聳え立つ。
後往く月この戯れが続くのだろう。
残された日々はあまりにも短く感じる ....
街角の雑貨店に流れるオルゴールの音色が心地よい。
店番をしている若い雌猫のカフェオーレのような顔もまた楽しい。
店の扉を押し開けてのっそりと入ってくる常連の猫は
手入れの行き届いたひ ....
{引用=お隣りさんから伸びている皐月の枝に腹を立てて
お父さん、チェーンソーで切ったのよ
根元から
}
母の愚痴のほぼ全ては父のことで占められているから
電話はいつも父への悪口で終わるの ....
ジャガイモ一袋かごの中へ
ゴツゴツした日焼け顔が笑う
にんじん一袋かごの中へ
面長のすまし顔が知らんぷり
たまねぎ一袋かごの中へ
まんまる顔の泣き顔がうつむく
豚肉 ....
梅雨空の悲鳴
私の空はやけに立て付けが悪い
私は有無を言わさず空を閉じる
天国など空から見えるわけもなく
ただひたすら空は鈍色だ
君がどの辺(あたり)に上ってゆくのか
風が吹いている
ダ ....
自然にできたグループに分かれて
植民地時代のボストンの街並みを色画用紙で再現している
春陽に包まれた5年生の教室
その穏やかな空間に一瞬そよ風が吹いて
支援クラスに行っていた娘がひらりと入 ....
おれが息をする夜
この部屋の明かりは
林道にぽつりんと佇む
自動販売機
蛍光灯をカナブンが舞う
2ストロークのエンジン
ギアはまだ1速
目を閉じると
それはまるでチェーンソー
古 ....
『難破船』 あおい満月
(書きたいなら、食べなさい)
誰かの声に瞬きをすると硝子の壁の向こうに、
肉や魚や、
色とりどりに切り刻まれ、
煮込まれた野菜たち ....
きのう
電線の張替工事があって
声が途絶えた
それからというものの
すずめの親鳥が
トランスのあたりをちょろちょろしている
巣は
除去されていたよ
それから
ふだんはこの街にいないは ....
それでも時は流れていく
ゆっくりと
淀みなく
立ち止まる想いを押しのけ
焦る足元も
掬いあげ
鳴り響く発車のベルの音
口ごもる詩を
何度も試み
置き去りにされる記憶を
追いかけ ....
容赦なく
照りつける太陽から
逃れるように
白い日傘が路地の奥へと入ってゆく
打ち水をしたアスファルト
ゴーヤ棚が繁って日陰をつくっている
縁台でのんびり寝ている野良猫
軒下には硝子 ....
五感に塩漬けされた記憶の味が
酸っぱくなってゆくようだ
母は既に亡くなり
カビの生えた世間知らずの正義と理想を
空は紐で繋いで晒し者にする
生温い風に扇がれて
都会のビルの間で尾鰭を振 ....
部屋に海が落ちていた
魚の姿は見えなかったが
遥か遠くを
タンカーが航行していた
朝のうちは
キッチンの方へと吹く
潮風にあたり
そのように過ごした
午後 ....
愛とか恋とか売買できるものだと思っていた
遥か遠い叶わぬこの気持ち
たくさんの壁があるこの気持ち
声だけで繋がれるこの気持ちは
一体なんと呼ぶのであろう
貴方の頬に触れたいこの気持ち ....
先人は言った
「高く翔べ」
「真っ直ぐ翔べ」
「ゆっくり翔べ」
しかし私は
ゆっくりとは翔べなかった
あまりにも
あまりにも生き急いでしまった
堕ちた翼は
折れた翼は
二度と翔 ....
川の底で
石くれが削れていく
棚の奥で
干菓子が湿気っていく
人がまた
一つずつ年老いていく
失われていく何かを
今日もただ見守りながら
床の上で
米粒が乾い ....
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