秋の風は寄せては返す波
蝉は近くてどこか遠い
空洞に宿った声もまたよそよそしい
蝶のかたはね、
蜘蛛のひとあし、
うすい影をまとって
手のひらにのせれば
軽くて重い
この夏を生き延びた ....
 余った腕は力を脱いて 指をかるく握る
 人さし指だけすこし立てて
 みぎ足 引いてひだりはそのまま
 そう ずらした軸を忘れないで
 鏡 ここに置いておくから

 そこで足を組むならもっ ....
人里離れた木の家で
タイプライターで小説を書いていたい

静かに、小さく、ひとりで



忘れられたピンボール・マシン
白黒写真にだけ残ってる
白骨化した遺体みたいに

静か、 ....
真夜中の、それも特に舗装もされていない道には気をつけることがある
これは僕の中にあるよくない傾向なのです
たとえばお金を拾うことは先ずないし(暗いからね)
本物の幽霊をみることもない(きみは ....
焼けつく夕日が焼けつく 脳裏を焼いて 焼き付く夕日
まぶしく夕日がまばたく まばらに赤く 火をまぶす

赤錆びて ブランコ 赤錆びて 回る子の鎖
うらぶれて倉庫の 何世紀 遠いどこそこに かぶ ....
 ちいさくて固い 心臓が
 そっと弛まるように
 白い雲は
 もう 空の高さを競わなくなった

 風が足跡をうずめるように
 虫達も その聲を次第に顰ませて
 次つぎと落ちて プリズムの ....
ダイヤモンドの針をそっと置く

行っておいで

想い出は遠くなるばかりで
美化されたがっているのはなぜだろうか
この溝は
なぞられれば現れる道だ
ふたたび
さみしさの琴線に音を咲かせ ....
小さな手花火
火をつけられたら 
そこからはじまる
儀式
一瞬燃えたあと
丸く赤い心臓が生まれ
酸素を吸って
チカチカと
この世ではじける
火の花
いっときの命
えいえんには続か ....
   オーム(あるいは人の死)



 その人は象徴を求めない
 鏡もまがたまもいらない

 その身を世界のくらやみに置かなくては
 鳥たちの空を見上げることは許されない

  キ ....
 子どもが さけぶ 肺をからにして
 名前を奪われた 動物を確かめ
 さけぶ こめかみをふるわせ
 おなじ靴、おなじ服
 好きになれない 名前 みなひとまとめに
 ぬぎ捨て駆ける

 さ ....
亡びたもののあかるさが満ちる夏の庭
もう誰も時刻を読むことのない白い日時計
茂みに囲まれた小さな池

茂みをざわめかせていた風がやむと
あちこちの陰にひそんでいた気配たちが
(それが何の気 ....
夏の雨が降るとやってくるシロイルカ
冷蔵庫から勝手にサーモンなんか出して盗み食いしてる
(いいけど、いいんだけどね。そのために買っといたんだけどね。柿の種もあるよ)
腹が満ちたら、さてっと、やる ....
 忘れ物 に なったハンカチ
 あわいもも色 うさぎを飼って
 駅の向こうから来る
 おんなの子を見て
 つれていって
 と、輪をかいた
 石のむれをしずめた 海と
 とおい空 かすれた ....
 ゆれる ぬけがらの重さ
 ひとつひとつ 声に彫られた
 ふるい幹のこまかな傷と

 蝉と烏 青を奪いあう
 にぎやかな今日

 不意につまづく
 日傘をさした子づれの伝道師が
 扉 ....
夏の水の力を借りて
包丁を研ぐ
冷たい石の周りで
世界は沸騰し騒騒しい
蝉は
悲しみを
果てまで
追い詰めて鳴く

時折
人差し指で
刃に触れて確かめる
すり減りながら
鈍色 ....
刻も戯れも心音も手招いて誘う
こころ あちらへ こちらへ
揺るがして手放す
なみだの群れは押し寄せて 弾き 引っ張る
しなだれる砂 きぬずれの脚
よるの はまゆう



 ....
日差しの刃に斬られ
だらしなく溶けてゆくかき氷の
まだ冷たいスプーンをなめながら
またひとつ星がおちたのに気づく

小豆とぎと河童と
座敷わらしとあと誰だっけ
訃報を連絡するために
黴 ....
左手に溶けたアイスクリーム
右目に遠ざかる稜線
風の音しかしない口笛

右足で蹴ったゴミ箱
左耳で聞いた流行歌
海の匂いしかしない溜息

右手は枯れたサボテン
左足は錆びた自転車 ....
たどたどしい指が生み出す
バッハのプレリュードを
小さな鉢植えに収まったサボテンだけが
棘をかたむけて聴いている

他の観葉植物は枯れて
手元に残ったそれは
巣立っていった息子が置いてい ....
裏路地、提携する眼
蔓延る窓
分裂する窓
その狭間で女は窓を拭き続ける
手にしたウエスは適度な温度を保ち
それはまた彼女の無口だった

無口の中には一人の海がいる
私と私たちは ....
雨上がり、路面電車が
湿りの中で発光したまま
緩やかなカーブを破壊していく
何の変哲もない病室に
復員したばかりの真昼と青空
そこでは誰もが幸せそうに
夕食に出た鰊料理の話をしてい ....
雨の気配を感じて手のひらを空へ差し出す

つるりとして
なだらかな
わたしの丘に
今日の雨粒が流れたら
くぼ地の枯れた水路が
一瞬よみがえる
かつて
そこへ流して遊んだ
笹の葉や
 ....
 真夜中に点灯した冷蔵庫の奥であらゆる向きに齧られたチー
 ズケーキが発見された\反射的にわたしもかじりつき\素早
 く体温を加え咀嚼を開始\ねっとりうっとり\うまれるチー
 ズケーキのかがやき ....
曲げた躰をハートの形に触れ合わせ
あおく短い空を翅ごとに掴む
 (静かに震えながら)
何を見ている
何を感じた
 (水と血が滲じむと)

小川に沿って気流が乱れ
深い茂みが盛り上がる度 ....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節

室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる

乾いているようにみえても
繊維 ....
虹を作る
その生き物の背中には羽があって
だけどそれは
空を飛ぶためのものじゃないらしい
六月の晴れ間を見つけると
庭にぴょこんととびだして
霧を吹きかけて虹を作る
小さな生き物は
小 ....
 見えない陣が静かに張られ
 消せない悔いを学ばされる
 通学の青にも馴れた頃

 無菌にされてゆく教室で
 午後の解答欄をはみだした
 もっとひろい紙の方へ
 未来をつかうことば達を黙 ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している

海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
青りんごは自ら枝を手放して
地に落下した
それは手のひらにすっぽり包まれるほど小さく
人が食べ頃だと思うには到底未成熟だった

わたしにもっといい耳があれば
落ちた理由が聴こえたかもしれな ....
胸間からとおくとおく、袍の指先まで
崩れかけた山肌をなぞっているのでしょう
その眦など、乾いては渇いては
照り返したその頬の、なんともはや
かがりくるう、つむじあたりに、かえして
つぶらのか ....
ただのみきやさんのおすすめリスト(14283)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
渚にて- そらの珊 ...自由詩7*23-9-7
クロッキー- soft_machine自由詩9*23-9-6
- 由比良 ...自由詩7+*23-9-5
快便な生活(応答風に)- アラガイ ...自由詩6*23-9-3
- なけま、 ...自由詩523-8-23
回帰線- soft_machine自由詩823-8-22
オールドレコードに寄す- そらの珊 ...自由詩9*23-8-21
線香花火- そらの珊 ...自由詩13*23-8-14
オーム(あるいは人の死)- soft_machine自由詩5*23-8-12
こどものせかい- soft_machine自由詩9*23-8-9
夏の庭にて- 塔野夏子自由詩14*23-8-7
シロイルカとの日々- そらの珊 ...自由詩8*23-8-7
忘れ物になったハンカチ- soft_machine自由詩12*23-8-5
青い影- soft_machine自由詩523-8-4
- そらの珊 ...自由詩13+*23-8-4
潮夜- 唐草フウ自由詩10*23-8-1
失う夏のソネット- 佐々宝砂自由詩6*23-7-28
- 夏井椋也自由詩5*23-7-28
夏の日のプレリュード- そらの珊 ...自由詩11*23-7-21
裏路地- たもつ自由詩7*23-7-19
撃鉄- たもつ自由詩523-7-16
手のひらの丘- そらの珊 ...自由詩19*23-7-12
チーズケーキとリルケ- soft_machine自由詩11*23-7-8
蜻蛉- soft_machine自由詩523-7-4
梅雨の通夜- そらの珊 ...自由詩11*23-6-30
小さな生き物- そらの珊 ...自由詩9*23-6-28
テスト期間- soft_machine自由詩423-6-22
ヒメジョオンの巷- そらの珊 ...自由詩13*23-6-19
梅雨に捧げる供物として- そらの珊 ...自由詩5*23-6-14
半可通の蛭- あらい自由詩223-6-13

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