風と光
肌触りと眼差し
雲と微笑
素っ気なさとほつれめ
先週より軽い靴音
長袖シャツの袖口が気になる
温かいコーヒーを飲もうと
財布を探った手が
ポケットの温もりを探し当てた
....
輝く想いを
お気に入りの
箱にいれて
静かに
鍵を
掛けましょう
胸に抱いて
ゆっくり
頬擦りしてから
心の海に
そっと
沈めましょう
落ちて
落ちて
底に ....
朝がいそいでいる
子の笑う声のような
光たちを小脇に抱えて
ガラスの球は真ん中から
はっきりとふたつに割れた
きみが急に
うたうからだよ
ゆうべ見 ....
午前五時。満たされた心に筆が泣いている。
家を出て川辺に立ち、今は何も語らないせせらぎが時を刻む。
頭にぽっかりと穴が開き、そこに寂寞が広がるのはなぜ?
こんなにも心は満たされているのに。
....
なんにもない場所で佇んでいる冬とは対照的に
待ち望まれていた秋がシャンデリアのもと自意識過剰に笑みつつ
深夜の鏡に自分を映し深紅の薔薇へのまなざしをして
まだ気がついてはいない
季節風すら ....
証拠を埋めたシャベルの音が残っている
おばあちゃんは栗をむく
背中を丸めて栗をむく
かたいかたい栗をむく
息子にも
娘にも
孫にも食べさせたい
むいたほうが食べやすい
ただそれだけで
もくもくと
真剣に
一 ....
溶けてくるのは腰?
いや、そうではあるまい
それは、キャベツであったはずだ
あるいはお前そのものであったか?
みかんの骨はおそらくは蝶になるのだろうが
蝶の飛ぶ空だけは残して欲しい
願 ....
たわんだガラス窓をひたすらに登ろうとしている羽蟻を見ていた。
同じ動作を飽きもせず繰り返している。
彼はなぜその小さな背に生えている羽を使わないのだろう。
よく見るとその羽は見る影もなく疲れ ....
一
夜の水平線が
両の腕をさしのべ
その手で満月を挟み
嘆く空から引き離し
海の底に沈めた
光が闇に溶けて
波の下に燃えつき
殺風景な夜空に
取り ....
散る為に咲くその姿
折り摘まれしばし綻ぶ
咲く為に地にしがみつき
季節の風をうけとめて
けなげとは
このことにあると言わんばかりに
誰につたえることなく
自らの ....
星のみえない夜にも
星は存在する
風にふれない丘にも
風は存在する
あなたが消えたあとにも
あなたは存在しつづける
両のてのひらを
まるくして合わせる
透明な卵だよ、ほら
絶望の谷に
叩きつけられたことの
ある人は
簡単に
浮いたり沈んだり
今日のメニューで
右に寄ったり
左に寄ったりはしない
眼を見てごらんよ
目が合っていても
捉え ....
8人兄妹の7番目がエリンギ
やりたいこと
という
なにものにも抑圧されない
わたし
としての
遅すぎる歩み
はじめて
はじめました
誰かに
反対されても
行く
ひかれたレールの上ではない
動き
....
空き地を渡ってきた風が
草の匂いを閃かせながら
耳もとで
ささやく
「ただいま・・・」
あっ
帰ってきたの?
君と出会ったのが
いつだったか
どこだったのか
思い出す前に
懐 ....
出ていかなければならない
と知っている
部屋は
あなたとあなたでないものでできている
このまま朝は終わらずに
言葉もひとつも終わらずに
開かれなかった小説
届けられなかった手紙
呼ばれ ....
カラスが秋をたべていた
山のぶどうをたべていた
私をみても驚かず
驚く私をみつめてた
秋風つめたく
カラスの背を撫でて
なぜか私が
身震いをする
ぶどう色した
秋をやきつ ....
人が交差する地下街
人形売り場の前の通路に
子どもの泣き叫ぶ声がわき
困惑ししかりつける若い母親
微笑んで通り過ぎる年配の夫婦
遠い日のにがい記憶がよみがえる
鄙びたドリーラ ....
現代詩の向こう側で
、君は大味の言葉を砕いている
現代詩の向こう側で
、君はいかにもな表現を潰している
現代詩の向こう側で
、君はそれらしい物語を消している
それは確かなことだ
....
終わらない
冬の時代
雪は降りやまず
溶けようとはしない
隅々まで覆う雪原を
横切っていく犬の群れ
引かれる橇の
手綱を取るのは
死神か 腹黒い
サ ....
二十歳になったばかり
一方的な失恋の末
浪人時代の
受験戦争に嫌気がさして
Cigaretteを吸い始めた
カリブ諸島原産のCigaretteは
大航海時代にコロンブスが
率いるアメ ....
煤けた屋根裏部屋でまだ見ぬ宝物を探すような胸の高鳴りを感じる。
僕はトム・ソーヤであり、私は赤毛のアンであった。
一方に父方の威厳を、また一方に母方の愛情を持つ感覚。
目に見えないものを見、聴こ ....
終点で車掌に起こしてもらう予定で寝る
兵士を探している
冬の砂を知らない
兵士を探している
時と共に変わる
陽と同じ色の
戦士を探している
戦士を探している
夢のなかの会話の
戦士を探している
背 ....
日差しが強いほど
濃い影が地面に宿る
陽のあたる場所にも
賞賛や成功の裏にも
濃く宿る苦悩があるだろう
暗闇の中では
手元の灯りを頼りに進むほかはない
苦悩の闇の中では
....
非力な腕を月に掲げて
一つ笑って眠りにつきましょう 明日には 違う世界にたたずんでいることを祈りつつ
一言言うたびに 空気が研ぎ澄まされて
一つの疑問を空に投げかけるたびに 一つの命が生まれ ....
いちまい
羽織って おゆきなさい
おつきさまも
羽織っているよ
いち せんちめんたるを
********************
....
彼岸花が
目から胸へと突き刺さり
赤い秋が
まっすぐにある
背中にある罪悪感は
この風には重いのだろう
まだとべないこの身の
清め先を
また探す道
お昼休みの中庭に
理科部の男子が
窓から放したハムスター
クローバーをむしゃむしゃ食べた
タンポポも食べるよって
誰かがいった
ストローみたいな茎のはじから
食べていって
....
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