「なんしてんねん?」
「さぼってんねん。」
答えた少女は、まるでトマトのようだった
屋上には風が吹いていて、6月は晴着の上から合羽を纏った
水色と混ざり合った少女は、何者でもなく
....
湖岸に立つ私に風は爽やかで
静寂の中に鳥たちの声が聴こえる。
靄のかかった湖面から小枝が屹立する情景は
私に生命力の尊さを教えてくれる。
静かに歩み寄る初夏の足音に耳をすませ ....
裏切りは
地の果てへといずれ続く
人のいない棺
花々でいっぱいだけれど
人間が不在である
次々とメロディーを殺戮していく
華やかな波動
私は人を裏切ったことが
愛する人 ....
寝起きの
かすれた視界でも
はっきりと片腕が
太いのがわかった
昨日
止血したせいかと思う
腕をまっすぐ上げよう
治るかもしれない
すると
タクシーが止まってしまう
横 ....
ページを捲っていくと
その先に
廃線の決まった駅がある
名前の知られていない従弟が
ベンチに座って
細い背中を掻いている
とりとめのない
日常のようなものは延々と続き
梅雨の晴れ ....
振り返りもせずに愛は逝く
小さな誤解を積み重ねて塔のうえに登る
そこから遠望する世界を胸に抱いて
おびただしいビジョンを想い描いて
立ち止まりもせずに愛は逝く
高邁な殻を脱ぎ捨てて脱皮す ....
わたしは海の月
波間を漂うお月様の影です
仲間があなた達を刺すこともありますが
JAWSほどの脅威でもないので許してやってください
ときどきあなたがたの住む都市という
人工世界を ....
HelloとBonjourの狭間で
君が、
さよならを置くべき場所に惑っていたから
僕は、
蛹のままで居続けることは
酷く怠慢ではないのだろうかと憤り始めた
蜘蛛は ....
卒寿となった いま
おらはすなおに 向きあえなくなった
たとえば 漫才にも
絶えず輪転をつづける
中学大学時代での走馬灯が
....
雨の夜の物語は 濡れた
石灯籠に絡みつく 蛇の赤い舌先に
想いは 蛍火にほの暗く 闇に
浮かび上がる 老いた眼は 涙に濡れている
森が深さを増し 光を拒み始める
明るい陽光に踊る ....
肩胛骨の軋む音が伝うたびに、背なのうぶ毛の震えに耳を澄ましては、
はね、がめりめりと肉を突き破り産まれてくる様を、夢想して射精へと至る。
手を抜けば死に体となりて、こうべを垂れるのみでよい ....
風が吹き寄せる
この今を追いやるようにして
佇むことしかできないまま
耳を澄まして 目を閉じて あの頃を思い浮かべる
かけがえのないことだった
離れてから気づく感慨は
あり ....
跳ねる。狂わすように精密なリズムで、拿捕。
わくわくするよに踊るような混沌を混ぜ合わせたなら、
騙し絵みたいな階段で、ついらく、していくことを誰かが池を賑わす魚みたいに呼んだ。
なぁ群青色よ ....
いっとき
誰かをおもい
泣いたとしても
朝が来れば
人は顔を洗い
食事をし
読みかけの本の頁を開く
晴れていれば
陽を浴びに出かけ
つばめが巣立てば
ほほえむでしょう
四葉のクロ ....
配達中にラジオで聴いた
でんでんむしを歌うあいだしょうこ
WIINKのあの娘だとおもった
つのだせやりだせあたまだせ
でんでんむしが言うには
そんなのわかってる
あんたこそ元気 ....
水より安い酒を友としている
長文及び乱文のごとく酒
赤ちゃんの匂い 柔らかい肌の匂い
ふわふわの肌着の匂い あたたかいホッペの匂い
新生児のウンチは 美しいきいろ
お日様の下でひなたぼっこした後の
どんな高価な石鹸の匂いよりも
甘くて 柔らか ....
私の
右のてのひら
左のてのひら
載っているのは
目に見えるものばかりではない
見えないけれども
無力でもないそれらは
良いものとは限らず
悪いものとも限らない
間違えて捨て
間違 ....
くたびれた我が身に
赤い旗がいくつも立つ
宣告は容赦なくて不要物に
なる日もとおくはない
息子達のために生きているつもりでも
やつらからはなんの音信もなくて
CSN&Y
ぼくたち ....
間違い始めた瞬間には
それが過ちだなんて信じられない
僕は幼くて
君は僕にとって煙草みたいなもの
手頃で歪な灰と空間だった
君がそれに気付いていたのかは
もう今さらどうでも良いけれど
....
目の開いたバラバラ死体を私はずっと捜していた
手はお喋りだと口がくちぐちに言うので
うるさい手を切り落として 口に食わせた
口は満足そうに 黙ってくれた
足は突っ立って進むことしか ....
きれいきれい
爪も髪も肌も
靴も上等 生地も最高
そんなまるまるちゃんを裏がえしたら
たぶん手に入れやすいブランドのタグついてる
自分の失ったものに色や形があればいい
失ったとき気づくから
何を失ったかわからないまま
生きるのはなんだか切ない
失うものにさようならやありがとう
と言えたらいいのに
小さなへびかと思ったら
いつかちぎれた
しましま模様の靴紐だった
だとしてももう
それをくぐらせるズックの穴がない
わたしにはもはや必要ないものだったので
さよならを言って
立ち去るくら ....
右、右、右、もうちょっと左、
あふれだす切実
あのひかり
かなしみ
ほこりやにおい
おんなが語り出す
床の間の水仙までが冷たく見えたお正月
馬鹿もいたろう ....
人間といったところで
革袋に詰め込まれ
骨に抱えられた
一本の管
一日一日隠し事が増えてゆく。
ゴッホはどうだ。
モーツァルトはどうだ。
あなたはどうだ。
言葉に気持ちを乗せてみると意外と楽になるね。
何を望んでいるのか私にはわからない ....
何度繰り返せば気が済むのだろう。
私は自分を見た。
逃れがたい現実から目を背けてばかりで。
今日もまた一冊の書物の中に引きこもる。
死にたい なぜ。
死にたくない なぜ。 ....
ドゴール空港は鉛色の霧に閉ざされ
次にくる四分音符を待っていた
誰を待つこともないのに
今朝食べたチキンサラダの余韻が舌に残り
ぼくは何故か戸惑っていた
くたびれたレインコートが黒ず ....
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