幼いころの古びた靴は
シャベルよりも
ずっと小さくて、
土遊びをしながら
泥だらけで夕暮れに沈んでいた。
永くて遠い春はすでに
まなざしの向こうにあって、

冬を越えるたび
軽くうな ....
三月の冷たい空
人のない荒野のへりに
胸を反らして 風を呼んでみた
新たな扉が鳴るかと見えたが
風はちっとも答えなかった

すぐに答えは
あると思った
脇腹の かすかな痛み
だが
 ....
  缶の 胚は
  ここのつに 今 熟し
  むらさきにささける 夜
  埃、あかい くらがり
  埃、くらい あおやぎ
  埃、あおい しらなみ
  埃・埃・埃……
  埃、あ ....
風の幕をそっと空へ還すように
温かく見守る 吹いてくる知らせ

風は笛を吹く
物心つく頃には耳にできない 笛の讃頌

風の演奏誘うような 最前線

朱華色
鬱金色
それに
 ....
 ランプスポットに明かりが灯る頃、
 私は常連客に珈琲を淹れていた。
 柔らかな音楽が流れ、
 店内は優しい暖色に包まれていた。

 お客の一人は英字新聞を何かに切り張りしていた。
 他の ....
 さて、私の航海はこれで何度目だろう。
 未だ明けきらない朝に、港の喧騒は透明だ。
 果物かごを抱えた婦人が通り過ぎ、
 口髭をたくわえた紳士に足音はない。

 静寂なのだ。
 この神 ....
拙訳


空舞う者

我らが主クリストに

今朝、夜明けの{ルビ族=やから}を見た
光の国の{ルビ御子=みこ}、隼はまだらな暁を浴びて
天の波涛を飛ぶ。その下に風は止まず流れた
 ....
   暗闇で会話する
   わたしの鼓動と
     
   悲しくはない?
    ―かなしくはない
   
   寂しくはない?
    ―さびしくもない  
   
   無理 ....
死者はいつでも待っている
あなたの過ぎゆく並木道で
枯葉舞う、からっ風と共に

思いの外
素敵ないたずらを、起こそうと  
うさぎは
ときおりたちどまり
ふりかえる
そこに菜の花がうすくゆれていた
まるで
なにかのじゅそみたいで
なにかのしゅくふくみたいで

ながい耳は
遠い音をつかまえるため
生きるこ ....
みなみ町の角を曲がると 
尾ひれがついてくる

それが嘘だと決められれば 
楽だったのだが

尻尾と箒を間違えたから 
柄で叩かれた

太鼓のバチ以上に 罰当たりな当たり方で
 ....
桃始笑
ももはじめてさく


コートを脱いだら
沈黙していた鎖骨が
独り語りを始める

ポケットから出た
あてどない指先が
止まり木を探している

音符を思い出した
爪先 ....
出発は時刻を持たない
ただ消長する獣の声が遠くに響くのみだ
石たちは獣とともに鳴動する
その冷たいおもてに私はまなざしを遺していく

かつて出発とは地上から月へ向かうものだった
だ ....
空っぽの硝子の鳥籠に
早春の光が淡く虹色に差す

そうすると
わたしはうすい水色の服を着たくなる

――籠の外では生きられない
  華奢ないきものだったはずなのに

  でも囀りは  ....
冷蔵庫から鶏肉をだす
ぐにゃぐにゃしているので
キッチンバサミで切る
小さく切る
どんどん切る

鳥だったことを想う
もしかしたら人間だってこうしたら
切れるんじゃね?
食えるんじゃ ....

街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント

普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも

 ....
ささやきかけるかさのかげ
母音の樹が揺れる

ふたりで歩いていく
丘の上へ 遠くまで

のびていく記憶

いそがなきゃ
走りはじめる
わたしたちを

月が見ている

それを ....
連日
本曇りの弥生が続いている
気温はおとなしくなったのだが
体温は気ままにとはゆかない
卒寿の身では
冬装束で身構え続けている

遠くで鴉がうなっている
   森の息使いは まだ
 ....
おなかの小魚はときどき小ちゃな声で鳴くたいせつな奴だ

電子ジャーの独り言を翻訳しながら夜が明ける

痛みっていつも友達だったなこれからもよろしくな

僕の休日は病院に奪われてディスカウン ....
とぼとぼと歩く駅からの道
辺りはすっかりと暗くなり
私の大きな背中は闇夜に消えて行く
道端の草木はもう姿を現さない
自然は朝の生き物だ
若しくは昼間に呼吸する天然物だ

道路には車が行き ....
夕暮れの空は
少し甘めのコーディアル
濁り踏み荒らされた雪解けの道に
照り返し

闇雲な胸騒ぎも
無知な喧噪も
先鋭化した矛盾の
せっかくの露呈も

ほんのり澄んだ彩で
やさしく ....
宇宙は無という空虚な大地を開拓している

有を生み出しながら

自由と孤独が漂う中を

淡々と



人間は人生という草原を旅している

他人から自分というものを認識しながら
 ....
シンデレラとの面会は

面会室と決まっている

透明なアクリルを挟んで

踏み切りの向こう側に

自分を見つめるように

血が付いた千円札三枚だ

夏目漱石の涼しげな顔

 ....
なにかの牙が落ちている
(もちろんわたしのものではない)
足先で蹴るところころ転がる
道に尖った白い牙が
矢印のようにあらぬ方向を指して
陽射しの中で輝いて見える
犬かなにかの牙だと思うが ....
数えきれないだろう
あなたを探した朝の数など
数えきれないだろう
あなたと笑った昼の数など
数えきれないだろう
あなたを憂えた夜の数など
数えきれないだろう
あなたと歩いた道の数など
 ....
夜 狂いのむごたらしい清潔さ
不眠はわたしの明晰を鍛える
すべての致命傷がやがて
朝焼けに染まるように

消毒する どうせ助からないのだから
深夜 信号の変わった道路を
ふたりで歩いて ....
 自分に負けそうな夜。
 一人で泣くことも出来ない。
 頭の中は真っ白け。
 逃げ道ばかり探してる。

 こんなにつらい夜はない。
 体の力が抜けてゆく。
 なにか大きな怪物に
  ....
笑っている或は微笑んでいるきみを
僕は安心して受けとめるだろう
ボディランゲージとして

でもひとりになったときの
君の顔をしらないんだ

あっけらかんとしてあの時は不倫しててね
と皆 ....
小さな火種はやがて
大きく育っておもいのほか
はげしく燃えるものだから
たじろぎ
あとずさりしたボクを
キミはすこし笑った

よく燃えるね
木と紙でできた家だからね
それに……
怒 ....
夜がすっかり明けて
なにもかも
とりかえしがつかなくなってから
あちらからもこちらからも心優しい人々が
花を抱えてやってきた
涙を流し祈りをささげた

いつもそうだ
愛されていた人が
 ....
ただのみきやさんのおすすめリスト(14211)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
たんぽぽ花粉予報- りゅうの ...自由詩17*16-3-13
人のない荒野のへりに- オイタル自由詩4*16-3-12
ginga- 草野春心自由詩116-3-12
「春」- 朝焼彩茜 ...自由詩1016-3-12
喫茶店- ヒヤシン ...自由詩6*16-3-12
航海- ヒヤシン ...自由詩10*16-3-12
ジェラード・マンリ・ホプキンス「空舞う者」拙訳- matirius自由詩1*16-3-12
鼓動- 石田とわ自由詩7*16-3-12
風のいたずら- 服部 剛自由詩216-3-11
野うさぎとして生きていく- そらの珊 ...自由詩816-3-11
南国の魔女か人魚か轟きか- 藤鈴呼自由詩2*16-3-10
桃始笑- nonya自由詩17*16-3-10
出発- 葉leaf自由詩316-3-10
硝子の鳥籠- 塔野夏子自由詩7*16-3-9
鳥料理- 朧月自由詩116-3-9
白いサプリメント- そらの珊 ...自由詩1316-3-9
樹と記憶- 渡邉建志自由詩416-3-8
老細胞の呟き(十)- 信天翁自由詩316-3-8
とっても素敵な世界へ- 梅昆布茶短歌15*16-3-7
道程- 鷲田自由詩316-3-7
ティータイム- Lucy自由詩14*16-3-7
- hiro自由詩216-3-7
面会室- 吉岡ペペ ...自由詩116-3-5
春の牙- 春日線香自由詩416-3-5
星の数- やまうち ...自由詩3*16-3-5
さくら- 川津 望自由詩416-3-5
大失態- ヒヤシン ...自由詩5*16-3-5
たった一人の- 梅昆布茶自由詩1316-3-4
春の焼失- そらの珊 ...自由詩1316-3-4
少年の夜- Lucy自由詩14+*16-3-3

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