昨夜も死と戦っていた
胃カメラを飲むように
ぼくは死と戦っていた
ずん胴な土管をイメージして
胃カメラをやり過ごすように
染み渡れ、縋りつけ、寄るべなき生に
薄 ....
美味しそうなものに向かうと
全身全霊、前のめりでピンと張る
いつも一緒かと思いきや
左右別々に、動いてもみせる
音を拾います
そこから
ここまでの
世界を知るための複雑な情報であ ....
ほどよいお湯で滝行
片づけておいてね、って 言った
私の責任だとしても
鞄という鞄の ファスナーもホックも全部
ジッパーは下ろされ パックリと口を開けて
私を 逆さまに覗いて笑っていた
自分では見 ....
妖怪
都会の妖怪は
昼間に出るらしい
夜は明るくて
隠れる場所が無いから
たとえば
人の途絶えた午後
ビルの屋上に出るドアの
前に佇む影
あるいは
休日の事務室に ....
硝子のむこうで
雨が呼んでいる
硝子のむこうで
闇がきらめいて
硝子のむこうで
孤独が浮遊する
四角い窓から
宇宙がもれだして
夜はカーテンと
ひとつになる
四角い ....
いくらの軍艦巻に
乗組員、数十名
生まれることを許されなかった
鮭の卵たち
テレビのニュースに
独裁者
彼を許すまじと
人々はその軍艦巻を
一口にほおばりながら ....
毛布の花が体の上で咲いている
冬の寒さを養分にして
何に耐えかねてか
世界からぱらぱらと言葉が剥がれ落ちる
きらめく言葉
傾いた言葉
青ざめた言葉
しどけない言葉
跳ねまわる言葉
何に耐えかねてか
僕からもぱらぱらと言葉が剥がれ落ち ....
降雨の色は
さながら玉虫
耳へ
迷い路の水滴音
風に舞う羽音
耳へ
吸い付く蝶の
模様の構造
針の穴通す
降雨
濡れ苔弾く
切り立つ
顔面岩
霧立ち上る
洞 ....
明日を描く筆が折れている
握りこぶしが茹でられてしまった
蝉しぐれのたらたら坂を
真っ赤な両手を引きずって上っていくと
向かいにやってくるのは
はたして豆腐小僧
「そんな」
「そんな腕で来た」
とは早口の詰り ....
橋はたそがれの海に沈み
むかしの城は黄金に
碧い水面をすべる鳶
かなたに飛行機
銀の軌跡を曳く
秋は燦々 美しく燃え
いのり実らせたまえ
安らぎよ 君にあれ
雑木林の木々に囲まれた湿った寂しい道を登ると
不意に緑の沼に射すくめられる。
ホテイアオイがゆっくりと揺れ ボーボーとウシガエルが鳴いていた。
あの年 この沼にまるまる肥った川エビがわいた。
....
整形がくずれてゆく
吐息の白さ
アンビバレンス
夜の駐車場でドラマみる
せつなく
虫みたいに死んでゆく
生まれかわる
なんどでも
生きなおすから
....
世の中にはあきらめの悪い男や女がいて
失敗にもめげず研究を重ね
ときには世間を驚かせるけれど…
昨年 クリスマスに
かがり火を焚いたシクラ ....
戦争跡地や
災害被災地を
訪れようとする観光がある
ダーク・ツーリズム
悲しみは
人を引きつける
死から
人は学ぶのだから、と
パネリストは言う
そうかもしれない
では ....
バンクス揃えて靡く真夜中の風
愛している 私の風
コマ送りされた記憶の点線を辿る
生意気に若気に殺気立ち 一太刀
大人になんて成れるものですか
人間ごときで ねえ風
私の風 愛している ....
ド阿呆な奴ら 陽にあたる
太陽も相当な 阿呆だな
時に毒なんか吐いてないと発狂に至る
至らないせいで 当たり場と修羅場と砂場
土踏まずのみ 鍛え上げられる
滑稽のコケッコウ リアル滑稽 ....
気を遣わないでと勝手なこと言われても
気を遣わない仲でしょうか
私は気を遣います 故 そちらこそ気を遣って頂きたい
空気をそれなりの 温度で読んで頂ければ 幸い
私も幸い
....
かつてキッチン(というよりは台所)は裸電球で照らされた寒い島だった
幼い私は台所のことを「だいどこ」と呼んで入り浸っていた
窓からは川へ下る坂道と隣家
(といっても音なんか聞こえないくらいには離 ....
イマオレはシアワセかもしれない
窓辺の木々に鳥のさえずり
雲のない空が端をいろどる
枕元にはチャイコフスキー
素肌のところだけひんやりしてる
いまから逮捕状をもって警 ....
ひやりとした北向きの一室で
意識はぼんやりにがい
明日はめんどうだから
月がもう一度登ればいいと思う
水道から
ちゃぴちゃぴ微かに漏れでる
わたしの自尊心
とんでもなく腹立 ....
行く手を遮る人のように
不安の影がたちこめる
追い払うために
小川のほとりに立つ
苔が敷き詰められた庭の清流
岩の向うに竹林の藪
たたずめば
火に群れる虫のように
影たちがどこから ....
せつなこと分解してことのはよむ永遠のきみの首をどうにかしてしまいたいぼくは、水彩が部屋から逃げて冬めいた色のなまえをかってにつけるきみを階段から突き落とすしかなくて、きみは笑いながら泣いている ....
「吐」
薔薇色の二酸化炭素
パッチワークの嘘
賑やかな流動体
ビタースウィートな溜め息
悩ましい亀裂から
漏れ出す黒い臭素
歪に膨れ上がる
柔らかすぎる容器
吐き出さ ....
朝は 叫ぶ
大抵は 二度の 自己主張
一度目は 髪の毛を 引っ張り過ぎだと言って
二度目は 時間が 無いのだと 言って
編み込む 母の手を 煩わす
幼い頃は その 膝の上で
....
傘を差す人が
行き交う街で
足早に散る
桜の花びらが
今年も短い
春を伝えた
雨上がりの
水溜まりに映る
ぼんやりとした
虹を渡りながら
....
何気なく剥くと、秋が出てくる。暗い場所に捨てられた石のように抱き合ったまま微睡むアリバイの無い〈真実と私〉が、突然光を浴びた性器の様に、居たたまれぬほど高鳴ったまま眠っている。
....
またひとつ一瞬が結晶化する。また1つ。それは、速度が潤うにつれ揺蕩う一瞬となり、群れから剥がれ落ちるように、また1つの一瞬となり結晶化する。点滅するこの世界の、瞬く一手一手は、奥に潜そんだ不可視の秒針 ....
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