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 冬
誰もが道行く姿に目をみはった
くすんだ家並の下町
それは何よりも奇異に映えた

女は山の手の私立病院に通う
病人ではない、看護師で
給料とボーナスを貯めて八年
恋人のひとりも作ら ....
待ちに待った夜が来て
冷たい風が触れ回る
枯葉を転がし踊り出す
{ルビカリアッハ・ベーラ=冬女王}の布告だよぅ
ゥゥゥウウー カラカラカラ…
南の御座には{ルビケリドウェン=冥府魔女}
出 ....
海底が隆起し水位が下がって
エベレスト界隈が空中に生えた頃
ナマズは汽水に放り込まれて
激烈な減圧に体を硬くしていた

それから雨が際限なく降り
雷鳴をも呑むほどの洪水が引いた頃
ナマズ ....
{ルビ日日=にちにち}を雑巾雨に打たれてる
一茎だけの蘭の花
百合より白い貌うつむけて
お前も夢に見ているか
さふらんのあの黄いろ

淡むらさきのさふらんは
遠く乾いた国に咲く
雨に溺 ....
垂乳根の母がそうしてこわれたら
貌あおみどりにこわばって
幽鬼のように見えましょう
蛍光管は外しましょ

こわれた母には濃い{ルビ布=きれ}でなく
産着の色を着せたげます
さきの事実は疾 ....
芥川龍之介とマリリン・モンローは
 
 一、生母の狂気遺伝にぼんやり怯えていた
 一、心身疲弊と神経症状に苛まれていた
 一、常用眠剤プラスαで眠り死んだ


傑出の質量はあたかも
恒 ....
 さっぱりわかりませんの
 もう何が何だか
とヘロデヤ
眉根を寄せて声をひそめる
ご近所さんと同じくさっぱり
「いや? 何かフツーのお子さんでしたよ?」

 母ひとり子ひとり
 懸命に ....
苛性ソーダを鍋で煮る
知っておるやら何の日か
泡立つおはじき夢に見る
わしの願掛け{ルビ三隣亡=さんりんぼう}

睦月いち足すじゅうににち
黒丸しるす{ルビ天赦日=てんしゃび}は
ひがみ ....
あれは
花の散る音だよ
花びらの儚くはがれ
地に落ちる音
砂に擦れる骨片の
乾いた軋みのようだろう

あれは
時の流れる音だよ
流砂のさらさら崩れ行く
風と波の造る音
私の体を通 ....
にわか雨が去ると
真冬の風が通りみち
樹木も人も躰を震わす
「バーイ!」
「バァーイ!」
交差点の娘たち
無敵の若さにさざめいて
もっと綺麗な明日に生きる
ヒラヒラと手を振って
ひと ....
輝く雲の湧きあがる空の果て
若者の最期は誰にも見届けられない
彼は太陽をその目に捉えて
振り返った時には姿を消していたのだ
母は名を呼び続け
長の年月探し続けたが
父は真新しい墓へ参る度に ....
思い描いた未来なんて
無意味なまぼろし
窓のガラスに描いた夢
流れ去って行く雲を数えて
惰眠を貪っている内に
ひとり丘に取り残されて
春かと思っていたのに
秋風が立っている

私を育 ....
帰宅早々インターフォンが鳴り
え? 宅急便?
受話器を取ると
「とりっくおあとりーと!」
子供達の雄叫びが両耳に飛び込んで来た
驚いた
かぼちゃランタンがそちこちに並ぶ時節
とうとうアク ....
ジェロニモは古い雑居ビルの二階にいる
逆立てた金髪の根元半分が黒い
豪壮なプリンあたまの
ぶざまに鼻の長いこの青年は
いつもどんより倦み疲れた顔で
ほぼ毎日同じ電車でプラットフォームに吐き出 ....
猫がふと
ベッドの上に端座して
スピーカーから流れる
フランソワーズ・アルディに耳を立て
神妙な顔で聴き入っている
「私の青春は去ってしまった…」

猫にもアンニュイがあるのだろうか
 ....
耳を塞いでよく聞きな
俺の生い立ちはこうだ
頭を巡らせてみると
格子の向こうに四角い光
その中からこっちを見ている一本の木
やっと首の据わった俺が
ベビーベッドの中にいたというわけさ
何 ....
ある所に六本指の女がいた
小指の横に不様な枝のよう
けれど女はピアノを愛した
弾けもせぬ楽器を愛した
美しい爪をして
ハープの弦の為にあるような
水晶の爪だった

鳥が飛ぶ
ガラスの ....
風売りが辻々に立ち
夏商い
キンギョソウ浴衣娘
花穂揺らし
神楽坂は汗ぬぐう貌
険もなし

逃げ水の小路の先
だんまり暖簾の昼寝蕎麦
白の碁石の艶
黒の碁石の涼
盤に零れてぱち、 ....
日曜日
公園端にひまわりが伸びていた
二輪はふてぶてしい黄色
子ども達のはしゃぎ声を
したり顔で見下ろしている
あと四、五本のはまだ早緑
背丈は一人前なのにねー

大きな葉っぱを着て
 ....
夏のくもり空は ぽぽち
雀のほっぺほどの ぽぽち
何だか眠くて ぽぽちぴ
鼻奥がのーのー詰まって来る

太陽も今日はカンバン
食器棚のおちゃわんの高台の中
ぐっすり眠ってるんじゃない?
 ....
 {引用=松田聖子との同時代はもはや左腕の種痘痕のみである。
                     哲学者 猿田川愕膳}
  具足の季節
          作詞:三浦徳子
        ....
しげ子には
何ひとつ起こらない
小説や映画の出来事は

重子は
それを不幸と考え
不当に感じている

茂子は
ひとり置き去りにされ
日常に縛られていると

繁子は
ドラマツル ....
 {引用=アースウインドアンドわしじゃ}
私の中のピッグス粒子
はブヒブヒブヒ
私の質量
とゆーより実質量を造作する
去年買った26インチが穿けない

腹を引っ込め

腰を捻じり
 ....
スー・チーは怒っていた
歯石に覆われ摩耗もした奥歯を3本抜く
その際の全身麻酔が老いた腎臓に負担となる為
昨日から右前肢に入れられた点滴の針が
よほど苛んだのらしかった
レントゲンやら抜歯中 ....
 いちごとたまごサンドの具

いちご1パックを買い
5、6個出してセロファンを戻し
3ドア冷蔵庫最下段の野菜室に入れた
2、3時間後
冷凍庫を挟んだ最上段の冷蔵室が
いちごの香りでいっぱ ....
子に差しのべた腕からは
女の斬られた両腕からは
水が滴った
血でなく間断なく水が
滴り落ちた

空に差しのべた腕からは
男の斬られた両腕からは
樹が生えた
蛆でなく際限なく枝葉が
 ....
[妖怪(尻)べった]
  肥大臀部を横向きにした姿の妖怪。
  戸建の階段のカーブや集合住宅の脱衣所などに潜んでいる。
  これを見ると妻に萎えてしまうようになる。

[妖怪ココゾ]
   ....
春の風は遠くから来ます
夏の風は遠くへ行きます
あこがれ、とは違う
何処か知らない所へと
私を誘います

秋の風は通り抜けます
冬の風は通り過ぎます
喪失を知らしめ
懐かしい者どもと ....
 毛が濃い

け‐がこい[怪囲い] 北陸地方に伝わる、悪霊や妖怪のたぐいを封じるまじない。{ルビ紙垂=しで}を連ねたものや消石灰、小麦粉、片栗粉、米粉または春雨、
ビーフンなど、とにかく白っぽい ....
さようなら を言えるのは
一人じゃないから
さようならを 言う時は
一人じゃなかったから
あなたは何を待っている?
誰と何を知って来た?

こんにちは は日和見ことば
人に投げておしま ....
ただのみきやさんのsalcoさんおすすめリスト(85)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
スプーン- salco自由詩1514-12-4
大人の国- salco自由詩914-10-25
ナマズ- salco自由詩1714-10-15
黴雨- salco自由詩1114-6-30
ひな- salco自由詩1114-3-2
我鬼窟主人と飢餓靴女- salco自由詩714-2-4
サロメくん2- salco自由詩514-1-24
拾参憑き姥(ぼ)の暦うた- salco自由詩614-1-4
散華- salco自由詩1113-12-16
さよならの刻- salco自由詩1213-12-13
R_- salco自由詩1013-11-7
セッド_シー- salco自由詩1113-11-5
黒船- salco自由詩13*13-10-31
ジェロニモ- salco自由詩10*13-10-17
ぺピータ・ベーチョの或る日- salco自由詩9*13-10-7
パターナル- salco自由詩13*13-10-2
六本指の女- salco自由詩13*13-9-4
夏の商売- salco自由詩8*13-8-22
でっかい- salco自由詩11*13-8-4
ぽぽち- salco自由詩5*13-7-25
2013夏_聖子超人伝説- salco自由詩10*13-7-23
しげこ- salco自由詩12*13-6-17
宇宙のリアリティー- salco自由詩4*13-6-11
退院- salco自由詩6*13-6-6
タルタル新聞- salco自由詩6*13-5-29
再世記- salco自由詩6*13-5-26
妖怪辞典(抄)- salco自由詩13*13-5-22
便り- salco自由詩29*13-5-16
毛が濃い・村上春樹- salco自由詩7*13-5-6
さようならの子守唄- salco自由詩5*13-4-24

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