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ある日の繊細さが
風鈴の音の揺らぎで夏を作り出したように
きっかけという名を
古ぼけた電話帳で探したときに
故郷につながる道の霧が晴れていった

生まれてきたという引き金は
生きてきたと ....
三ヵ月前に母に送ったてがみをゴミ箱に捨てた
いま、どれほどの痛みに横たわったのか
いくつかの記憶にいくつかの窓、いくらかの空といきばのない言葉
ぽっかりと浮かぶ月からあふれ出した涙と
「助けて ....
その膜を破ると
きらきらとこぼれ落ちる
母の痛みがうつくしかった。

ぎゅっと身体を縮める
握りしめられないものを握りしめ
抱きしめられないものを抱きしめる

ささやかな抵抗を繰り返し ....
目を覚ました
しとしとと音がしている
しずかな朝の、
雨音の音階を調律するひとがいる
誰だ。
調律師は物憂げな顔で指先を動かす
ふと音がなめらかに
なったかと思うと
その指先は ....
冬のはじまりを
ことばにしたくなった
ときすでに、

むかし話のように
ふり続くゆきのような、
文字のられつ

呼ばれなくなった
なまえを口ずさむように
くり返し、くり ....
君のうなじが
白くうつくしいので
ことばを失くし


つつじ柄の着物に
雨が落ちてくる
そっと和傘をひらく
しぐさに湿り気が帯びる


 四つ辻まで
 ご一緒しましょう ....
雨は綺麗だ
ひどくやみ上がった空はうつくしい
衣服が濡れて透ける
心までが裸になるのだ

終わり欠けの虹を見る
どこへいく
どこへいってもスマートフォンは繋がる
恋人からは逃げ ....
「食べる」

早朝から釣りに行った夫が、すずきを一匹釣ってきた。
君は大喜びして、おさかな、おさかな、と言った。
水面をパシャパシャとのたうち回った姿はまだ想像できないかもしれない ....
朝起きる。
新聞配達のバイクがハーモニィを奏でて
ポストに投げ込まれる
合図はわたしをきちんとコーヒーへと導く。
隣でしっかり布団に収まる夫に
声をかけるとううーんとうめいて夢に戻ってしまっ ....
小雨日和に
涙がひとつぶ落ちると
空き箱に海が広がり
折られた便箋が繊維の波をつくる
皆が別れを見出だす
手先を冷たく潤す
水はしわを消さない
刻まれていく訪れに感謝し
なくす ....
ゆうぐれに
訃報がふたつ
覚えたてのことばを使う
無駄な行間を埋める
雷鳴がとどろき
過去に幕を引こうとする
落としてきたものと
忘れてきたものとはちがう
ついばんだ死につ ....
まよう
答えを探している
息子とじゃんけんをする
勝っても負けても
答えを見つけることの間違いを
教えられる
あいこでしょ!

障がいについて
伝える日がくること
世の ....
できる
でココアを溶かす
できないをハチミツ漬けにする
何も言わない
しーと指を立てるともういちどになる
わが子に伝えられることを
がさごそと探すよりも
整頓された背中から伝 ....
let go
あなたの服に嘘が付着する
夜がこぼれミルク瓶に詰められ
わたしの朝に届けられる

speak
濡れ衣という緑茶に茶柱がたつ
旋律をねり込んだスコーンを焼く
あ ....
寝息が
夜のカーテンを揺らす
いつくしみという
どこかに潜む母性が呼吸をはじめる
白い肌のわが子の
すーっと通る鼻すじに口づける
溶ける音がした気がした
抱きしめるものがある ....
幕開けに
ことばを持たずに臨みたい
髪を切って女という味を色濃くしたなら
フリックで弾いた間奏で涙をながして
愛をいただく年の瀬に助走する
底には濁りがある
ひとさじ掬ってわた ....
紅茶をテイスティングするあの男性の、指先にとまるシルバーのリング
ティーカップに注いだ海がどんどんぬくもりを帯びていくという嘘の話
男性の指に抱かれたいとおもう夕べに私の海はどんどんし ....
一人称についての
ダイアログをスキップして
夕日を抱けば恋をした
海で拾う貝殻に
耳を当てるたび頑なな自分を
否定した
ひりひりした
砂で顔を洗えば
いくつもの化粧は落ちていっ ....
人さし指を立てた
葉っぱが一枚落ちて
世界をスワイプした
時間が背負うことばの数々は膨張し
夕日に反転する夜空に
詩人という雨雲を生んだ
滴が重力に逆らって上昇する
歴史 ....
朝まで、そこをなんとかは木漏れ日に紛れていて、太陽が沈んでから、こっそり雫にもたれていた。風が強い日は土の中に身を隠した。大地はやさしく守ってくれる存在で、ぬくもりが恋しかった。誰かに甘え .... 真実というの、
多面体について推測することを
誰かを信じたり信じない
曖昧さを拭い去って
女の果実は甘く
夜を抱けば朝が焦がれる
水槽で泳ぐ
海を知らない魚にとっての、
す ....
指さしをするよう
誰かが泣いていた、場所を
孤独を落としたままの在処を

甘く過ぎる歴史が
引きずってきたものを剥がす
ことばにすぎないよう

私が誰かだったりした、瞬間に ....
かけない
生活は滞りなく進む
不安げに防寒している
夏なのに
汗じゃない涙は
あまりに信じてもらえない
悲しいわけではない
変化
日々成長するわが子
わが身などどうだっていい ....
小鳥がついばんだ林檎だけ
落ちずに残ったとき
決してこの世は綺麗なものだけで
満たされてはいない
線路の左側を歩いていくと
虹に辿り着くと幼い頃叔父が言った
母について記すとき ....
零をさがした朝に目が覚めると
太陽がたったひとり寂しそうで
誰もがこどくを噛みしめ針の痛さに怯える
ことばの痛みを恐れる
決して優しいことではないけれど
幼い頃何も知らずに踏みつ ....
夜の海辺を
韻を踏んで歩くと
奇妙な砂利は
ペイントされ
同じ表情をかもす
眠りに落ちた
カモメの泣き声を
閉じ込めた貝殻に
吹き込んだ愛について
空き缶に零れた
海の ....
木々があいする木漏れ日のこと
川がめでるせせらぎのこと

雨が求めるつちの渇きのこと
太陽がほしがる水溜まりのこと

夕日があこがれる水平線のこと
朝陽がのぞむ暗やみのこと

 ....
書き写したいことが
夜の中核を担っているときは
和紙に目をつぶり
水でうっすらとなぞってみる
見開いた視野の右隅に波紋
その理由を生きることに託した
一途に一途にと朝は求めるけ ....
ドーナツのやさしさ。虹のもどかしさ。雨が土につくるいのちの跡。やかんの呼吸。結晶のほころび。ありの息づき。葉っぱにのこされた欲。鍵をさしこんだ秘密のありか。煙が描くうつくしさ。砂のなきごえ。海 .... 傍らにつづくきみの面影に
いつか忘れようとした秋のいのちを
頑なに重ねることを覚えた日もあった

掬いあげた水溜まりの渇きに
助けられずにないた小鳥のさえずりを
音符に変えることも ....
ただのみきやさんのかんなさんおすすめリスト(40)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏が繊細さを手放すとき秋は虫の音を抱きしめる- かんな自由詩520-9-21
ソファで夢みるように三月のわたしは鍵をあけた- かんな自由詩320-6-21
冬の朝の光が痛みをうつくしくする- かんな自由詩1419-11-28
雨の日と月曜日は- かんな自由詩10*18-3-21
はじまりをことばにしたくなった- かんな自由詩5*17-12-2
つつじヶ辻- かんな自由詩9*17-5-24
雨やみ上がり虹のハシまでいと電話するすると吐く恋人のサギ- かんな自由詩10*16-8-20
息子という君- かんな自由詩9*16-8-4
ハピネス- かんな自由詩7*16-8-1
せんいの波- かんな自由詩5*16-3-23
ふゆが終わる- かんな自由詩6*16-2-27
グーはチョキに勝つ- かんな自由詩6*16-2-10
ととのえ- かんな自由詩4*16-2-8
はなして- かんな自由詩8*16-1-23
添い寝- かんな自由詩14*16-1-3
詩忘(しわす)- かんな自由詩15*15-12-29
- かんな自由詩8*15-12-11
16歳の夏休み- かんな自由詩9*15-9-20
触れる日々- かんな自由詩7*15-9-15
そこをなんとか- かんな自由詩6*15-9-10
ルクレティウスの夜- かんな自由詩7*15-8-24
群がる- かんな自由詩6*15-7-31
脱ぐ- かんな自由詩4*15-6-19
線路の左側- かんな自由詩16*15-6-18
自我像/十七歳- かんな自由詩8*15-5-26
微笑の群れ- かんな自由詩8*15-5-22
君に触れるということ- かんな自由詩24*15-4-30
夜明けに蝶のとどく- かんな自由詩5*15-1-27
「穴」- かんな自由詩7*14-11-9
たまきはる- かんな自由詩9*14-10-23

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