日より
レタス

灰色の吐息がテーブルに満ちて
苦い珈琲が過去の想い出をたちのぼらせる
壊れた砂時計は絶えることなく
細かな砂を落とし
窓辺に佇んでいた

なかなか来ないオムライスを待ちながら
煙草を吸い
珈琲を啜っていると
やがて
チリチリと音をたてながら
オムライスがやってきた
半熟トロトロの玉子の下にたっぷりと
盛り上がったチキンライス
鮮やかな朱色がまなこに焼きついた

そこは北へ向かう上野駅
ブルーントレインは廃止され
夜を楽しむ暇は奪われた

北に帰る列車はもう
ぼくには無いのだ
仕方なく浅草界隈を彷徨い
尾張屋の天麩羅蕎麦をすすり
帰宅した




自由詩 日より Copyright レタス 2016-05-08 19:30:21
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