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深夜
誰かが窓を叩く
マンション11階
泥棒にしては行儀がいい
盆はまだなのに
誰か帰ってきたのか
そっとブラインドの隙間を覗くと
命を懸けて
光にたどり着いた甲虫だった
....
六畳の部屋いっぱいに
写真を並べて
二人で黙って整理した
思い出は語らない
海の写真を 見せて
と言ったら
あなたがどの海?
と聞いた
今じゃなくて
私が死ぬとき
二人 ....
お人形遊びの
楽しさを知らない
綺麗な服に着せ替えて
髪を梳かして
それから?
あんまり虚しくて
人形にドロップキックさせたら
あの子とはもう遊ばないって言われた
....
私は魚ではなく
人だから
海は
陸とつながってる部分が
好きだ
見渡す限り海だけの映像は
空恐ろしい
そこに岸があるからこそ
安心して美しいと思える
そして
岸から ....
儚いのは
花ではなく
人なのです
この
美しい花は
誰のためでもなく
悠久の時を生きている
その木の下に
人が様々な人生を当てはめ
懐かしんだり
見上げて泣くのを
....
大して明るくもない街灯が
スポットライトのように
道行く人の影を描く
おまえたちは
わたしからは丸見えだ
夜の道
わたしの道
四ツ辻から見渡す一本道には
ひと筋の闇 ....
手で
顔を覆って
神に祈りたくなる
Oh my God
私は二人いる
犯して
裁いて
気が狂いそうだ
空を黄土色に染めたと思ったら
一度だけ雷鳴を響かせて
通り過ぎた冬の雨
なんて足の速い雷神様だと感心しながら
窓を開けてベランダに出てみる
後姿を見ようと身を乗り出したら
忘れ衣の ....
電車の中で
懐かしい訛りが聞こえる
聞き間違えることのないその方言は
故郷の海の匂いがした
夢の中では生きられない時が来ると
理解していた
現実につぶされそうになりながら
私は両手で囲って
頭の中の草原を守った
罵倒と泥の嵐の上に
私の女神が立っている
現実と戦う私 ....
夜は気が狂っていて
何もかもが支離滅裂になる
だけど
昼はもっと狂っていて
私は平静を装う
年老いた母が
彼女の城だった台所で
記憶を失くしかけている
朝方
何気なく寝返りした布団の中で
夫婦は手をつなぐ
どちらも何も言わないけれど
悲しい時間を耐えているのだ
むかし
凍えて死にかけた野良猫を
お風呂で温めて助けた
その猫はそれから
私がお風呂に入ると
いつもお風呂場にやってきた
洗面器にお湯を入れてやると
自分からお湯に浸かり
静か ....
今ここにいる自分が
よくわからない
どんないきさつで
どんな運命でここに?
記憶をなくしたわけではない
生き迷ってるわけでもない
ただ
薄ら寒い
沈みかけた西日で見るこ ....
最後に故郷に帰った日
灯台に座って
風に舞うとんびを
いつまでも見ていた
神様の木のてっぺんに
命を抱えるとんびたちは
巣に近づくと魔法の笛を吹く
目が回るほど
螺旋に ....
考え事に埋め尽くされて
頭が体を超えて行くとき
私はスニーカーを履いて
ドアから飛び出す
目的地なんて関係ない
ただ走る為だ
町を抜けて
川沿いを疾走し
理由も無く走り続け ....
水と油が
分離するように
時折
私はゆらゆらと分裂する
それは
焦点がずれた映像のように
バスの窓から景色を見ている
光の帯が
賑やかな街に伸びて
ひとりの私を過去にして ....
足が痛くて歩けない母を
海に連れて行くと
楽しそうに泳ぎ出した
それは
細胞のすべてに刻まれた記憶
海辺の田舎町で育ったこの人は
町では暮らせない人魚なんだと知った
猫の中に
自由の意味を見て
その意味を知るから
猫が好き
自由は
空間でもなく
時間でもなく
行動でもない
小さな額の中の無限だ
知ってた
罰は選べない
それだけはお願い、と思うほどの
それこそが罰なのだと思う
私の
戦士たちが
落ちてしまう
バラバラと
倒れていく情熱
悩ましい夜の続きは
欠けた月が見ていた
夜に頼らない生き方を
長いあいだ望んだ
満ちた口は
夜を黙らせるから
両手を広げて太陽の下に出たのに
どうしてなんだ
どうし ....
戯言に心奪われている間に
刻々と
夕景は色を変え
惜しむことなく一日の終焉を飾る
何も出来ない人の器を
笑うような神々の所作
手を見つめる人はやがて死ぬといわれるけれど
私は自分 ....
好きなタイプは貝類
閉じた貝を
そっと見てるのが好き
何を抱いているのか
時々油断して見せてくれるような
銀の盆に乗せられて
運ばれてくるのは若さ
その生贄は
無邪気な言葉で今を語る
なんの考えもなしに
与えられた奇跡を浪費する天使たち
説く教えなどない隠者は
黙って美しいものを ....
絶望に負けたくない、と
娘が言った
絶望を知ったのかと
私が絶望した
悲しみにも負けたくない、と
娘が笑った
娘が隠している涙に気づいて
私が泣いた
この子は
強いん ....
何も無いのに
意識をつなぎたがって
真っ白な生地に
絵の具をかけ散らす
とめどない言語フラッシュ
突き止めようとしているのは
もともと正体のない自分
呼吸し
食事し ....
丘を越える夢を見たい
風吹く空に金色の
夕陽に溶ける夢を
穴の中にいる自分
暗がりでなおうつむいて
夢さえ見なくなって
どれだけ経っただろう
開けても閉じても目に
色彩 ....
時々
体の壊れる音がする
それとも
心の壊れる音か
耳鳴りは
永遠に続くかのような蝉時雨
悲しくはない
目を閉じれば
あの夏にいる
庭園には
緑とプールがありました
ぬったりとした
湿度が
緑もプールも
育んでいました
私は蛇になって
ゆっくりと水に潜り
濡れた体で
緑の上を這ってみました
....
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