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懐には
恐るべき毒を忍ばせておかねばならない
ほんの一滴で
誰しもが息絶えるような毒を
一瓶
忍ばせておかねばならない
コルクで栓をして
いつでも取り出せるようにしておかねばならない ....
ゆっくりと昇る、長い長いエスカレーターに
静閑と座すドーベルマン
傍らの階段を
人間は忙しなく駆けていく
考える獣よ
お前は顎をあげ、頭上を見据え
エスカレーターの流れるままに
どこ ....
木枯らしがふき始めた
九月の朝は
人ひとりいなくなってしまった静けさに包まれて
なんだかひっそりとしている
道を行く人はまばらで
自転車は そっと流れるカヌーのよう
普段騒がしい自動車 ....
アスファルトを雨が濡らし
あたりが深海のように暗くなると
自分がどこから来たか
うっすらと思い出されて来ないだろうか
そうだ
自分は確か
まだ日が登りきらない頃に
母親だか恋人だかに
....
生前は
それは腕の立つ人であったそうだ
また 根っからの旅人であったという
世界を旅して
知らない土地で
知らないものを見るのが
彼の生きがいであったそうだ
今となっては
生前と言 ....