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彼岸花の熱に服を焦がされ
黒と茶のまだらになった
最初は白いシャツだったのに
空は膨張し雲は引きちぎられていく

喉の奥がいがいがする
息も唾液も通らない
秘密の部屋で
黄色く発酵して ....
毎日つけているつがいのマスク
人間でいえばもう80歳くらいだろう
一日交代で洗っては干し洗っては干す
135回くらい洗っても毛羽立たない
どんどん肌になじんでいく
ほつれがないわけではない
 ....
心の薄い皮を
細く削いで
お湯に浸して
柔らかくしたものを
ぐいぐい編んでいく
腰のあたりで
ミツバチが巣をつくり
ひそかに蜜をためている
肺の辺りに茎が伸び
小さな紡錘体のつぼ ....
暗闇のなかの白い砂
寄せる生ぬるい波
ぼんやりと砂の中からひかる

やってもやらなくてもよかった
いつかの課題たちが
ゆっくりと点滅している

千匹の子どもを度々生むならば
名前をつ ....
冷えた糖蜜の
途切れず
細く垂れるのを
吸いながら
暗闇に溶けて
見る夢は
疲労感なく
洒脱な世界へ
かろやかに
浮く
はだしでゆかをあるく
しっとりとつめたい
うすぐもりのふうけい

とても風が強いので
木という木がゆれ
腹黒い雲が急がされる

ガラス一枚越しに見ている
ここはとても安全で
雨も風 ....
にくしみ(要冷蔵)

うつくしい女たちの化粧が
ポリゴンに近づいていく
服はムダがはぶかれ
生地は豪華になる

腹の中のにくしみが腐っているのが
外側から見ていても分かる
にくしみは ....
メザメロメザメロとわめくけれど
わたしはとうに起きている
いちばんねぼけているのは誰か

ゆめの中でだけほんとうの自分でいられる
さまつなことが捨象され
円をふちどる線は消える
残るは小 ....
白紙に向かって歌えない
声が喉につかえて出ない
途切れながらも出た声は
定着せずにすぐ白になる

白紙に向かって歌っていた
夜が来るたび電気をつけて
蛍光灯に頭を下げて
みじめな顔で歌 ....
南国から来たコーヒー豆を焙煎して窓辺に並べる
そのうち一つがぱちぱち歩き始めて
豆の割れ目にしまわれた羽を広げて飛び立った
それは焙煎が成功した証なのだ
窓に透明のしわが波打っているのをか ....
お口はこんなに丸いのにどうして漢字は四角いの
せめてニとか皿とかの方が口に近いよね
口は三画だけど四角で△□に〇い口

口から生まれた口太郎
口から生んだ母は歯が出て間口が広い
歯のせいで ....
金木犀の木を根元から見上げる
町中ににおいが広がる季節だ
朝晩の冷え込みが増して
空の上底が少しずつ遠くなる

太陽の光が弱まり
勢力を拡大する樹木の紅潮
涼しげな暖色が控えめに
 ....
紙飛行機がララララ
ファルセットを響かせて
離陸していくその数は
およそ無量大数を越えて

どんなカメラなら
星の小さな輝きを写せるのだろう
消えそうな白いシャツの向こうに
見えない体 ....
シは救いになるか
射出されるパイロットのように
肉体を捨てて魂を脱出させうるか

人生が進み
環境が移ろえば
シを求めることはなくなると
もはやシは
あやしい輝きを
一切持たなくなる ....
点滴を全身に浴び
刺さるたびに針のむしろに治療されます

感謝しましょう
よりよい私になるために針山地獄は苦い良薬

最近のゴッドハンドは
神様のサイコロにさえメスを入れます

まも ....
繰り返す毎日
何度も同じところを回り続けるペダル
チェーンでタイヤとつながって
前に進んでいく
毎朝同じ道を行くとしても

繰り返す毎日
いつも同じ時刻の電車に乗って
早足で乗り換えを ....
細長い廊下の突当り
洗面台で顔を洗う
銀十字の蛇口をひねり
白いしぶきを手ですくい
顔にかける

清潔な白いタオルの
やわらかな糸で水をこすり取る
鏡の向こう
自分と目が合った

 ....
あの猫の名前はマダナイっていうんだ、
名作の書き出しに目がないようで
いろいろ聞かせてやっているんだが
書き出ししか知らないせいで
良からぬ方へ想像の羽を広げてしまっているようだ

「親譲 ....
まだ天国にはいきたくない
油断が私を空へと打ち上げる
真っ直ぐ飛んで行く体
その姿から私は花火と名付けられた
とはいえ致命的な飛翔は数えるほどしかない


一度目
生まれ落ちた瞬間
 ....
腕が切断されていく
苦痛にゆがむ口元
ぎりぎりと捻じ曲がる針金
漏れる息に混じりこむ声
椅子に座ったまま
ぐるぐると包帯が巻かれていく
皮膚が枯葉のようにがさがさになって
白い布の上に浮 ....
漠然とした砂の続く大地
平らな線が限りなく遠くに
つなぎ合わせればおそらく丸い

砂の山の起伏もさらなる飛翔の末
なめらかな肌になるのかもしれない
女の柔い背中の上を飛んでいる

細胞 ....
{引用=「草枕旅ゆく君を愛(うつく)しみ副(たぐ)ひてぞ来し志賀(しか)の浜辺を」(万葉集 巻四566)}
或る女は旅に連れ添い
まだ若い馬にまたがりシカの浜辺へ
青々としたうつくしみの心でもっ ....
十億光年の彼方から
飛来した一枚の花びら
一生をかけて旅しても
たどり着かない遠い星

送られてきた切れ込みの
入った桜の花弁から
感じる宇宙の拍動

地球は丸く
銀河は楕円
さ ....
湿った砂の温度
掘るほどに水が滲んで
肌で感じて頬に触れる
潮風の温い感触
乾ききれない海草の匂い
思っていたよりも
生々しい身の回りのすべて
ひりひりと目に沁みるあれこれが
頭を取 ....
春へと旅立つ
厚い氷のトンネルを抜けるたび
金属の車輪が鶯の鳴き真似をする
繋がって泳ぐ魚は駅に出会うたび立ちどまる

雨水が硬い表皮を滑り落ちる
やさしい雨の季節だ
ちいさな水の粒子に ....
ビニールの金魚
尾はヘドロと浅い海
袖で眠るヘビの嘔吐
男と来たばかりの憂鬱だけ
さよならはブリーチで染めたのに
ワイングラスの方代わりに夕暮れと鼾が
踊ろう久しぶりの密林とバカンス
秘 ....
名前は親からの最初の贈り物
光と書いてヒカル
その名前を彼女はあまり好きではなかった

「光は周囲を照らすけれど
光が照らされることはないの
虚しい人生だと思わない?」

いつも甘いタ ....
俺は話がしたい
壇上に立って
聴衆に聞かせたいことがある
常日頃から思い募ってきたこと
ぼんやり座っている奴らに浴びせて
腑抜けた日常から目覚めさせてやる
息巻いて
照明の降り注ぐ舞台に ....
ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで、束ねられた数枚の紙でしかないそれを僕に差し出すと、君は下を向いてコップについた水滴を指で撫ぜた。
何気なく開いたページには、立てこも ....
はるにうまれたやつは
ゆめみがちなやつがおおい

かぜはつめたいのに
ひざしがあたたかくて
ゆめをみるのにもってこいなんだ

だからか
はるにうまれたむしは
ひらひらおそらをとんでい ....
ただのみきやさんの木屋 亞万さんおすすめリスト(36)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
- 木屋 亞 ...自由詩4*22-10-8
マスク- 木屋 亞 ...自由詩1*20-4-20
simile- 木屋 亞 ...自由詩2*17-9-23
GAS- 木屋 亞 ...自由詩3*17-7-1
ゆめ- 木屋 亞 ...自由詩1*16-5-3
春眠暁を求めず- 木屋 亞 ...自由詩2*16-4-17
にくしみ(要冷蔵)- 木屋 亞 ...自由詩7*15-3-21
_la_pluie_de_sirop- 木屋 亞 ...自由詩3*15-3-14
白紙にむかって歌うんだ- 木屋 亞 ...自由詩2*15-2-25
珈琲- 木屋 亞 ...自由詩4*15-2-11
口をぽかんと開けて- 木屋 亞 ...自由詩4*14-11-22
花の下にて、秋- 木屋 亞 ...自由詩3*14-9-26
空卵- 木屋 亞 ...自由詩3*14-6-23
- 木屋 亞 ...自由詩4*14-6-8
不治の病に逝きつつうつつ- 木屋 亞 ...自由詩2*14-1-26
それでも- 木屋 亞 ...自由詩10*13-9-21
小娘_- 木屋 亞 ...自由詩3*13-9-14
あの猫の名前はマダナイっていうんだ、- 木屋 亞 ...自由詩6*13-6-15
バンジージャンプを1階から- 木屋 亞 ...自由詩5*13-6-8
まぼろし- 木屋 亞 ...自由詩2*13-5-26
- 木屋 亞 ...自由詩5*13-4-20
うつくしみの_うつつ- 木屋 亞 ...自由詩4*13-4-13
_小宇宙から流れくる- 木屋 亞 ...自由詩4*13-3-9
涙の落ちるところ- 木屋 亞 ...自由詩7*13-2-16
各駅停車で、春に向かう- 木屋 亞 ...自由詩5*13-2-9
去りゆくものたち、生まれくるものたち- 木屋 亞 ...自由詩4*13-1-1
光について- 木屋 亞 ...自由詩3*12-12-24
私語硬直- 木屋 亞 ...自由詩2*12-12-23
ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで- 木屋 亞 ...自由詩10*12-11-23
はるうまれ- 木屋 亞 ...自由詩6*12-3-10

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