四十二度
真夏の
山嶺をこえる日差し
積乱雲!積乱雲!
いつか焼かれるわたしは
真夏の
ひそかに揺れる
こかげの雑草
生きていくには
熱すぎる体温
....
切符はもう買った?
たかかったけど、やっとかえたよ
あなたは幸せになれないの?
うん、ぼくがかみさまだから ....
梱包用のテープで作った 四角い篭
縦横に編んでいて 真ん中に持つところが
アーチ型に つけられてある
婦人会の集まりで作ったから ひとつ 持っていけ
母が実家に立ち寄った私に 機嫌よく く ....
雲の坂道を走る
小さなバイク
蝉時雨を横目に、ぼくは
食事の支度を
プツプツ
音を立てる落し蓋が
砂埃を笑い
山の辺の切りたつ階段を
葉っぱといっしょに転げ落ちてきた、きみを
乾いた ....
私の部屋の金魚鉢には
金魚が一匹いる
金魚鉢を見ていたら
すうと引き込まれて
泳いでいた
涼しい青い水の中
緑の水草ゆうらゆら
赤い尻尾はひいらひら
たくさん泳いだら
す ....
コップの中には
牛乳が入っている
それは黒くない
黒い牛乳のことを
少しだけ思いながら
白い牛乳を飲む
アメリカの音楽が耳に流れている
私の牛乳は白い
私は白い牛乳を飲んで
謎を解こ ....
ひたひたと打ち寄せる若い海が、
青い匂いに弄ばれて、言葉の果てで立ち尽くす、
夏に縛られながら。
波は立ち眩んで、一滴ごとに、ほころびる海の雫が
暑さに滲んでいく――。
散らばる熱が ....
夜空に、ひしゃく星
くらやみは
すくわれることなく
すりぬける
あなたとわたし、
街灯りを遠くに眺めながら
水を打ったように静かな公園を歩いていると
一 ....
わたしは眠ります。
目を閉じ、
膝を抱えて、
冷たい液体に浸され、
ふゆる堕ちて、
目を見開き、
網膜に最後の瞬間を焼き付け、
固い地面に叩き付け ....
いちばんふしあわせで
かなしい場所を知っているかい
それは穢れも痛みもない
世界だよとあなた
岩清水のようにうつくしく笑った
透明の
ほかには
なにもない世界
てりつく光が
....
神の名に似た少女は
雨の日のこの晩に
ぐんなり冷たくなった
私の終わりの姿を
写真に収めに来たのか
買ったばかりの
慣れない手つきを片手に
塩化ビニールの匂いがする
傘を持って君が ....
周波数の違うささやきが耳に囁きかける
いつものブルーなひととき
ぼくは淋しがりや
子供みたいな笑い声のなかで
輝く笑顔の中に埋まりたい
少しづつ近づこう
僕好みの ....
待合室には
女の子を連れた母親と
少し離れたところに
人の良さそうなおばあさんが
座っていた
熱のせいでボゥッとなった私の目も耳も
何も見ようとも聞こうともしていなかった
「お子 ....
そら
そう
ほら
みて
ここ
そこ
むこう
ぜんぶ
ぼくに
とって
ふかく
やさ ....
あなた、アオウミガメの背中を
匂ったことはあって?
少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える
....
いつからあったのか
窓の外に雲が浮いている
今までぼくは
何をしてきたのだろう
今までぼくは
何を残してきたのだろう
人と同じことをしていたら
人と同じことしか残せない
あの人 ....
さようなら
しばらくのお別だ
私の事が気になたら
星にお聞き月夜の晩に
さぁさぁ
少し早い呼吸を整えるように
ふぅっと細く糸より細く
右手をおだし
記憶の旅はこれにておしまい
....
わたしがうまれた宇宙は、
とても深いところにありました。
そこは何もかもが、
ゆっくり動いていて、
まるで止まっているような、
時がながれていました。
....
水底で青くゆれる渋谷
さなぎのおまえが吐く息
夜明けの衣擦れ
天使の痛ましい肉
天使の持つ寂しい性器
いつか
分解作用によって
ぼくらも
この星になる
星影となって
抽象の翳り ....
自分の存在意義を問う
存在価値を問う
答えは出る筈もなく
無理に出そうとしたならば答えは否
いつもいつもそうなのだ
純粋に手伝おうとしているのに
実際、蓋をあけてみれば ....
ギラギラの太陽と茹だるような暑さのもと
癇癪を起こしたような蝉の声を聞きながら
ホワイトクリスマスの事を考えるのは無理があるかも
波をけたててトナカイの代わりにサーフィンに乗って
アロハのサン ....
濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも
やるかやられるかみたいな ....
海という隙間で息も絶えだえに
船がただひとつ進めない方角があり
羅針盤の鏡にこうして映すと
宇宙も空も無くなる時間なのに鏡は
越えられない境界線を示すだけなのです
宇宙に似た深い暗闇を
....
水銀が染みでて狭い空のせいで
ここは今にも崩れおちそうなのですが
きれいに舗装された道の真ん中に
ま白いチョークで丸を描く
チョークの白い粉は毒であるから
すぐに洗いながしなさいと教わり ....
水面にゆがむ月よ
滑らかならぬ蒼白い顔は
私を待っていたのでしょうか
それとも見送ってくれるのでしょうか
足を止めると
あなたはきらりと
涙を放ったように見えましたが
驕りだったよう ....
メモを片手に料理上手
冷蔵庫の残りもの
なんでもかんでも炒めよう
卵にレタスに牛肉
小エビにきくらげしいたけ
長ネギかまぼこにんじん
ついでに日頃の鬱憤も
炒めて炒めてご機嫌 ....
眠れぬ夜が
大きな口をあけ
数珠繋ぎの言霊を
ひとつ食み
またひとつ食み
私をおいて
月の光ばかりが蒼白く
強くなる
溢れた涙を
瞳に返せはしないけれど ....
刻むビートの中で
すれ違った人の思いを切り刻む
夏の日じっとしてられなくてパジャマのまま
夏の風のなかをはしりぬける
繋いでとぎれない笑い声
手をのばしてつかみ ....
昔からの友達は
あの夜ひとりの男になって
私はそれに戸惑って
言葉の刃を投げつけた
肌と肌で交わす何かに
身をゆだねるのは怖かった
あの日のあなたに逢えたなら
どこからやり直せばいい ....
さびれた歩道橋の上で
夏を見上げると
空、空
本当に海まで続いているのだろうか
この橋の下を流れる車の群れが
緩やかな河口付近の川だったらいい
時折陽射しに煌めくヘルメットが
....
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