僕がこの言葉を知ったのは十年前
五歳のときだった
近所に住んでいた
りんにいわれたことがきっかけだった。
彼女は僕の目の前で
めちゃいい笑顔でいったんだ
「あい・らびゅー」
僕は意味 ....
廃校舎に月がさしのべる
光の中野エントランスの階段を
少しずつ確かめるように登っていく
昔のクラスの自分席に座って
月明かりに照らされて
まぶしいので目を細める ....
まだ秋
なんていっておきながら
夕方の寒さは冬
部活が終わって制服に着替えていると
テニスコートの外に
学校で飼っている黒猫
<おい
お前は何をやっているんだい>
黒猫はた ....
暗闇のなかを片輪の百足虫が走る。
背中は凍りつくように冷めたい。
十時が一番うつくしい、君、
髪はながいほうがよい、
鏡は嘘しかつきようがない、
だって彼には腹というものがな ....
シンパシーは突然崩壊する
昨日まで友人だった君が突然敵になったりする
友情?関係ねぇ
愛?なんだそりゃ
憧れ?しったことか
塗っては塗り替えられ記憶はどんど ....
白い花弁に滲んだ色は、
褪めた肌の哀しみにも似て
わずかな岩の裂け目へと根をつけた
くらしの危うさを今も孕みながら
押殺した声の倹しい日々さえ底なしに
やがて崩れ落ちる恋に焦がれて
夢 ....
小さい頃は
家の絵ばかり描いていた
庭付き一戸建て
という物質が
人生の最終形態であると
そう思っていた
今でも
画用紙を与えられれば
わたしは庭付き一戸建ての絵を
あの頃より
....
ぼくは全部
全部君に
あげたいけれど
あげられない
幼稚園のころ
先生がくれた色紙や
小学生のときにもらった
表彰状や
中学のころ
描いた人権ポスターや
十七歳の思い出も
....
うまれてはじめて、
すきなひとにすきと伝えた
すっごい引かれて、
保留、となった
どう聞いても、
断られたのだろう
そ ....
幹に巻きつけられた
青白い麦球は
今年も
明滅を繰り返す
流れる光は
高い空に昇って
どこへ
すれ違う流れに
爪先を探す男は
今年も
うずくまる
染みだらけのジャンバーを
....
あおいそらをおなかいっぱいすいこむと
こころがうわぁんと大きく広がっていく
そう、自分が空と同化していく感じかな
はっぱや樹々とお揃いで空の下が大好き
ピッポッパッ♪ミ ....
一ヶ月を少し切った頃
そろそろ準備を始める
今年も彼はきっと大忙し
彼の相棒も毎日筋トレに励む
昔は一人一人の好みに合わせて
プレゼントを選ぶのが大変で
親に資金を援助して ....
人は皆自分が大切で事があれば自分を取り繕うとする
人の心の真髄に触れる前に虚言で修正してしまう
事が起きても自分に害の無いように
勝手に取り繕い傍観者となり
自分には関係な ....
あなたに愛される
蝶のようには
なれなかった日
私は一匹の蛾となって
その燐粉は七色に
辺りに飛び散るのです
私の周りには虹ができ
私は私の毒に
やられてしまう
あなたは ....
穏やかな風が吹く
冬の晴れた日の午後
寒い日のはずなのに
その冷たさはどこにもない
鳥たちはのびやかに飛び回り
土は生きている
めったにないこの日を
人も皆
外に出て心で祝う
....
冬の透き通った空に
白球が飛ぶ
それはまるで夢をつかまえようとするように
白球を追う
整地されたグラウンドで
今日はソフトボール大会
投手が投げるボールに集中
....
愛することは
憎むことに似ている
君が月明かりに照らされて
僕に背を向けてそう呟いた
相変わらず怒った顔していて
まるで
世界に喧嘩を売っているようだ
僕は額の青いあざを ....
静かに今日を終えようとしている
始まりはいつも解らないが
終わりはいつも解る
儚いと知りつつも力を込める
僕ら(人と)の関係は脆く壊れやすい
一つの嘘が引き金に成りかねない
....
税込み15750円
が
うたう
おどる
ひらがなのカッターが
柔らかく微笑んでから
指先を丁寧に切り落としてゆく
シワスノゴゴノヒトトキ
∧師走の午後の一時∨
おせち ....
雨傘よりも強く僕たちを刺戟するのは、
天よりも高い靴の響きである。
靴は沼地に奥深く喰いかかり、
森のなかは蛍の楽園を造形した。
知性は愚鈍の中に埋没し、
風はそれを助長した罪に ....
ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった
漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言った ....
枯れ草しかない目の前は
寂しさを感じるけれど
ここから春が訪れると思えば
渇ききった枝と自分の心にも
潤いが与えられる
土がむき出しのままの畑も
侘しさを感じるけれど
ここから生が誕 ....
あなたを探して落ちた罠
{ルビ迂闊=うかつ}だわ
あなたしか見えなくて
自分で仕掛けた罠に落ちるなんて
あなたの視線に縛られて動けない
逃げ出せばどこまでも
あなたの姿が私を追って来る ....
(吐く糸で自分をがんじがらめにした)
誰かのために紡いでいたつもりの
それがいつの間にか
こちらに巻きついてくる
糸を断ち切ろうとあがいても
やわらかい糸はすべての力を飲み込む
包容力 ....
無口な男がもてる時代は
もうとっくに終わったかい
遠くを見つめて
佇む姿は
もう飽きたかい
一瞥すれば寄ってきた雌たちも
今では面白い奴が
好きなんだとよ
....
うたかた人のように
訪れては去っていく日々
目にするものも少しづつ移り行き
いつのまにか俺は
こんなところで居眠りをこいてた
感情の動物の人間に理屈なんて通用しない
あ ....
太陽がしずむときの
空と海が融けてく境界線を
あたしはきっと知ることはない
美しさ
で胸をしめつけられるなら
それできっといいのじゃないか
世界の黒を思いし ....
ぐるり
(一)
いつか必ず弾ける
儚く揺れて
緊張を保った不安定が
震えていて
無数のしゃぼんだまが浮かぶと
僕は切ない美しさの中に取り残されてしまう
....
首がスッカリ伸びきって。
おじさんのランニングみたいになったTシャツ。
もう十分役目を果たしたんだけれど。
洗濯してたたんでしまうと。
愛着なのか。
せこいのか。
....
こんなに寒い夜は
こうやって電車を待っていると
たくさん思うことがある
このホームから見える海の向こう側
そこには皆がいる
僕の目にうつる町の光
あれは人が生きているということの印
....
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