あのとき
きみと見た
あおぞらは
不安でいっぱいのぼくを
新しい
明るい気持ちにして
まほうをかけてくれました
今ひとりで見る
そらは
あの時とおんなじように
きれいで
ぼくの瞳を
そら色に ....
そこはいつも
清潔な湿度と
せつないじゅうりょくの
香りにみちている
身ごもったおんなたち
髪を横に束ね
しずかにもたれている
雑誌をうつくしく取りだし
うつくしくめくる
とろと ....
どこか寂しげな 金色
薄い 肌
純粋無垢な 表情
天使は歌う 腰をおろして
天使は歌う ギターをかき鳴らし
天使は歌う 淡々と
天使が歌ってる
天使のように
許されざる罪人を胸にし ....
ゼリー状の七色のトポスが死んだ日。――
愛しいカルメラを焦がした甘い匂いまでが
いつか知らないうちに喪に服しちまったみたいで
それは廃れた漁師町の瓦礫の打ち寄せられた海辺にも似て
今宵も古びた ....
帰り道 君は南に私は北に 二人を分かつ夕暮れに秋
ロンハーの青田典子が好きと言い笑い転げる君が愛しい
疲れてる君の様子に少し似たスーツの上着抱きしめたくなる
ネクタイを慣れぬ手つ ....
プール前の花壇に
コスモスを見つけて喜んでいた そのくせ
君は、緑色のため池に沈んだ季節を
あまりに切なげに指す
わかってる
君も、僕と同じ色が好きなんだろう
空のいろ、でもなく ....
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける
十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう
それらの
秋という色や匂いに混 ....
窓を大きく開け放ち
男はそのままの姿勢で倒れこんだ
夜風にカーテンがゆれるだけの
ささやかな部屋
カーテンの色はミントブルーで
男の好きな色なのだった
思い出の中で静かにゆれている
今も ....
秋を肴に一編の詩
まずいな
無口な月が雲隠れ
うまい酒は
そうあるものではないからな
あのひとがいなくなった
突然 ぼくには
あのひとにはもう会えない
おそらく ぼくには
辛い肴 ....
窓辺のロンリネス そこにいないで
翼ある者たちよ 飛び立て
あの青く澄んだ{ルビ高処=たかみ}へと今こそ
求めるものはあまりにも遠くて
追いかけてた夢にもはぐれてしまった
あきらめないで ....
フローラ…
春の木漏れ日を浴びて
深呼吸する君は綺麗で
僕は隣で寝そべったまま
君の横顔に見惚れていました
フローラ…
摘み取った花を結い上げて
冠を纏った君の姿は
....
マシュはとなり町の病院で死んだ
マシュが愛した
マシュの本屋では死ななかった
マシュは本屋だった
この町一軒の本屋だった
マシュの店は正方形
そこにふるびた黄色い本
この ....
哀しみのあなたの窓辺に秋桜いちりん
――凹
灰色に覆われた低い空に
押しつぶされて
想いと呼ぶには小さな
いくつもの欠片が
重たくなって
沈んでゆくだけ
雨ならなお一層
....
ブラック・コンテンポラリーのリズムに身を委ね
カモミールの香りが漂う部屋の中
あなたへの想いだけが
ゆるゆると飽和して溶け出していく
手をのばして 重ねて 見つめあう
濃密なアトモス ....
シルクでも ミンクでもない手触りで
愛想ふりふり ベンガル無敵
*
たい・まぐろ
高級猫缶
大好きニャ
嬉しさアピり
またオネダリす
*
セルシオ ....
鮮やかに彩られた鮮明なキャンバスに
生きる君
蝶より儚い蜉蝣だ
白い手首にずっしりと
筆先を落としたがる掌が
(ちらちらと
冬の雪は冷たすぎると
呟く君のホ ....
気付いたの
アタシの真ん中に
ぽっかり空いた穴は
アタシの想像以上に大きくて
アタシは無意識に
その穴を埋めるナニカを求めてた
穴を吹き抜ける風が
冷たくて冷たくて
凍えて ....
偉大な 来光を祈る
密かな 朝焼け
夜たちの気息が
静かな 朝焼けに 消える
黙したまま 祈る
日輪の再生
精緻な 軌道の再現
来臨の風
小鳥はさえずり
長き不在の今日
....
{引用=閉じられた扉を内からノックする
「お願い、誰か、…わたしを見つけて――…!」}
もしも、とか。
ほんとは好きじゃないけれど(アンバランスだ)と影が言うので
あの人に恋し ....
ノート
忘れられた言葉
終わりもみつけられずに
さまよったまま
静かに痛んでゆく紙のうえで
呼吸をつづけている
あのひとの、
いつかひらめいた
あのひと ....
稲刈りをしたら稲についた菌が
米粒を石のようにころころにしたのが
意外と多く
出荷前に手作業でつまみだす
ついでにゴミも
ゴミ
と言っても うっと手が止まる
米の中 菌のころころと一 ....
髪をすく仕草で届きそうな月青い温度は抱きしめて知る
スカイタワー高層ビルに隠された月を映せり「ひとりじゃない」と
宇宙には同じ星などないそんなことは昔に確かめ合った
....
全てに疲れ果てて 涙を流す 君がいた
こんな自分には もう価値なんてないと呟いた
でも そんな涙を流せる心にこそ 価値は宿るんだ
目に映らないものばかりで 溢れているのは
交わらない二つの ....
千利休が七輪でツバメを焼いて食べている、
そんな絵葉書が一枚届く
彼女はそれを見ながらテレビ画面を舌で舐めている
その姿が、どことなく黄昏ていて
テレサ・テンの歌声とともに
無限増殖するスー ....
わたし 本当のことを言っているのに
いつまでたっても 信じてくれないの
だって ここで嘘をついたって
後から また苦しくなるだけ
だから 恥ずかしいけど
ここで ....
わたし桜の花になりたい
ふたり出逢ったころ
空を埋めつくすように咲いていた
あの満開の桜の花になりたい
わたし風になりたい
いつもふたりのまわりを取り囲んでいた
あのやわらかな風になり ....
あいの里
しのつく秋の{ルビ雑木=ぞうもく}
湯ぎりのしずく
かじかむむねのめぐみよ
髪を結い
知らぬみちをぬけて
はにかむ街へ
いつか人とはぐれて
ふちにたたずむ
銀のあかりあ ....
わたくし色の雪の結晶が
泣いてるあの子の
てのひらに
ひらりら らりら
落ちて
消えたよ
剥ぎ取られ
た天使の笑顔と、分割された、
髑髏の気持の行方は。
飽きるほどコピー
され、スキャンされたマリア様と
の絆、
老いた初期衝動。
それは、
き ....
1
真っ直ぐな群衆の視線のような泉が、
滾々と湧き出している、
清流を跨いで、
わたしの耳のなかに見える橋は、精悍なひかりの起伏を、
静かなオルゴールのように流れた。
橋はひとつ ....
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