人は誰も
起算の町を持ちます
流されるまま生きて
それを誇りにしていた時代も
体の衰えと共に
終わりを告げるのでした
とらえどころのない世の中だから
漠然としていながらも
せめ ....
彩度が低下して冬
のような気がしている
けれど見上げれば鮮やかな
空の青
空っぽの空の青
透きとおるってどんな気持ちだろう
こんな空の下ではすべてを見透かされそうで
網膜 ....
トンネルが唸る
待って
私はまだそこへは行けないから
書けない
音が湧き出てこない
聞きとれない音を譜面に走らせることは
夢を食べるのと同じこと
ねえ それはおいしいのかしら
....
弟ガイウ
母ガ癌ダト
マルデ命ヲツカサドル神ノヨウニ
母ノ余命ハ半年カラ一年
私ハワライナガラ
ソレヲ知ラナイ母ニ
来ルコトモナイカモシレナイ
来年ノ旅行ノ話シヲシタリスル
海ヲ渡ッテ ....
車窓から富士
遠くちかく富士
この国の詩情
白というかたち
いまも昭和も
江戸時代も
風土も時間も
車窓から富士
遠くちかく富士
この国の詩情
白というかたち
僕の中で何かが決壊するとともに
完全に終わった
真夜中は爆発して
ウルトラマリンの朝が始まる
その青さったらなくて
スコールのように
目にじゃばじゃば入ってくるんだもの
原色の獰猛な ....
あなたと次に会うときは、「いまの自分よりもちょっとは成長した自分でいたい」と切に願う。
だから、自分の心模様が荒れていたり、前の自分とちっとも変わっていないなと感じるときにあなたと会うと八つ当たりし ....
白、という色は感覚を鈍らせる。
粉雪が踊る
大地も空も空気さえも、息をひそめた世界で
ただ、そこに在るというだけで
乱暴なまでに視線を奪う
ただ一人の愛しい人
瞬きすら惜し ....
びゅう と風雪の中 てくん てくん
雪ん子は 雪を踏まずに てくん と
滑って 凍らせながら歩く
やがて 着いたのは 雪の露天風呂
白くてキラキラした柔らかな雪が
やさしく降りそそいで ....
路地から通りにでると
いや、もう路地から
あたたかな風がほどけていたのである
それがからだをやらかくぶ厚く
バイブレーションさせていた
坂道を明治神宮のほうへあがった
....
黄色い帽子をかぶった女の子が
お母さんに手をひかれて
ちょこちょこ小走りに
横断歩道を渡っている
いくつまでお母さんの手を
握っていられるのだろう
無邪気な笑顔 ....
今夜の
雪は
とても悲しく淡すぎる
あの人が
突然
消えてしまったから
しばらくは
悲しいかも
私は
少し
後悔している
あの時
素直でいたら
素直でさえ
....
水槽の中の
金魚
何を
思ったのか
ひらり
ひらりと
泳ぎ始めた
まるで
ダンスをするように
大きな円を
描くように
金魚は
泳いでいる
大きな目には
何が見え ....
咳き込んでいるのは僕から逃げ出したいから
なのだろうか。僕の身体はもう値しないもの
になりつつあるのかもしれない。濁音が空を
汚す。ひとつ。暫らくして、またひとつ。藻
みたいにドロドロして、蝕 ....
野生の鶏が森に溶ける朝
立ちのぼる夜の残り香
白く踊る靄
女たちのはごろもの袖が
空に還るよう
斜めに抜ける鉄道の跡地に
芽吹く春を見守っている
私の肩に麦をふりかける人よ
瞳は黄金を ....
足柄山の山中に
(大江山の中腹に)
大きな栗の大木が
その巨木の瘤の中
蔓で編まれた黒い籠
籠の中の麻の布
布に包まれた赤子一人
黒々とした髪を持ち
大きな体に漲(みなぎ)る精気
....
雪の降りた朝に
わたしは吸い込む
冬の鳴き声を
しっかりと逃がさないように
両の耳で
抱きしめる
冬の呼気を
愛おしいから
二度と離れるのはいやだから
この手は放さない
とくん とくんと
鼓動の音が耳につき
眠れない
夜
あなたに
電話をかけた
そんなときは
リラックスだよ
やさしい
あなたの声だ
ありがとう
....
{引用=
夕暮れの戸口を悪魔が叩いたら
手の甲を扉の隙間から差し出して
蒼褪めた唇にくちづけを乞いたい
それは夜風に晒され芯から冷え切った
明日のいとしい人であるかもしれないから
ラン ....
さかあがりが できないころ
さかあがりのあいまに
けんかした
さかあがりのあいまに
学校へ 行った
おまえんちの家の前の空き地に
むかし なまくびが ならべら ....
にょうろりにょうろり長い紐
トタン屋根またがり
ポストくぐって
にょうろり、にょうろり
どこまでいくのか
酒屋のシャッター錆びの穴
にょうろりにょうろり
中に ....
荒川の河川敷 土手の下に
古ぼけた木造アパート
モルタル塗らしかった壁の
モルタルは剥がれ落ち
グレーの下地に
枯れてしまった
蔦のツルがへばり付いている
空き家のようだが
夕暮れ ....
{引用=
白夜に立ち尽くす
冷えた足取りで
散り散りになった落ち葉を拾い集める
記憶を繋ぐ喪失の季節に
最愛を探す仕草だけが影を重ね
闇を深めてゆく
切り取れば
ひとつの証明にもなりそ ....
草のなかにレールをみつけた
錆びた鉄の平行な二本線が
弓なりに
ここから延びていた
または
この草のなかで
すっぱりと裁断されて尽きていた
あおぐらい記憶 ....
ゾロリ
色のない
貧血の頬を
滑るカミソリ
ピリリ
痛みのような
微弱電流
プクリ
鼻の左下
盛り上がる
赤い液体
チッ!
煩わしいだけの
日常茶飯
ゾ ....
キレイ、と。
キミの呟く声
茜に染まっていく
青の下
僕の右隣
キミの笑顔も茜に染まる
揺れる緑の葉
浮かぶ月は白
雲に混ざりゆく灰
鮮やかなキオク
....
あなたに会えて幸せです。
いいことも、嫌なことも、晴れの日も、雨の日もある毎日だけど、
いままで起こった出来事のどれが欠けてもダメだと思う
あなたに出会えなかったんじゃないかな
毎日を生きていく ....
たましいのかけらになったって
いつもいつまでもいまも
あなたのそばにいる
ふあんもかなしみもない
ハッピーエンドに
ふたりしてかならずゆけるから
十年まえ
....
荒く乱暴に削られた悲しくも不真面目な凹凸のある石畳は、煌めくルビーがさんざん泣いて叫んだあとのように、まだ温みのある紅い夜の涙でびっしょりと濡れていた。
蒼褪めた馬の首を被った人を殺したおまえたちが ....
それは男が汚れた靴下を脱ぐ時
それは女がきついガードルを脱ぐ時
みじめに軋るベッドの上で
広い背中を白い手指が所在なげに抱く時
愛はそれぞれに
互いを壊し満たそうと足を引きずり
見栄えのし ....
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