春の水を取り
渓流に足を浸すと
新緑の夏は
そっと 足元を潤す
木漏れ日の交響を 響かせて
汗 拭く 額は生きつづけた
未だ来ぬ 時を
遡行する 魚にたとえ
君は詩を 夢 ....
私の心はあなたのことでいっぱいで
せつなく哀しくなるのです
あなたがいないこの時間
まるで止まっているようで
怖くて怖くて仕方ない
こんなにあなたを想っているのに ....
蜘蛛の巣──繊細に張りめぐらせたレースの装飾
怖いもの知らずの蝶が飛び込んで
ゆれる ゆれる
蝶の羽も絡まる糸も光っている
ゆるやかな午後の陽に なお光を保ち
幼い頃
誰かに見つめられて
動けなくなったことがある
逃げるので精一杯だった
不思議な目だった
そんな記憶を思い出しながら
公園のベンチでうたた寝をする
家でちゃんと寝ようと思って
....
青葉の日プロコフィエフ午後一時
詩が好きで詩学が好きでもみじ緑
近江富士まさおな琵琶湖子と共に
路地裏のちび猫は
突入する赤に
踏み出す肢を迷わせる
産み落とされた残り香
ずぶ濡れのステップ
行きずりのハーモニカ犬は
油のしみ込んだ木柱に
鼻先をふがふが押しあてる
かつて高く ....
どちらを向いても なぜかいつも向かい風
「宿命なのさ」と笑う君
つないだ手さえ「宿命なのさ」と笑う君
向かい風にも ふたりで行こうね
ぼくは早くおとなになりたい。
でも、
パパみたいなおとなにはなりたくない。
パパはわるいおとなの子。
ぼくはよい子のおとなになりたい。
だから、
なんでも食 ....
鋼鉄を 遙にしのぐ
美しく、強靭な 折り紙細工の船にのり
飴色のラタンの椅子に腰掛けて
今宵もまた 私の人差し指は、
暗く果てしない 緻密な航路を正確になぞる
航行中もドアの向こう側には ....
いつか そう遠くない未来に
あたしはあなたの名字を名乗るようになって
子供みたいなあたし達が 新しい命を育んで
木漏れ日の中にまどろむあなたをそっと包み込んで
そんな 底はかとなく 幸せな ....
これは正しい
これは間違っている
曖昧はゆるされない
そんな二者択一を
していくうちにある日
あなたが間違っていると
指摘されてしまった瞬間
自分が決めた価値観で
自分が裁かれてしまっ ....
子供は親の分身ではなく
意思を持った他人と思いたい
と同時に
自分の分身でもあってほしいと
少しだけ思いたい
今自分が死んでも
子供は親の分身であるから
生き続けることができるの ....
寂しい夜には
君の好きな曲を聴く
すると 思い出すんだ
必ず 君がそばにいて
必ず 一緒に笑い合って
必ず まだ見たことのない
地平線の先について 語り合う
....
一 アンタレス disk1
君と夜の海辺を散歩していた、
はずなのにいつのまにか
空を歩いていた
頭上に、海
でも今日はよく晴れていたから
涙の一滴も落ちなくて ....
素潜りで
{ルビ鮑=あわび}を密漁する
丹後半島の
夜明け
海で生まれた太陽と
山に入る月の夢、
肩がこる
髭の男が少年や
座礁した五月
白身のま ....
1997
ひらいているのか
ひらいてないのか
ラムネの瓶から転がりだした目で
すべての皮膚が内側からはちきれて
剥かれた/剥いた
滲む赤い体で
そのひとつの透明な血袋が
なににも触れな ....
眠い
体はボロボロ
疲れ果てる
毎日遊ばない
仕事が次から次へと
入ってくる
餃子スープ
いらんかね?
夢と希望と七星テントウ
勝手にやって来て
勝手に去って行く
人に愛 ....
ふいに夕立ち、
道を行く人々
急ぎ帰るなり引き返すなり
笑っている。
うなる空
大粒の水玉
白い歯で
目を細め笑い合う自転車の学生
それでもパンツをかばう女学生
缶蹴 ....
せつなさ
という名の花が
いま咲いている ので
時間という
風の中で
さびしい さびしい と
泣いている ので
あなた
水をくれるぐらいなら ....
あったまに きたんだ
台所に立つ君を観て
たんたんたんたん
包丁と俎の奏でるリズムが
初めて 僕を大きくしようとする
今の自分を
姿見で観てみるといい
君がいけないんだ
たった今 浴び ....
かわいがっていた犬が死んだ夜に
新しい犬を飼おうと思う人がいました
家族、いなくなる為に準備をして
汚れた服を着るほかないのなら
いぶかしそうな視線に
それでも
違います、とは云え ....
乾いた手紙を君に送ろう
元気にしてる?って
始めの言葉
君がいなくなってから
僕は相変わらずの生活さ
なんて言うのも
どうかなって思うけど
少しは頑張っているよ
例えば最近 ....
1
もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず
つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている
....
あなたとの
夢を見た
一緒に
波のない青い海で
手をつないでいた
でも目を覚ますと
私は独り
どうして
手が離れてしまったのだろう…
隣には誰もいない
....
一人が動くと皆が動く
携帯電話が鳴り響く
こっちにおいでよ
早く 早く
赤信号だって
皆で渡れば怖くないって
言うじゃない
鉄の塊だって弾き飛ばす
コンビニに19時
....
真っ黒な雲の中から
大きな目を開いた瞬間
ものすごい声がする
その声だけで家の窓が
殴られている
窓ガラスが割れそうだ
家が震えている
今度はぼくが雷に殴られる
胸からずしんと
体全 ....
朝焼けと夕焼けの色は
決して重なりはしない
始まりはオレンジの衣を纏い
終わりは朱の衣を纏う
ただ繰り返すだけ
太陽は月を照らしはしない
月は太陽に照らされてるだけなの ....
介添えの眠るお天気雨
ふくらませたかかと
眼を覚ませば
占いのためにだけ
花を摘めない人がいる
なくした言葉を入れる
風の器は すぐに壊れ
花の行方に問いたかったのに
ここ ....
我らは 語るべきだ
海潮の輝き
午後のけだるい 陽光を
夜は 底で 眠り
目覚めの朝露は打ち震えると知っている
我ら 踊る 身も心も捧げて
熱狂は 明日を作る
汗は額を流れ
濡 ....
両の手で抱え込んだ頭が生きているかどうか
確かめるために むに、と頬をつまんでみる。
―反応なし
つまんだ指を瞼に移動させて白目にしてみる。
―反応なし
「生きてるよ、なぁ? ....
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