駆けて来る
駆けて来る
薄氷を割るように
静かなギャロップで
はるかの足並みで
銀のたてがみをひるがえし
地上へと駆けて来る
お前の目の中で火が燃えている
お前が見つめると
....
古い古いソウルミュージックが
ラジオから流れはじめたその夜の
23時
僕は窓をあけ、風を誘い込んで
ノロノロと車を走らせる
マービン・ゲイ そしてマイケル・ジャクソンを口ずさみながら
誰か ....
空に平行線をさがしてみます
飛行機雲も虹も
いつか山の端と交差して
対角は等しいのです
さっき雲の切れ目から
幾筋もの平行線がさしていましたが
やはり水平線と交差して
錯角は等しいの ....
終わってしまったはずなのに
密閉した重い蓋の透き間から
かすかにに甘くたちのぼる
胸の底 荒野の地中から
かぐわしい薫りはゆるゆると漂い
真夜中の片すみにうずくまる
そ ....
廃校の探検隊だぼくたちは廊下がミシンと鳴るアンダンテ
イチゴにも砂糖をかけるアキちゃんが横目で見ているスターバックス
算数が誰より得意なユウくんは今日も釦を掛け違えている
....
わかってんの お宅
俺の方が立場が上なんだよ?
舌撃ちを噛み殺し
回らないろれつで飲む酒は
ストレス性の発疹を腫らし
切り揃えられた爪は
シラフからの警告
明日も仕事 明日も仕事
差し ....
日々繰りひろげられる知略戦は
白という調和を
もろくも
飛び散らせる。
この戦いが生むものは
勝者ではなく、
豊かさではなく、
正義ではない。
支配であり、
破壊であり、
....
大したことはもう出来ない
袋小路で袋の鼠
だから袋ひとつ背負ってどこかへ行くんだ
大したものは入ってない
聞かれたら「ボーリングのボールだ」って ※
答えるのさ
明るい11月の終わり
....
この世界に産み落とされてから
ずっと見てきた光
あの光を手にしたくて
必死に手を伸ばした
でも
この手が掴んだものは空気のみ
光はもっと上にいた
日々 背伸びをして悔しんだり
年々 背が伸びるごと ....
刈入れを終えた田圃では
実りを待たれることのない蘖が
青い頭を覗かせている
下向きの気分が伝播するのはとても容易く早く
そのあと
荒れた土地で希望はなかなか芽を出さない
それでも
....
後で降りてくるよと
サザンの曲を元ネタにした
ショートドラマのオムニバスを
見ている妻に声をかけて階上に登り
詩の投稿サイトとかをチェックしていたら
カチャリ
と
部屋のドアが開いて ....
先月開店したばかりの
真新しいコンビニの店内に
入るとばったり
大きいふたつの瞳と
目が合った
「 おぉ 」
小学校の同級生のともこちゃんは
すっかりいいお母さんに ....
天井から
夜が下りてくる
お父さんは四十年生きて
長かったなあと思う?
布団の中の息子が
息継ぎに顔を出す
しみじみする口のまるい形
「ささやかなこの人生」とつばを飛ばしてナカジマは歌い ....
愛することは酷く醜いから、と
僕は君を殺しているところ
馬鹿みたいに笑って
苦しいほどに触れていた
冷たい今に
「凍える日々を過ごしました
君がまた少し遠くなりました
漸く何も見 ....
なだらかな曲線を描いて
時間が蛇行している
本当は
霧状のものなのに
浮揚している
空虚な意識を投げ込んで
思考は楕円形のひもの上を回り続け
輝きを薄めていく
....
空が裂けた日 しょうがないので仮縫いをしておいた
そのままでは不恰好なので しょうがないので眼帯を被せてみた
パッチワークの空は化膿していた
ちょっとだけ 芯があった
ところで
空が ....
おうちに
赤ちゃんが
うまれた
赤ちゃんは
眠ります
すぅ すぅ
くぅ くぅ
赤ちゃんは
泣きます
ぎゃぁ ぎゃぁ
きぃ きぃ
赤ちゃ ....
「きちんとたべないとつよくなれないよ」
そう言われて
幼かったわたしは
他ならぬポパイに憧れ
うっすら残る灰汁のえぐみに耐えながら
ホウレンソウを頬張った
ホウレンソウのお浸し
....
この夜を渡る
さかなたちは眠りをしらない
そういうふうに作られたから
それを不自由だとも思わない
・
時計台の上で
ねじまき係の少年が
ただ夜 ....
悲しい生き物
おもちゃはその手の中にある
その瞬間に
手離すことに恐怖を感じない 感じなくなる
そのひとつひとつの重さも
桜が春の風に誘われ さらわれていく 花びらの ....
図書館前の信号に続く道へ曲がったはずだった
携帯メールをチェックしながら歩いている
右側から強い光を感じて振り向くと
接骨院の白と緑の看板を目が捉えた
瞬間
現在地を見失い見知らぬ街角に投げ ....
{引用=
カンガルーの母親には常に三匹の子供がいましたが、
お役所が決めてしまったので、
年上の二匹は殺されてしまいました、
胚の子が生まれてくるまで、
お腹の袋に子供がいないので、
....
「泣いた分だけ傷付いた分だけ
人は強くなれるんだよ」
自分で書いた文章なのに
どうしてこんなに嘘っぽいんだろう
「悲しい時こそ笑ってみせるんだ
そうすれば幸せがやってくる ....
新しい人が来たので
かじかんだ指を暖めていた子は
背中をまるめてそっと
席を立った
それは
あまりにも静かに行われたので
だれかが席を立ち
新しい人が座ったことに
だれも気づかなか ....
朽ち色づいた
冬野には
朝なのに黄昏れがある
きょういちにち
ひとにはどうでもいいことで
ぼんやり埋められている
すべてが
じぶんに時間を捧げていない
....
ふと想う
叫び声は空気に
やがて 空は聞き流す
「もう少し後だよ」
彼は囁いた
そんな微かな声を
追い求めていた
それは きっと
手に触れることもない
すべては幻想だ ....
あの街についたら
私は歩くでしょう
確かめるために
間違いなくそこにいた
影というかげを集めて
空がまぶしすぎると
鳥は切り絵になります
川面はしわくちゃにしたホイルみたい
いいか ....
もうてゆーことはなんかもう無理なんじゃないのと目覚ましを止め
夢の中で朝という出発の準備を繰り返し
何度も目覚ましを止め
しかしふたたび急におきあがりまぶたをめくり
くるまれたままの状態で昨日 ....
都会のビルの幻影に
透けて見えるは
幾千の顔々埋まる
墓地の群
電信柱の頂に
舞い降りた一羽の烏
びゐ玉の
澄んだ瞳に映るは
過ぎし日の
東京に燃え盛る
....
ご飯を食べられないから
せんべいと
ミネラルウォーターだけで
生きてみようと思う
というとあなたは苦笑して
もっとやせるよ
と言うんだった
冗談ではなくて
吐いてしまうのだと話すと ....
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