いつの間にか
背中の子どもは静かな寝息をたてていた
スーパーのレジ袋を下におろし
あたしは 一体どのくらいそうしていただろう
電柱には 黒い紙に 金色のマジックで
『キリストは必ず来る』 ....
背中が痛いよ
見上げればお月様
おなかが重いよ
だから
筋肉を伸ばしたり縮めたりするよ
今夜も
夜を着て
招けば水が湧きいずる
鏡に立木や鷲をうつしながら
わず ....
あの人から知らせが届いた。
何度か二人で逢った事もある人。
「入籍したの。名字、変わっちゃった。」
バカヤロウ、世の中のバカヤロウ。
世の中は悪くないんだけども、そうつぶやいた。
【アカマきつね】
そのお社は
今は大きなスーパーの駐車場になっていて
たくさんの乗用車が窮屈に並んでは
ふうふう息をついています
(アカマきつねです)
蝉の声が木々に焼き付く田 ....
・
うちのトイレにはアインシュタインが住んでいる
排泄する度べろべろと舌を垂らしながら
私を蔑んでいる
.
私が眠りにつく前に
息子の顔に二、三度キスをするのだけれど
息子の ....
前の街で
俺は淫売宿のいかがわしい玄関口で
夕立に打たれて濡れながら歪んだ
恐ろしいほどの雷は
地上の何物かを鷲掴みにしようと
空から腕を突っ込むが
本当に一握りの無辜の生命を食い物にした ....
ペッシャンコの蝉が
歩道に転がっていた夏の朝
甘臭い生ゴミの袋の横に
カラリと乾いた屍一つ
カラッポの中身で七日間
うるさく喚いた命の遺したモノ
おい おまえそんな空しい姿になるため
....
どれだけ昔のことかは覚えていない
数か月前か、数年前か、数十年前か
或いは全てが幻だったのか
心地よい眠気を振り払うと
そこは真っ白な世界で
まだ何も許されていないことに
僕達は柔らか ....
湖の花火
湖のもに光り漂い夕暮の花火大会家族ととも
夕焼けの鮮やかに映え今宵楽し風の吹きいる湖畔に坐して
街の灯がくっきりとしてあと数分打ち上げ花火の始まるを待つ
子の夢と親の ....
コツコツ堅い青空の上に
力こぶのように積み重なる入道雲
場違いな黒雲が二つ
空の低い位置を漂流する
小さくスキップして踊るピアノの音
きれいに言葉を剥がす車たち
音声もミュートされる歩行者 ....
せっかくここまで来たのだからと
あなたは言う
あなたの言う
ここ がどこなのか知りたかったから
自分の姿を鏡に映してみた
ああ 知らないうちに
こんな姿になっていた
決して頂 ....
夏
あぢ
なんか、快晴ではない
曇っていて
空気がじめっていて
あぢ
あぢい
君と別れるとさ
俺はもう
切なくて
切なくて
なんか、夏祭りらしいんだけども
俺、見学も参 ....
すみれの花時計で十四時から二十三時までの十七分間を
世界で一番きれいだとうわごとくり返しながら
豚のように運ばれてゆく
荷馬車を降りれば
なまぬるく甘い夏に抱かれるのだ
息を詰まらせ汗ば ....
東野から山科への地下鉄は銭湯の匂いがした
紫色のシートに座り狭い車内を見渡していた
自由だ
自由だ
運がいい
夢から醒めたらそうするように
これからの気掛かりを探すのだった
自由だ
自 ....
凸凹のこころは
少しずれた
凸凹を探し
おたがいの
凸凹を埋めたいの
かもしれない
そうじゃなければ
この胸の
ざわざわは
何?
恋でもない
愛しさでもない
同情で ....
倦怠感と働くことを考えて薬を止めてみたけれど
辛くなって。
だから
今日はちゃんと
薬を飲んで
眠ろうと思います。
闇に想えば
どうか
あなたを愛す
夢を見れますように。
いのちにいろがあるとしたら
なにいろでしょうか
たいようみたいにあかいのかな
おそらみたいにあおいのかな
ゆきみたいにまっしろなのかな
もりみたいにみどりなのかな
いろいろないろを ....
日盛り
頭上に覆いかぶさるのは
この上なく濃厚な夏の青空
ひとしきり蝉時雨
百日紅の花が揺れ
――あの庭にも 百日紅がありました
と どこかから誰かの声
しばし足元に目を落と ....
日本海にしずむ
落陽は
おおきくて美しい
と、ラジオでだれかが言った
*
かつて
五島灘にしずむ
落陽を
―― オレンジ色のおおきな
....
{画像=110806230826.jpg}
ホームに止まった電車の窓越しに見える
同じく所在なく立つ隣人を想う
二本の平行した線路上に交わる事なく
二人は未来永劫交差することは無い ....
しくしく
しくしく
彗星が泣きます
太陽からの風に吹かれ
白い髪をなびかせた姿に
人々は怯えました
小さな砂粒に過ぎないのに
何千倍もの姿に拡大され
魔女のように天を駆ける
....
この夏はいったい どれくらい うめぼしを食べるのだろう。
梅雨明け前くらいから 急に暑くなったから、当然 汗をかく。暑がりのあたしは ハンパじゃない。
スポーツドリンクの中途半端な甘さは嫌いだ ....
逃げ場をなくした熱気が
重く澱んでいる夜の底で
線香花火に火をつけると
涼やかな光の飛沫が
覚めやらぬ地面にほとばしる
しつこく素肌に絡みつく
湿り気を含んだ風の端に
弾き出され ....
ちーちゃんの誕生日の朝
いつものように洗濯機のスイッチを入れる
昼前には電話をしよう
生まれてきたことをお祝いする日だ。
ぽかんと夏空がおおいかぶさり
蝉は式典に関係なく鳴き ....
夏のお空は賑やか
雲の鯨が群なして
北さしゆっくり泳いでく
夕べ摘まれた胡瓜はポリエチレンの中
萎れた黄色の花を畳んで重い体をしんなりと
むらさきの影踊る無人販売所
朝の優しい静け ....
動く石ころを
温められるような気がして。
場面の一部には
通りすがりに
志が引っかかることがある。
意中に収まることであるなら
延長されるべき場面とされ
その場に長く止まろうとす ....
ふと見上げたソラ
あの日と同じで
だけど違うんだね
変わらない
微笑み一つ。
ゆるやかに増す
幸せ一つ。
昨日と今日と明日と
キミと一緒にソラの下
キミと ....
此の肌
白く
夜にだけ
光る
その黒さと
対をなす
蜜のオセロ
純粋な目をして
花の匂いを
纏いましょう
焼けた風を
掴んで
呑んだ
何からも
自由になれるように
中 ....
取り付け可能な器具で
是非、この胸の部分を開けてやって下さい。
使い覚えのない器具で
どうやって開いてやればいいのです?
(同席、同罪の)
私は客でもあり、進行役でもあります。
こ ....
夏のひかりがきらきらしている
微風にみどりが揺れている
存在には影が寄り添っている
音だけが聞こえない
空の水いろが黙っている
雲がこころのように浮かんでいる
外界まであとすこしの
白い ....
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