大型台風が 故郷を直撃した夜
携帯電話で
十年以上も音信不通の父の処遇について
妹と話をした
その話の途中
突然の昏倒で緊急入院した母親を持つ恋人から
メールがはいった
その日 ....
折れ曲がったあなたの身体を
まっすぐにするのが
私の仕事
あなたは
あなたの意志を持たない
あなたの影になってしまった
その瞬間
私たちは知ることになる
私たちが
実体と ....
みどりいろに抱かれた想いが
無機質ななまり色に染め上げられていく
黒いトンネルにすっぽりと覆われ
闇が前後左右の感覚も奪う
いつでも フワフワの砂糖菓子のように
アリスの森で戯れたい ....
絡みつくものを解き
降りかかるものを払い
抱え込むなら
両手でしっかりと
歩む
先に行く人や
後ろを行く人
絡ませたままのものや
降り積もるもの
立ち止まりはしな ....
真夜中の
骨の色素が熱を帯びて
暗く
暗く蒸発してゆくのです
未だに守れぬ約束へと
恐ろしく白い
わたしの骨は
いったい何を支えている
夢か幻か否現実か
未来は己で決める
....
自分が全て悪いことは理屈では分かる
でも言い訳を探さずにはいられない
弱さを覆い隠したい
自分でも自分の心が分からない
でも誰かに分かって欲しいと願う
甘えている
自分のことをどう ....
只今
大変混雑している為
空にお越しの方は
しばらくお待ちください
雄株は欲情に駆られ
自慰を繰り返し
めしべは空気中から
出所不明の花粉を受けて
子を宿す
植物界は古より
一婦多夫世界を構築している
誰も僻まず
誰も疑わず
動物は一人きりを ....
詩:短いのがすき
あまりに長いと、なにを言いたいのかわからなくなる
読む時、作る時、ともにおなじ
短歌:わかりやすいのがすき
自分で作ると、言葉遊び あるいは 飾る言葉は ....
薄暗い廊下の突き当たり
古い鍵を回せば
きらきらと埃が舞うだけの部屋
東のカーテンは色褪せ
ピアノの音色は床に転がって
ソナチネの楽譜も気付かぬふり
窓の外には
金木犀がほろろ零 ....
木漏れ日がもしも零れて落ちたなら
享けとめるためまつ毛をカール
ハリウッドの女優気分で歩こうか秋色緋色の絨毯の上
空高く群れる羊を追いかけて風の尻尾を捕ま ....
伝えることは
誤解を生むこと
そう理解した日から
少年は口を閉ざした
はい と いいえ
があれば充分だった
長い間そうして過ごした
これでもう あのはがゆい思いを
味わなくてい ....
泣いているのはあの人である
公園の日陰にあるベンチに腰掛けて
遠い目をしていた いつか
ずっと昔心を寄せた人の事を思い出していたのか
それとも。
その乾いた細い指の触れてきた道程を
僕が知 ....
怒りを
この体に
押しとどめるなにか
それはこぶしでしょうか
掌のかたちにそれを
開き、放ってもまだ足りない
その病が
揺さぶるのです
だから震えてしまうのです
....
雫が
紙に落ちる
そこだけ
ワントーン暗い
絵の具を乗せると
じんわり
滲んで
やんわり
色付く
涙が
零れて
心が暗くなったら
あなた
私に
優しい色を
滲 ....
神経質な夜に
まじないではなく
欲しいものは
精神安定剤と
ただ話を聞いてくれる人と
主の祈りと
虹の記憶と
腹をかかえて笑うカエルと
あの人のやさしさと
壮大なうねりの如き黒潮と
....
誘い文句は
人生を捨ててみないか?
もっさりとした天然パーマの頭
口ひげ
カーキ色のポケットのいっぱい着いたズボン
腰からは手ぬぐいを下げ
山から降りて来たそのままの風貌で
教室を歩 ....
線路脇に建つ家に生まれて
ずいぶんと長い間 そこで暮らしたせいか
今でも 5分おきに
からだを揺らしてしまう
そうやって揺れているうちに
いつしか わたしは
窓ガラスの
3メート ....
手が二つ入る背広のポケットに 父は誰をや隠したりけん
夜泣きする猫抱き上げて窮屈に 慰められず謝罪する父
台所一人立ちたる母 一人湯飲みの口を無心で洗う
空があんまりひくいので
きりんのくびは
つい空から突き出してしまった
そして見たくないものを
見てしまった
あああんなにうつくしいものを見てしまったら
もうぼくは
なにをみてもう ....
つぶやいた名が深く響く
空は{ルビ鈍色=にびいろ}をして時を孕む
いらっしゃい必然的本体
欲する無欲が降ってくる
浴びる黒髪
月光のもとの
涙する獣道で
懐かしく鋭い爪が轟く
....
いつもと変わらない
思い込みだと思いたかった
あなたと一言交わす度
確信に近づいていく予感
あなたの目はもう僕を見ていない
土に埋められて
ただただ餌を与えられる
1ミリたりとも動いてはいけないんだ
脂肪が逃げてしまうから
にんげんに
おいしく食べられるためだけに生かされているから
土に埋まって
ひた ....
蝶の軌跡は有刺鉄線か
剥れゆく皮膚を剥れるままに
見るもの見るもの
瞼を伏せ、視線を逸らし、
目を両手で覆いたくなるような
垢に塗れた赤黒いそれ
剥き出したままに
海の風が轟々と
悲鳴 ....
エメラルドグリーンの
カーテン越しに
月におやすみ
泣いていた瞳は
滲んだ月ヘ飛ぶ
アイボリーの日記を閉じて
埋葬される文字たち
お別れの祈り
余白から文字を
包み込む
宝 ....
ほんとにいい陽気ですね
魚屋さんの店先でも
おかみさんのお愛想いい感じ
月曜日だというのに
悪魔に魅入られたようないい天気
みんなは外へ出たがっていて
おおくの人が歩いてる ....
一瞬で
それと分かる匂いは
金木犀
幼き頃の庭遊び
細かな花びら
摘み取って
硝子の瓶に蓋をした
秋の陽だまりにも似た
満ち足りた表情で
その濃い芳香さえも ....
蒼白の薄明
永遠に処女の領域
素数のみで刻まれた暗号
純粋遊離線
冷たい蜃気楼
置き去られた天象儀
倦んだ庭園
途絶えがちなピアノの音
未分化な恐怖を秘めた深淵 ....
ぼくの夢にしか出てこない あなたをまだ想っています
時間が止まるような思い出をもっと築きたかった
でもぼくは臆病者で 弱すぎたから あなたは遠いままの存在で・・・
単調でゆるやかなリズムが無 ....
くもっていく
息をすればするほど
生きれば生きるほど
くもっていく
もう見えない
それが外か内かわからないけれど
気にしても仕方がない
もう見えない
途方にくれていたら
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597