記憶の欠片に
そっと 指先が触れて
灰色の空を流れる感情
切り離したくなるような
非現実
ゆらゆら
揺らめいて
漂うだけ
張り裂けそうに動き続ける
誰もいない
....
ねえ にゃんこ
私が仕事に行っているあいだ
君はなにをして帰りを待っているにゃ?
お腹がすいたらカリカリを食べ
眠たくなったらお気に入りの場所にゴロンってなって
本当にに ....
錆色の夕暮れに沈む
その肩に
木の葉の視線が刺さる、
なびいているのは
髪だけではない
ただ
それが何であるかは
誰にも、言えない
まるで
雲を思 ....
夕月は君が
先に見つけた
でも
明日雪が降ることは
きっと教えてあげない
*
君のいちばんのねがいを
たぶん私は知っている
でも
君のいちばんの ....
わたし 話す
わたし 笑う
わたし 怒る
わたし 学ぶ
わたし 寝る
わたし 恋する
わたし 泣く
わたし 跳ねる
わたし 落ちる
わたし 病む
わたし 挫折する
....
水玉模様の細い首輪を嵌めた
羊みたいな純白の犬を従えて
リードを手に黒縁のレイバンが座る、
ゆらゆらと木漏れ日の蠢くベンチ
――お姉ちゃん、犬が好きか?
ああ、こいつビンゴっていう名 ....
終わり
やがて
空が蒸発する
僕は無機質になる
やがて
風が風化する
僕の最後の灯し火を消す
終わりの時は
最初から始まっている
僕は知らな ....
みそひともじの
みそひともじの
こいのうた
みそひともじの
みそひともじの
あわれうた
かなわぬこいの
かなわぬこいの
つづりうた
あわれをうたう
あわれな ....
朝陽が昇るまでのひと時は
忘れられない思い出を捨てるための
かなしい時間にならないといい
そっと歩き出していくには
ひとりでもふたりでも
優しさよりやさしい祈りが必要だから
眩しいくら ....
両の扉のまえで
一足飛びに駆け抜けていく
と
不断に
色彩の加減を
線分の渦の飛翔を
貧しく成っている枯木の枝から
と
転回の焔より微かな襞で
過敏な肩のゆれを
血腥い吐息を
....
地球の地軸と同じ傾きで
ターンしよう
左手でインド洋を
撫でて
右手で北極熊を
持ち上げて
焼けた砂漠を裸足で歩くように
ステップしよう
左足で死海を
またいで
....
引力が、
ある
きみと、ぼく
地球と 月
引力がある
ひきあう
すべては ひきあう
きみに ぼくはひかれる
きみも ぼくに 月に
....
梢にお月さまがとまってる
お月さまだって
たまには
休みたいのよ
情熱はあふれているか
壊すことでしか
伝えられなかったから
もういちど
待ち伏せするほど
イカレてもいなかった
バス停までの道
ワンピース色した午後7時
月が外灯よりも明るかった
白 ....
陽光に余寒あり
沃野の黒土 遠望の白嶺
寒風に身を引き締めながらも
梅花の報に心おどりぬ
時流曲折し
大望得がたくは世の常なれど
黙して時代(とき)に耐えるも
豈(あに)長からじ ....
霜が降りた
歩道の黒い縁石に
雲まで忍び寄る電柱の背中に
今朝のしるしが重なる
雲ひとつない冬空の下を
花嫁が歩いていく
黒地に赤い花を揺らして
うなじに笑顔の雫を落として
半月前 ....
髪を肩の上で切った
さらさらと春の風に遊ぶように
前髪はまゆの5ミリ上
広い空が見えるように
あらゆるものが芽吹き始める
一週間で空の色は変わっている
恋に似た気持ちを
だれかに ....
昼と夜が厳然と在る
昼がある
青の空は抒情を誘い
雲の流れに永遠を見た
陽光の人影の寂しさに
一人 枯野に立ち尽くし
呟きを書き留めている
夜はやって来て
黒い大地が街の灯で煌 ....
この狭い都営住宅の部屋の中にも
20×30の空間は無数にある
その空間をキミたちは
自由自在に遊びまわる
カーテンのかげ
天井までとどくタンスの上
押入れのすき間
整理ダンスに囲 ....
どこすか
どこ酢
どこでしょう…
君に送っていたメール
そのたびに君は、答えてくれていた
どこすノ
どこへ
いづこに、と
メールを送る度に
君からのレスポンスはすぐに ....
アンダンテ追いかけて追いかけていても君が見えない陽射しの中で
抱きしめる速度ですれ違う風はセルリアン、君の瞳に映る
炭酸の雨///下弦の月をマドラーで浸しても味なんてないまま
....
斜めに西陽の差す南向きの玄関から
黒光りする板の間を
やわらかく抜けていくと
暗い茶の間で
老人が折り重なって
お茶をすすっている
欠けた茶碗が
指先でかさこそと音を立てる
奥の部屋で ....
幸せになりなさい
私の分まで幸せになりなさい
こんなところに君はいてはいけない
こんな暗闇の中に君はいてはいけない
私は放っておいてはやく行って
光射す眩しい世界へ
私はここから出れな ....
ぶどうはブドウとよばれてから
葡萄になったのでしょうか
私が生まれてきたとき
やさしくよばれた名のように
もう一度、問うてもいいですか
せみはセミとよばれてから
蝉になったのでしょうか ....
ひとしきり被ったあとで
ようやくアレルギーに気付いたが
どうやら手遅れのようで
ああ、また、目が痒い
我慢していても
くしゃみが止まらないから
たちまち
みんな逃げてしま ....
泡立つ日々が流れ込んだマンホールの軋みが
白い歯に残ったメンソールの味までその振動を伝える
語りたい人が誰なのか
語りたい事がなんだったのか忘れてしまう頃に
マンホールへ流れ込む泡立つ日々は海 ....
あ、か、い、ち、
あか、いち、
私 今日女の子になりました
でも私は
自分がこれからどんどん汚れていくのだと
怯えていた
ただ一点を見つめて
あか、い、ゆう、
....
音符が遊ぶようにして電線をくぐり
時折、絡まってはファルセットになる
美しく奏でるための
言葉たちは、そうしていつも
行き先を探していて
夜、は手招きをはじめる
屋根、そのオクター ....
憎みさえすれば
憎しみさえ持てば
人はいくらでも
冷酷になれる
限りなく暗黒の世界へ
闇へと 沈み行く
人として
姿形を保っていても
冷酷さと 残虐性は
増すばかり
人 ....
ありのままに
よごれていけたら、いいね
きっと、
すべてを
にくめぬように
そまればいい、
ただ
たとえ
だれかが
よごれ、とよんでも
それはかならず
うつくしい ....
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