母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったか ....
大学生ぐらいの小さな女の子が
自分と同じぐらいの大きさの
真っ赤なケースで
たぶん中身はそうであろう
金管楽器を背負って
のしのしと前から歩いてくる
普段は金ぴかの ....
わたしのなかで
剥がれおちたなにか
そのなかにある
あかいかたまりのなかの
あかいわたし
剥がれ落ちたわた ....
学園都市線の高架下
灰色の橋脚に二羽の鳩が仲睦まじく
寄り添ってはキスをして
激しく身をよじってはまたキスをして
やがては重なり 羽ばたきながら
気の早い春が固い雪を緩め
茶色く水っぽ ....
歩くのはいつも なまの義足
寄木細工のじん帯をか細い骨で震わせながら
足裏に
肌合いのわるい
なじめなさを押しつけても
二つのものが 交互に役割を担うから
どこか
と呼ばれるcell(セ ....
十二月の夕暮れは突然やってきて
時間の無い坂道を上って行く
左手に灰色のニコライ堂が聳え
覆い被さりながら
聖橋の先には聖堂の黒い森
神田川もJRも跨ぐ聖橋
暗いトーンの夕暮れから
....
きみを
たいせつにされていない時間をくべて
かなしい町にしよう
はじまりしかない町
わたしが保証されるほど
糸が切れていくようなので
まちがったままでいいのです、
す ....
白魚にためらい傷がありました
スーツ着て会社に行かず凧あげる
君だけが友達でした藪椿
春淡し俺から会社辞めてやる
種芋になれずに腐り果てていく
ミシュランの調査員ぶり田螺 ....
濃淡を、くりかえしながら先割れのスプーンに近づいている朝
演じるということ、やさしさということ、おろし金から飽和する雪
質量をもってしまった画家はもう手のひらを返すようにかなしい
....
硬直は誠実ではない。丸い玉の中をハムスターが走り続ける。同
じことばかり繰り返しているとバカになる。しかし同じことを黙々
と繰り返す熟練した職人はバカではない。悩ましいことは決して
有意なことで ....
二〇一二年の一雫が
左肩に落ちる
乾いた肩が ほら笑った
指で払った雫が
隣の肩にかかる
右肩の笑みが増す
隣の肩が羨ましげに
指をくわえる
余計でもない一雫が
転々と分 ....
太陽を食べながら
冬晴れの冷気を泳いで行く
空に笑いかけて
わたしは噴水のように歌っている
土地っ子のヒヨドリも
旅行者のツグミも
わたしとともに歌っている
白樺も我を失うほどだ
....
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足 ....
リズム、フレーズ、バイブレーション
メロディにスパイス
壊しながら構築する
リズム、フレーズ、バイブレーション
星が明るかった
夜が風が冷たかった
月だけが笑っ ....
この宙ぶらりんの、
したたかで弱い僕の情けなさを
知らないあなたは
幸せなのかも知れない
と、またも無重力の世界に身を埋める
どうしてもニコチンから抜け出せないのを
意志が ....
白菜68円だったからさー
怒髪の女房に蹴り出されちゃって
憔悴とコンビニ弁当かこつ弟にも鍋いいじゃないと
思ったわけよ
一族のレプラみたいな私でも一応お姉ちゃんじゃん?
て呼ばれたこと一度も ....
いつだって ゆうやけこやけが聞こえるまで
遊んで僕ら 走って帰る
足りないものだらけで
ほしいものだらけだったけれど
野球選手にだって
スパイにだって
ヒーローにだってなれた
....
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あ ....
かなしい夢をみて
目覚めた朝は
ああ、夢でよかったと思う
けれど
かなしいことが
なくなった訳ではなくて
心の引き出しを開けたら
別のかなしいことが
そこにある
引き出しをちゃん ....
静かな 待合室に響く
早口で話す声
隣りにいる付き添いの人は
慣れているのか
相づちさえ打たない
脈絡もなく
しゃべり続ける婦人
耳を塞ぐ
イライラを通り越して
不安 ....
降り続く白い冬
いまはただ
うつむいた雪が
降り積もってゆく
脊髄が 錆びついてくるのを感じる
骨が膠着し 何も言わなくなると
ますます冬は
冷たくよそよそしくなる
寒さが喉で固ま ....
僕の目指す
ドラミングは
どっしりとしたリズム
それでいて
軽やかに転がっている
隙間に ぴたっ とはまった
かと思えば
メロディーの上で踊っている
ビートを刻 ....
川のほとりの
裸の枝の先に片方だけ
手袋がいろとりどり
沢山刺さっている
風が吹くといっせいに
手を振っていて
どこかで探している持ち主に
さようならと別れを ....
さむいさむい小さな箱の中、そこがふたりの始まりでした。
ほっぺを真っ赤にしたトマトはまるでお日様をそのまま
詰め込んだようで元気いっぱいはちきれそうです。 ....
不思議
深く眠りながら
果てしなく醒めている心地
見えない舟が 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ
夜は青く
あえかな香りが僕を包む
この流れのほとりには 何処まで ....
澱粉質は
白くて柔らかい
子持ちのセラミック。
あぁ、割れた卵の保管場所。
ざわめき始めるビニール袋。
カリの偽装が眠りにつく頃
新たな擬装の目覚めを見る。
未完成を刻む台所 ....
君の素肌に触れた日は
忘れもしない 夕暮れの
君が十九の秋でした。
僕の心は君だけを
思ひ焦がれて
千々(ちぢ)となり
集めて鈍く燃えたのです。
誰にも言はず
誰にも知れず
....
君がリリアン編んで
見上げた空は花と同じ色で
ぜんぶ、ぜんぶ春だった
ゆびさきで、光源をたどる
なくしたもののかたちは
思い出せないけれど
なくしたものから芽ぶいたのは
街でいちばん ....
ゆらゆら路地裏に消えていく猫の尻尾
日曜日の午前9時
空がある
雲はない
宇宙がどのようになっているか いつの日か科学は突きとめるだろう
宇宙が何故在るのか 誰も永遠に分からないだろう
テ ....
わけてあげると
たわけたことを
のんきにみせてる
づきづき わらう
かなしばられないかおで
そようのないがしろな
ほのぼのやわに
ちゅあちゅあ こぜり
みくだし みくるい
....
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