回転扉の向こうはサバンナだった。
「さぁ、はやく。」
何かに躊躇っているうちに
電解質と一緒に失われた
青という名の雷鳴。
「サバンナに広がるベッドには、 ....
箱に詰めて流したきみを
どこか異国の空が受け止めてくれているころかしら
どうしてもコール音が鳴りやまなくて
きみは深海の奥深くへ行くと言ってきかないものだから
回転する機械はいつも
わた ....
目には目を、歯には歯を、
このハンムラビ法典の言葉は
復讐法だとか拡大報復の戒めだとか
そんなふうに言われてはいるけれど
この言葉の連なりに
私はひとの悲しみを感じるのだ ....
「無」
カラカラの大人を脱いだらギリギリの元気
ギリギリの元気を脱いだらテラテラの苦笑
テラテラの苦笑を脱いだらシワシワの孤独
シワシワの孤独を脱いだら なんにも無い
....
帰る場所を
見失ったのです
後悔を口にするのは
容易い
でも
君が帰って来る
訳でもないし
元の幸せな日々に
戻る訳でもない
いつまでも
本音を言えず逃げる私に
素直な
....
花咲く路
朝 集り
妻と二人で参加して
地図を渡され
土曜日の伝道
秋の日の、花咲く路
家々の門辺に
数多の花
一つ一つ,、愛でつつ歩む
人に会えば
笑顔になり
花 ....
すれちがう人の香水の匂いが
鼻にまだ残っている
僕が貴方を思っていることを
手渡しで渡してもいいですか?
今はまだ分からないけれど
いつかは答えが見つかると信じているよ
....
専用線の貨物列車を
雑草の生えた線路の際で見送る
ダダンダンダン
ダダンダンダン
それは思いがけぬ速さで駆けて行く
街の風景に似合わぬ
大きな図体に圧倒される
シズシズと ....
影に追われながら月を追います
切り絵のような林の向こう
夜空の手鏡に手をのばし
まぶしさの向こうに空蝉をさがすと
指先にしがみつき
掴み取るとカサカサと砕ける
乾いた血のような残照の地平で ....
ひとりのおおかしぎが
海を渡ってきたのを
見ましたか?
それはどんなふうだったでしょうか
せなかを丸めて
いつものように
口もきかずに
それでいてたくさんのことを
瞳で語り
そん ....
夜の揺らぎの隙間を埋めるように
単調な音楽が鳴り響く
傷ついたレコード盤
あ行の旋律
は行の音階
誰にも聞こえていない
誰も聞いていない
真昼の顔を脱ぎ棄て
裸の肉体を擦り合う ....
彼女はブランコがお好き
路地裏に佇む溜まり風や
お向かいさんの飼い猫に
思いを馳せている、毎日
思いついた恥ずかしい台詞を
口癖のように好き勝手呟いて
....
いつもよりはやい積雪に
枝ごと晒された 紅葉
雪と呼ばれるものが
灯る頃までには
枯れているはずだったのに
白くあつい力が強くかかる
やさしく包まれても 落ちるのは
雪と呼ばれる ....
ふいに起こされたフクロウが
コトバを求めて暴れ出す
わたしの両手は何時の間に
カタカタとキーボードを叩き出し
ズレたピントを合わせてる
カタカタ… カタカタ…
音符がくるくる廻 ....
秋の朝
濃い黄いろい道を
ゴルフ場へと向かう
きょうは暑くなりそうだ
秋の夕
青くて灰いろの道
ゴルフ場を後にする
つった足でアクセル踏む
僕は ....
捨てきれぬ
いくじなし
しがらみが 恋瀬の奔流をくじく
あんなにも
四時に 臥所の三方の上 斯界を離れ
乱れた午後は
広い肩をまるめて
背を向けた
灰蒼色に、空の落ちた緞帳 ....
おろしたての石けんの匂いをくんかくんか嗅ぐとき、ちょっと優しい気持ちになれる。
何気なくつけたラジオから好きな歌手の曲が流れてきたとき。
アイスをお皿に盛らずに大きいカップから丸ごと食べるとき。
....
指の先までウォーターベッド
赤ん坊はたぷたぷとした混沌だが
お母さんがいるからだいじょうぶ
ここにいる、
ないている、
お母さんは駆けてきて
果実グミのような鼻を口で覆って
ちゅ ....
貴方の居ない夜は寂しい
ベランダで
夜風に吹かれて
お酒を飲んでも
貴方が隣に居なければ
どこか味気ない
初めから分かってた
叶わない恋だと
いくら私と
シーツの波を作っても
....
真冬 心臓を射ぬかれた
彼は舞台の上で輝いていた
視線が釘付けになる
必死で名前を検索し
ブログにつきあたる
それからは、毎日ブログに
アクセスし、
”ファンです”とコメント ....
「観」
部屋の片隅に置かれたポトスのように
見落とすことも出来たはずなのに
僕はうっかり君と正対してしまった
君のいとおしい傷跡を観てしまった
「葉」 ....
光を恐がらないで
震える あなたは
優しいから
言葉の中で
迷い続けてしまう
いつか見た空が
美しいと思うのは
心の隙間を埋めるような
静かな瞬間を
きっと 今求めている ....
あまくなった
熟れた私は
のばしかけの髪を
洗う。
したたる
雫をなめてみて。
りんごの
香りがするよ。
モーツァルトを聴いて育ったりんご
のように
あまい
からだ。
....
再起? 元に戻せる悦び等味わう必要も無く
吐息、 深く濁して、瞳開きながら眠った
背徳、 残し去るは、紫の夢
解得、 できぬ体、灰色まで薄まれ
心と言葉と子供の頃の
叫んだ声今更 ....
季節外れの神社に
十歳の僕と親父が歩いてゆく
親父は何もしゃべらない
僕も黙ってついて行く
参道の階段には銀杏の葉
黄色い黄色い石の道
段々を上って一息入れる
親父の肺は一つしかない。
....
夏の終わりを惜しむ人がいる
勝手にエアコンをつけて
夏を拒絶していたくせに
夏の終わりの
さみしさは感じているようだ
夏は夏らしくしていたかっただろうに
異常気象とやらの
まわりの勝 ....
無知な人たち、と
父の生家に唾を吐き
母が消えた
時の区分は夏、そして
秋にも依然、消えていた
秋の再来
消えている母
九月は母の誕生月
父はきちんと知っていた
本日、九月の二十 ....
まっすぐ流れる川の向こうに
大きな病院はある
窓の灯りはみな消えて
無言のままそびえたつ
月あかりがわずかにもれてくる病室で
眠れない乳がん患者が
隣のベッドの寝息を数えてい ....
目が覚める瞬間の耽美、すなわちそれは曖昧な伏線を凝縮した線路図のようなもの
一連の流れは稚児の指先が母親の元に辿り着く前に行われ、
そのことによって絡めとられた誰かの睫毛は
昨日へ帰るように促し ....
おーい、と言った
おーい、と返ってきた
そっちはどんなあんばいですかあ、
と聞いたら
そっちはどんなあんばいだあ、
と聞かれた
それじゃ、意味ないです
お義父さん ....
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