ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい。
私の口癖 ごめんなさい。

すいません
すいません
すいません。
私の口癖 すいません。

私はボールに入れられて
かき回されて
そ ....
わたしは
あなたの音楽でいたい
あなたのくちびるがそっと開いて
嬉しそうに口ずさむ
空に向かって呼ぶように

わたしは
あなたの水でいたい
奇跡の泉にはなれないが
乾いた心を潤し ....

衣替えが近いので
冬服を夏服に入れ替えることにした
天袋の奥にしまいこんでおいた段ボール箱をおろし
夏服を一枚ずつ箪笥の引出しにおさめてゆく
最後に
去年の夏によく着ていた
さくらん ....
雨の音がまるでオルゴールのようだと、ナナが言った。
僕はオルゴールなんて見たことがなく、それがどういうものなのかは知らない。そう言うとナナは目を丸くして驚いた。

「ゼロはオルゴール ....
{引用=

ゆるやかに 見下ろした 深い夜の森は
慣れないおれには 凝った 闇の塊に見えた

あなたの 示す先から 遠く届く
波の 弾ける音で 崖の存在を 測る

ゆるい風にさえ 途切 ....
街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた

女が買い物にいくのを女の部屋で留守番した
低層階だから木々の先端がガラス戸ごし ....
風に
吹かれながら
野原に咲いている
たんぽぽが
ひとつ
ひとつ
空へと
ゆっくり
飛んでいく

風に吹かれた
たんぽぽの
白い綿毛は
どこに
行くのだろう

ふわふわ ....
気圧の上がらない交差点で
空を見上げた
そこには少しの眩しさを残して
手の距離よりは遥かに遠く
銀鼠の雲が広がっている

知らない街の知らない人々が
交差点とは名ばかりで
これからも互 ....
思い出す

女子高生の頃
道路に急に出てきた
サッカーボール

ボールを拾いに来た
利発そうな小学生

”ありがとうございます”
そうていねいに挨拶してくれた

なんだか とっ ....
きき手の手首が
にぶい痛みを届けてくる
午前二時に起きて
針を持つ
からだの芯部から
花びらが
溢れて
とめどなく溢れて
殺風景な部屋を赤やピンクに
踊らせる

女は陽炎を抱えき ....
うちで飼っているヤマトヌマエビが脱皮した
と嬉しそうに妻が脱け殻を箸につまんで見せてくる
食卓に置いとくから見てね
暫く飯喰いながら脱け殻を見るようになり
ヤマトヌマエビの脱け殻に慣れてきた頃 ....
永井さん

ぶらぶらと侘びた振子の行路かな
玉ノ井を出でて豆炒る日暮なり

駱駝見せ転がる羅刹「浄土だよ」
往生の痕が畳に染みている



坂口さん

オニふんをイオン洗浄 風 ....
新緑の季節
五月の朝の陽光を浴びた
ニコライ堂 緑青に覆われたドーム屋根

明るい陽光に
くっきりとした陰影を残した
コンドルの遺産は
一二〇年経った今日も
聖橋から靖国通りに向かう坂 ....
仕事帰りの疲れた身体をシートに沈めると
ひと駅間に
うつらうつら
して

ごく短い夢/妄想を見てしまう

夢/妄想から醒めた瞬間
時間の感覚が混乱して
おいてきぼりを食らった気分で
 ....
妻が組紐を編んだ
寿ぎの色の紐を選び
清めの石を結わえた


結び目はゆらゆらと
日々を遠ざかっていく
思わぬ梢を揺らしながら
見えない網は遥かな岬にまで届いた


自分が結び目 ....
アジサイの蕾ふくらむ真昼どきふと戦争の頃思いいず

公理さえ定理もいらぬ人もいる健全に過ごさねば滅ぶ

妻ととも来年からは二人して新しき人生はじめむかな
 {引用=
 実在しない恋人に捧ぐ。



公衆便所で 首を吊る姫君
顔色ならば じゅうぶんに、わるい

たとえば 美しい女でなくても 踊れる舞台は あった。

たとえば、「もう ....
舞台の緞帳はいよいよあがり

しかしその舞台のうちで更なる幕は開かれる

改革は合わせ鏡

今や幾重にも続く世紀の幕開けに

観客は右に左に首をかしげ

出演者達は台本を忘れ

 ....
重油が雲のように流れうねる
粘液質の眠りの底に響いて届く
何色かの鐘の音色に共鳴する
筋肉繊維の無数の弦が共震し
開かれる眩暈と明晰の間の扉


甘く緩く脊髄を対流する
胸 ....
白と黒
浮いて沈んで転がって
押し出された僕の世界
通り過ぎて
恍惚と

視力はなくただ暗い
薄っすらとした現実で
枯れて枯れまた枯れて
何遍でも崩れて消えてゆく

ぐしゃぐしゃ ....
 
見たくないものを
見ないようにしていても
限界がある
 
自分の心もわからないのに
君に向き合うなんて
やっぱり出来ないのかな
 
今 僕に必要なのは
君じゃないし
君が必要 ....
冷蔵庫ゆっくり冷えていくものが光のような気がしてならない



やっと今一人で立てた足元にいろんなものが這いのぼってくる



ゴミ置き場月光に散る貝殻が泣いてるまぶたに見えなくもない ....
朝起きて 台所のブラインドを開けると
猫が 物陰に隠れて
つたの絡まる切られた木の上の方を見ている
そこには ヒキナギのつがいが
巣をはぐくんでいるのだ
が いつもはもう チチチとさえずるの ....
私が心配だったのは
あなたが私に
泣くなよ 
そういうのかも知れない
と思ったからです

あなたが私の
笑顔だけがすきなのなら
私は今朝の花みたいな
微笑を枯らせない

ゆうらと ....
太陽が西に傾き
橙色の弱光が窓ガラスを抜け
誰もいない教室をほのかに染める
グラウンドでサッカーボールを追う少年達
その声が
遥か遠くに聞こえる

教室の後ろの掲示板
はられた絵が眠る ....
雨が降ると
窓を閉めてしまうわたしは
泣き虫を人に押しつける

晴れの日なんて
家中の窓を開けて
外と中の境を無くして
鼻歌なんか歌ったりして
それがまた
となりのトトロだったりする ....
季節を呼び戻して
君の声を手繰り寄せる

静かな夜だから
一人きり。

雨に滲みそうな
微笑みを感じてる


顔をあげて。
君の驚く顔
愛しさの欠片 手に入れた気がして
 ....
 
 
イマ カエル

妻に電話する
自分の声がおかしい

イマ カイモノ シテル

妻の声も
カタカナになっている
おかしい

近くで息子の声がする
オツキサン ミエナイ ....
{引用=
空っぽの水瓶がひび割れる音がする
誇りを失ったその時は殺して
無様に誰かの足元に跪くことのないように

空想の純潔を
手折る薔薇を
遠視する愛を
合わせ鏡に映して

時々 ....
色濃い恋の一ページをめくったなら
淡白な秘め事が見つかったりして
季節はいつも密やかに熱を帯びていくようで

バスに揺られて早十分、降り立つと見知らぬ土地
あなたの匂いを探してみるけれど ....
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