重ね合わせた掌に のせる想いは煙り
ろうそくと線香の火に 日常が遮断される
目を閉じ 心の奥に目を落とすと
闇の中にかすかに
小さな子が 手を合わせている
幾人いるかは 暗くてみえない
....
雪の舞う硝子の中で君は
まるで冷たくないみたいな振りをして
もう死んでいるみたいな振りをして
温かい灯りに横たわっていた
虚ろな瞳を何処ともなく向けて
不思議な味のアイスクリームを齧っていた ....
筋肉痛に薬をぬりこむと
段々 痛みが薄くなる
不思議だ
そういうものだから買ったのに
神経が感じなくなる痛みに
漠然とした不安がひろがる
しかし 不安より生活だ
とにかく痛まなければ ....
{引用=一部内容に猟奇的な表現があります
不慣れな方はお読みにならない事をお勧め致します}
序章 ― 既視との遭遇 ―
尿意を催し真夜中
廊下の電気を点けた時
玄関の暗がりに一瞬、顔が浮 ....
読みかけの本を閉じて結んだ髪をほどく
夜は音もなくすべってゆくベルベット
やわらかに{ルビ項=うなじ}にまとわりつき
わたしは旅に出る 夜の時間に分け入り
夢の中で出会ったあなたに会い ....
{引用=
海のむこうは
まだ 昨日という夜のやすらぎのなか
夏の 陽をすった赤い顔の子が眠る
男の顔をしはじめた お前の
ベッドのはしに座れば 薄暗がりのそこは、
青い ....
人文
定期的に
何故なのかは知らないが
四年ごとに人体の精鋭が集い
ポテンシャルの極限を競う
資質に研鑽を重ねてのしあがって来た
いわば英才だが
鍛えるだけ能力が伸び
最も努力し ....
君の街に
朝がきている頃
僕の街には
ゆっくりと夜がくる。
街の真ん中に、
ゆったりとした
美しい川があるから
夜は、星の光をいっぱい集めて
キラキラ輝いている。
....
土の匂いがした
草の匂いがした
木の匂いがした
日陰ばかり歩いていたら
人間も虫になった
鳴くこともできず
飛ぶこともできず
交尾の仕方もわからず
それでも人間は
虫になれた ....
いまだに焼かれている
真夏の紫外線に焼かれている
皮膚を失ったその石積みが
角質化した褐色のコンクリートが
汗ばむのは
放射熱、反射光
白いテントで防げないその閃光に
遠く台風雲を浮かば ....
駆け抜けてしまえないのがもどかしい屋上だった8号館は
まばたきをするたび更新されている影あり春の日は万華鏡
「ガイブセイ?」「うん、外部生。」
かんたんに友がつくれてし ....
雲が湧く
あの水分はかつてどこでなにをしていた
洗顔の水
水溜まりの水
波
せせらぎ
涙
こぼしたジュース
幸福というものもそういったものなのだ
幸福というものも
あの優しさやあた ....
{引用=
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:::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::: ....
そらくんたちと
子供公園であそぶ
気温36.2℃
親たちは木陰に避難し
子供たちだけが
めまいのする夏のさなかの灼熱を
嬉々としてうけとめている
なつをワンダーランドに変える魔法を
いつしか使えな ....
どんな美しいひとを
思って
いや、前にして
あなたは言葉を紡ぎだして
いるのだろう
甘く柔らかい感触は
いつも あたしの心を
くすぐるのだ
大きな体のどこに
少女のよ ....
おかあさん
おかあさーん
わたしを産んだ日は
晴れていたと聞きました
満開のサクラ
初夏のような西陽のなかで
汗をかきながら
わたしを産み落としたと。
産院の名前を覚えています ....
蝉時雨が聞こえない夏
外を出歩いていないから
なのだろうかそれとも
夏の暑さは茹だるよう
確実に季節は巡る
けれど蝉の声に存在感がない
これは何だ
聞こえているのに感じて ....
そして私は見つめる
いま目の前にいる君を
すでに失われたものとして
いまこの時の君のあざやかさを
そのままに胸に灼きつけるには
幻とするよりほかないのだから
これ以上
近づいては ....
向日葵のこと (2012)
話の腰を折ってすみません
思いもよらず向日葵が見えたので
つい
その
いつまでも変わらない気持ちもあるのかなぁ
なんて
こと
いつもの駅に向 ....
心臓の音が聞こえる
満員の観客席が静まりかえり
演技を見守る
終了十秒前を知らせるブザーが鳴り
最後のタンブリングを駆ける
響き渡る着地の音
フィニッシュを決めた両手は
拳を握り ....
例え握りつぶしたとしても
きっと
手は汚れないと思うんだ
乾いてひび割れてきている田んぼにも
まだ新しいビルの真っ白な壁にも
しっとりと重たい町屋の歪んだ屋根にも
よろよろ ....
三日月は盲いたふりをして
星達は目を伏せ囁いた
空が瞬きする間だけ
僕達は自由になれたんだ
輝く夕暮れの碧色に
叶わない未来を描いた
指に絡んだ君の嘘に
気付いて知らないふりをして
....
玄関を出ると黒い靴ひもがほどけて
夕暮れの空が広がった
垂れ落ちた靴ひもの先に
老婆がつかまっていた
ぼくはほどけたひもを結び終えて
伸びをする
高く 大きく
今日の夕焼けの売れ行き ....
朝っぱらからセミが鳴いて
目覚ましを見れば六時
すっかり明け放たれて
夏は盛り
百年前を思い出すようだ
目が冴えたから
いぎたない二度寝はやめる
こんな朝は山盛りの果物でも食べれば
....
あの河が望んでる
一つの答えが出せなくて
ごめんね
気の利いた答えは
出払っていて
今頃は海原だろうか
あの河が清らかに見えて
その跳ねた水の飛沫に
打たれた誰も彼もが
感銘 ....
碧い夢の水面(みなも)を映した瞳は、
ただ見るともなしに忘れられた出来事を想いつづけ
あの日、高い山の頂から眺めた
無数のもがく手と足が遠い海までつづく
静かな、地獄図を見ている
秋の空 ....
気温 29℃
風速 3.1m
湿度 78%
鋼鉄の肌に汗がつたう
夜空をきりとった 明かり窓」からの月光
ウラン235の心臓の鼓動
「「 父さん、ここはひどく蒸 ....
スマートフォンを手にして
花壇の隅、おじさんがぽつん
RPGにも飽きて動画とか見始めて
キリが無い二十三時
月に五千円の小遣いを貯めて貯めて
欲しい物は飲み代に代わる
終着駅間で際すれ ....
1
僕たちは毎日穴を掘る
いつか
自分自身を
埋葬するための
君のその穴は
十分な深さか
君自身を
埋葬するために
その穴を埋めるのは
我々の仕事だ
君を
埋葬する ....
ルノアールで珈琲を飲む
革張りの椅子に座り
香りを楽しむ
入っては出て
出ては入ってくる
人を眺めながら来し方行く末を思う
大学生のころ
通っていた喫茶店はルノアール
だったか ....
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