すべてのおすすめ
行く手を遮る人のように
不安の影がたちこめる
追い払うために
小川のほとりに立つ

苔が敷き詰められた庭の清流
岩の向うに竹林の藪
たたずめば
火に群れる虫のように
影たちがどこから ....
十一月六日は
ぼくの革命記念日
書類でできた
書斎の階段状の巣の
撤去を始めたのだ

たちまち
透明な羽根をつけた
兵隊蜂があらわれて
警告を発する

「近づくな」
「何年もこ ....
繁みの間から語りかけてくる友だち

幼いころに拾い集めたら
食べるとどもりになるよ
あの子はきっと
食べたんだよ
という子がいた

友だちの中にひとり
どもる子がいた

きみはド ....
なんとなくせかされる気持を
落ち着かせようと
傘を開くように
立ち上がる

肩から力を抜き
仙骨を立て
腹から息を出し
前を視ると
スクリーンが
ワイドになる

混雑する電車を ....
街路にいるぼくが
語りかけるとき
胸の塔の
小さな窓があき
風がはいって
搭の中に眠っていた
もうひとりのぼくが
街路をのぞく

去っていくときに
長い髪をゆすって
一度だけ
 ....
合気道の稽古で
左目を傷つけた
痛風の発作が
右の親指の付け根に出た
車庫入れのときに
自動車を壁でこすってしまった
黒皮の財布を失くした

それでもぼくは
幸せであると唱える
 ....
不意にこころに訪れる黒い種

夜道で
声をかけられる
ぼくの横隔膜が振るえ
喉まであがってきた声がつぶれる

職場で
背後から近づいてきて
落ち度を探る視線の先が
サンダルを履いて ....
ぼくのこころに根をはって
大きくなった老木が
公園の散歩道をゆく

墨絵のような老木から
枝が生えて
格子状に柔らかく伸びて
その先に花が咲く
躑躅の紅い花
ハナミズキの白い花
菫 ....
ぼくが朝に来るたびに
遠景にある像がわずかに
動く気配
それをモアイ像となづけて
毎朝
位置を確認する
いつかぼくと一体になるために
近づいてくるのだ

事故のときには
重い像が空 ....
朝の心の空に
温暖前線がやってきて
晴れて
温かくなった
さっきまで雨が降っていたのに
雲も遠くへいってしまった
公園に散歩に行って
寒椿の花をながめる

午後
嫌なことを思いだし ....
汲みあげる
言葉になる前の想いが
溶けている井戸水から

丸い壁の井戸の底の水面には
手がとどかない
のぞきこむと
そこには何十年もつきあってきた
おれに似た顔がいる

顔はつぶや ....
日々の不安に花が咲く

小針の形をしていて
胸に痛い不安の種を
心の庭にまく

その姿が見えないように
土をかぶせて
言葉の水をまく

新しい種が
胸をチクリと刺す
それも ....
おれの家にはカミサマがいる
毎朝公園を散歩する
おれがよりそって歩くので
怪しげな影は近づかない
近所で揉め事だ
カミサマを守っておれが出ていく番だ
言葉に気合を入れる
四十年近くも会社 ....
走りながら汗をかく電車の車窓から
おれは膨らみきった雲と真向いになる

なんでそんなに大きいんだ
思いを小便のようにためこんで 
我慢しているのか
まわりの雲は白いのに
おまえだけ灰色で ....
灯りを消してベッドに横たわり
脳裏に
小川を流し
縁に笹の葉を茂らす

夜眠れない
苛立ちを
笹の葉にのせて
流れるにまかせる

明日の不安は
確かにあるが
それも葉にのせて
 ....
体育の授業でできなかった
隣に座る女の子が休み時間に
ぼくを誘ってくれた
ふたりで校庭をはしって
鉄棒につかまり
練習を始めた

雨の降らない日は
休み時間のたびに
ふたりで鉄棒をす ....
時は切れ目のない波
凪いだ海の
ゆるやかなうねりのいただきの
光るところから
暗い窪みまで
隈なく見つめていた
幼い日

小学校でいやなことがあると
深くうねる波の底に下って
浮か ....
国道四号に抜ける
夕暮れの千住の小道に
スタンドバーの看板の
男の顔の上半分が赤くなる

大人になればこの店で
夜を過ごせるのか
まだ小学生のぼくは
家に帰るしかない

日の光が消 ....
駅でたくさんの人が下りたあとの座席に
包みが置かれている
忘れ物だ
ぼくはあわてて取って
フォームを歩いて
事務室にいって
遺失物の届出をしようとしたのだが
形のあるものでないと受け取れ ....
熱せられてどろどろになった
黄色い言葉を型にいれる
冷えてプリンのように固まったのを
皿の上にもる

黄色い言葉は
テーブルの上の静物画だ
触れると聴いたことのある歌声
この中にきみが ....
雨の朝
小学校に向かう道
長靴で水たまりに入って
退屈をけとばす

一瞬
水滴が空にむかって
飛んだのを見た
気がした

一緒に何かが
地上の繋ぎを解かれた
風船のように
ぼ ....
夢で大人にお辞儀する子ども
互いに正座している
どこの子だろうか
黙ったままうつむいている
何のために向きあっているかもわからない
目覚めが近づいて
シルエットがゆれだす

夢の白い網 ....
青紫の花びらに
涙がひとつ
めしべの奥の
白い洞窟に
隠されているのは
新しいいのちが
育まれる仕組み

蜂がはいっていく
蟻が群をなしてはいっていく
ぼくもはいっていく
男は虫 ....
ぼくの声を
受けとめて
返してくる
きみの息づかいが
ぼくの耳のカタツムリに届き
回転滑り台をおりて
胸にまでくると
安心する

迷うことがあると
きみに電話で話す
話すだけで何 ....
嫌なことがふりかかると
時計仕掛けの人形のように
鳩尾のあたりに
現れるのは
何だろうか

黒い服を着て
蒼い顔をして
胸の中央に漏斗を置いて
彼は悲しみの液を注ぐ

注がれてぼ ....
闘いの布石をする
陣地を作るために
白石を置いても
ほころびはでる

黒い石を
囲んだつもりが
逆に囲まれて
陣地が取られそうになる

碁盤の闘いのひとところ
先を読むために重ね ....
思わぬ方角から飛んでくる
ボールのように
不幸は突然
ぼくに当たる

視界が狭くなり
周りが暗くなって
倒れるときに
歪んでいくぼくの顔が見える

しばらくしてもうひとりのぼくが
 ....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く

底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
地上で使った資料の多くを海の藻屑にする



書斎は浅い海の底
侵食された岩の本棚に
小さな貝が貼りつく
整理された書斎には
イソギンチャクや
蛸や珊瑚が棲みつく
海面 ....
夏の朝
海浜へ続く道
サンダルと
ランニングシャツで歩く
道端に月見草が揺れる

雲が盛り上がっていく
形が何かに似ている


腕がのびて
腰がひろがって
口が開いて
何 ....
ただのみきやさんの殿岡秀秋さんおすすめリスト(30)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
胸のせせらぎ- 殿岡秀秋自由詩514-11-2
革命記念日- 殿岡秀秋自由詩314-10-1
ドングリ- 殿岡秀秋自由詩914-8-1
落ち着く- 殿岡秀秋自由詩614-6-15
胸にチクリ- 殿岡秀秋自由詩10+14-5-1
ぼくは幸せである- 殿岡秀秋自由詩914-4-1
不安は詩の母である- 殿岡秀秋自由詩614-3-17
宝物 - 殿岡秀秋自由詩7+13-12-15
死のモアイ像- 殿岡秀秋自由詩1013-12-1
閉塞前線- 殿岡秀秋自由詩813-10-1
心の井戸- 殿岡秀秋自由詩913-9-15
日々の不安に- 殿岡秀秋自由詩713-8-15
おれは番犬だ- 殿岡秀秋自由詩813-8-1
雲よなぜ- 殿岡秀秋自由詩713-7-1
気にしないためのエチュード- 殿岡秀秋自由詩613-5-15
逆上がり- 殿岡秀秋自由詩713-4-15
時の高速回転機- 殿岡秀秋自由詩913-3-1
夕暮れの影- 殿岡秀秋自由詩613-2-15
箱詰め電車- 殿岡秀秋自由詩912-12-1
黄色い言葉- 殿岡秀秋自由詩612-11-15
水たまり- 殿岡秀秋自由詩512-11-1
夢の続き- 殿岡秀秋自由詩712-10-15
朝顔の顔- 殿岡秀秋自由詩912-9-2
メールより電話がいい- 殿岡秀秋自由詩412-8-1
胸の番人- 殿岡秀秋自由詩712-7-15
白と黒との闘い- 殿岡秀秋自由詩512-7-1
朝の街路樹- 殿岡秀秋自由詩612-6-3
二重蓋の圧力鍋- 殿岡秀秋自由詩912-3-15
海底の書斎- 殿岡秀秋自由詩1112-2-15
雲の人- 殿岡秀秋自由詩612-1-17

Home
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する